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《対談》 鈴木康之さんを囲む夕べ(3)
2012.2.23
対談
DSC_4902.jpg昨年12月に行われた
鈴木康之さんを囲む夕べ
『コピーライターほどラクな仕事はない』の
全トークを3部に分けてお届けしています。
今回はその第3回目です。





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コピーの殿堂入り巨人を囲む「夕べ」シリーズ第6回
鈴木康之さんを囲む夕べ
『コピーライターほどラクな仕事はない』

2011年12月15日(木)19:00~ TCCクラブハウスにて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



真ん中の四角い箱と包装紙

鈴木  
協和発酵のレイアウトを解き明かすと、真ん中の四角い箱は
 「みやげ物の箱」です。それから最初に申し上げたようにこの会社には
見せるものが全然ないわけですから、何か模様がないといけない。
それでまわりは「みやげ話」を包む包装紙のような模様でやっていこうと。

最初は顕微鏡写真でスタートした苦肉の策だったんですけど、
いつの間にかそういう協和発酵のスタイルが確立されたわけです。

最初にお話したように、CIのためのシリーズ広告です。
でもこのCIマークには頼りたくなかった。
紙面を一目見ただけで協和発酵だと分かるデザインにしたかったんです。



広告は無からの創造ではない

鈴木  
これも僕の信念ですが、クリエイティブとかクリエイターとか言いますけど、
広告の仕事は「創造」じゃないという割り切りをしています。

キャンパスは真っ白ですね。そこに人が墨や絵の具を塗ると、
横山大観の絵になったり、ピカソの絵になったりする。
それはやっぱり創造だと思うんです。
まっさらの原稿用紙で書いてる作家たちや五線譜の音楽家たちもそうですね。
そういうものは無からの創造だと思うんです。でも広告の場合は違う。

最初に広告主名や商品名ありきだし、テーマも先にありきですね。
与えられている条件の魅力的な話し方や見せ方があるんです。
それを僕らがつくるよりも、発信側から聞き出して伝えるほうがいいと
思っています。

あるものを発見すればいい、探し出してくればいい。
ただし、聞き出すのが、見つけ出すのが、ラクじゃないんですね。



あるはずのいいもの

鈴木  
あるはずのものを聞いて見つけ出すのがコピーライターの仕事。
そのためには、見つかるまで探してやるぞという意欲の強さが大事です。

これでいいかなというのが夕方の6時ごろ見つかる。
でもそれで帰らない。もっといいものがあるんじゃないかと考え続けると、
8時ごろにもうちょっといいものが出てくる。で、飲みに行って帰ってきて、
もう1回考え直すとまたいい案が出てきて、明日の朝またいいのが出てくる。
いいものがどんどん見つかるわけですね。特にボディコピーは直せば直すほど
どんどんよくなってくる。僕は入稿まで書き直すという作業をやっています。

それから、いいものがあるはずだと思うためには、楽天家にならないといけない。
ネガティブなことはなんの役にも立たないですね。絶対見つかるという楽天性が
ないといけないと思うんですね。



よく聞くからよく効く


鈴木  
薬の会社では、ひとつの新薬ができて、それが大学病院とかに納品されると、
何億という商売になるんですね。

医薬品業界では「販売」「営業」という言葉を禁句にしているそうです。
メディカル・リプレゼンタティブは医薬情報担当と訳されて、
MRと呼ばれています。医療の現場に行って、「先生、今どんなことで
お困りですか?患者さんはどんなことで困っていますか?」といった話を
聞いてくる仕事です。

年寄りは薬を飲みたがらない。飲むときに喉につっかかったりすると、
翌日から飲まなくなっちゃう。そこで「おじいちゃん、あかんべーしてみて」って
舌につけると唾液の力で一瞬にしてとけるような薬ができないか、
というような注文を受けるわけです。MRは工場や研究所に行って、
そういう要望があることを伝える。するとすぐ溶ける薬が開発されるわけですね。


          s12.jpg


鈴木  

協和発酵にはMRが700人いたので、700人の名刺を並べました。
6,181人の名前のアイデアの二番煎じです。
                    s13.jpg
鈴木  
このMRが白衣を着た先生に聴診器を向けて、聞いています。
"よく聞くから、よく効く"ということなんです。
MRの仕事ではヒアリングがすごく大事です。彼らのやっている仕事は、
僕のコピー作法とすごく似ているなと思いました。



カビ博士の子ども


鈴木  
カビの力でペニシリンやジベレリンなどの、すごい薬が生まれています。
15年くらい前にあるカビ担当の研究者がいたんです。
とある大学のカビの権威の教授の下で4年間勉強して、大学院で
3年留年して研究を続けていたら、その教授が退官することになった。
「就職先を決めといたから、この研究資料を全部持って協和発酵に行け」と。
協和発酵に入ってから14年間、ずっとカビばっかり研究してるんですけど、
いまだ成果が出ない。

それでもいいんです。協和発酵は焦らない。
薬は一度売り出すと、大体10年がひとつのサイクルなんですね。
だから研究費にすごく時間とお金をかけている。

 
          s14.jpg

研究者がハガキの倍くらいのカードをどさっと持ってきて、
顕微鏡をのぞきながら鉛筆でデッサンしたカビをひとつひとつ見せてくれたんです。
そのときに番号を言うんですね、「これはPの3589のX8かな」とか。
7ケタか8ケタの番号をスラスラと。よく覚えられますねって聞いたら、
「そりゃあ、わが子のようなもんですから」って。
そのうち「鈴木さん、コイツおもしろいんですよ」とか、
「この子はいい顔形してるんですよ」みたいに擬人化して話すんですね。
この言い方で僕はカビに対する深い愛情を感じました。

それでこの日はいつものみやげ話の代わりに絵をたくさんもらってきて、
合成で一枚の絵にしたんです。まだ製品化してないから、話はないんです。
だったら今回だけは彼のカビに対する愛情を表現しようと、
帰りの電車の中で手帳を広げて名前を書き並べました。



1週間の差で勝った

鈴木  
血圧降圧剤や消炎剤や抗生物質などの医薬品をつくるときには、
ヒドロキシプロリンという成分が必要なんですね。
それをつくるには動物のコラーゲンに水を加えて分解して取り出す。

どこの会社もその手法でやっていたのですが、「ロンドン条約」というものが
結ばれて以来というもの、いっさいの産業廃水を海に捨ててはならなくなった。
そこでコラーゲンを加水分解したときの水をどのように処理をするかという
競争が始まったわけです。

協和発酵では4人の研究員が任命されて研究室をつくりました。
研究予算は非常に少なかったけれどがんばった。発酵法で真水にする微生物
見つけたんです。
それを登録申請したら、その1週間後に別のA社が登録申請をした。
結局1週間早かった協和発酵が勝って、特許が取れたんです。

そのA社のチームが、たまたま同じ大学の学友同士だったんですね。
そこでいろんな話をしたところ、研究費から人数から全部A社の方が
勝っていたそうです。協和発酵の方が少ない人数にも関わらず
1週間の差で勝てた。





一番うれしかった日

鈴木  
なんで勝てたんですかって聞いたら、主任が言ったんです。
「有用な微生物が絶対にいるはずだと思う気持ちの強さ、絶対に
見つけ出すぞという意欲の強さですかね」って。部下たちも言うんです、
「主任はしつこいですよ」と。「それと明るい」と。毎晩「明日は見つかるぞ」と
言って退社したというんですね。

これを聞いたときに僕はものすごく興奮しました。
僕がいつも広告学校で話していた「見つけ出す意欲の強さと楽天性」、
それと同じ言葉話を研究者から聞いたわけですからね。

協和発酵の仕事を20年間担当させていただいたコピーライターの頭の中と、
研究者の方たちの頭の中が細胞融合のように溶けていったことが驚きで、
一番うれしかった日ですね。



広報課長からのメモ

鈴木  
協和発酵はアミノ酸のリーディングカンパニーでした。
アミノ酸というのは20何種類と決まってるんですが、アミノ酸とアミノ酸を
くっつけると別の次世代アミノ酸、ジペプチドができる。でも、くっつける
いい方法がなかなか見つからなかった。他社はそれを合成法でやってたんですが、
すごく高くつく。もっと安くできないと実用化しないんですね。

このときも1回の取材では理解できなくて、2回目の申し込みをしたら、
当時の広報課長さんが僕にメモを渡してくれました。
彼らが言いたいことはこういうことですよって。

「アミノ酸同士を結びつけるのに一番いい方法は加工も合成しないこと、
裸のまま同士が一番くっつきやすい」、と。
これ、いただきますと言って、そのままコピーにしました。

となれば、当然絵は僕の好きな裸だなと(笑)。浮世絵の男女の絡みも
考えたんですね。でも勘弁してくれって言われました。
このビジュアルでも広報課長はびっくりしてました。社長に見せに行ったら
OKが出ました。

 
s20.jpg


鈴木  

このように協和発酵は難しいテーマを次から次にくれて、
僕を悩ませてくれました。ただし、いつも信頼してくれました。
だから才能のない僕にも25年間仕事ができたし、だれでもがラクに書ける
コピー作法を見つけることができました。

感謝しています。

          (拍手)


野澤  
ありがとうございます。
では質疑応答を受けつけたいと思います。



上司のコピー

質問1
鈴木さんの『名作コピー読本』の一番後ろに、
「買った人は自分のコピーを送ってください、私が添削します」
と書いてあったのですが、実際どれくらいの作品を添削なさったのでしょうか。

鈴木  
コピーの添削をしない、という上司が昔はけっこういたんです。
黙って破り捨てて、もう1回書き直してこいっていう人が。
書き直させるというのは強い人を育てる良い方法だと僕も思うんですけど、
僕はそういう人の下ではやれなかっただろうな、と思うんですね。

僕のボスの西尾忠久という人はむちゃくちゃ添削する人でした。
目の前で赤鉛筆で直しを入れると、コピーがみるみるよくなる。
後はそれを清書するだけでしょ。そうすると西尾さんのコピーに
なってしまうんですね。いつもくやしいなと思ってました。

でもやっぱり添削してもらったから今の僕がある。
もし、ビリッと破られてもう1回書き直してこいと言われたら、
翌朝僕はコピーライターを辞めてたかもしれない。
添削という、じつはヤワな教え方が僕にとっては救いだったという
気持ちがあるんです。

それからもうひとつ、『名作コピー読本』の中で、コピーはサービス精神だと
いうことを書いたものですから、この本のサービスは何かといったら、
読者のコピーを添削することだなと。それで添削券を最後のページにつけたんですね。

誠文堂新光社に次々と来るわけです。3、4年間でトータル700点くらい
来たと思います。これ、いつまで続くんだと困っちゃって、二刷からは取りました。
でも添削券に有効期限は書いてないんですね。これもしまったと思って。
けっこう経ってからも来ましたね。全部添削してお返ししましたが。



担当者をよろこばせよう

野澤  
今、西尾さんのお名前が出たんですけど、鈴木さんが以前西尾さんから
「宣伝部長や担当者を喜ばせよう」と言われたという話を聞いて、
ちょっとびっくりしたんですけど。

鈴木  
もちろん最後は読者や消費者なんですけど、
直接的には宣伝課長、宣伝部長、役員から信頼されて書くわけですから、
コピーを渡したときに、「ありがとうございました」という顔が
返ってきて欲しいわけです。
鈴木に頼んだらいいコピーがあがってきた、ということになれば
彼は会社の中でいい動きができるようになる。それが続けば彼は出世できる(笑)。
実際そういうものだと思います。

それと、コピーの一行目を読むときの顔つきはすごく気にしてます。
担当者が読み始めたときに「なになに?」「あ、いいものを書いてきてくれた」
「おもしろい」という表情をさせることはすごく考えてますね。
つまりそれって、読者の顔ですから。



やさしく、やさしく書く

質問2
本日はありがとうございました。質問をふたつよろしいでしょうか。
ひとつは協和発酵さんをずっと同じスタイルでやってきたことを
鈴木さん自身がどう思っていらっしゃるのか。
もうひとつは先ほど創造に行く人と行かない人がいるという話がありましたが、
鈴木さん自身は、これまで創造に行こうと考えたことがあったのでしょうか。

鈴木  
あとの質問から先に答えますと、
僕は大学時代は作家になりたかったんだけどなれなかった。
それはやっぱり創造ができないから。広告の仕事を10年か15年くらいやったときに
あるコピーライターが小説を書いたんで、僕も書けるかなと思ってやってみたけど、
これがもう全然書けなくてね。僕が書くとコピーになってしまうんですよ。
やさしく、やさしく書くっていうサービス精神が身についてしまった。

はじめの質問は今日の最初の話に戻ってしまうんですが、
「協和発酵はこういう会社です」というアイデンティティをつくるという、
今でいうブランディング広告でスタートしましたから、レイアウトを
変えてしまうとまずいと思ったんです。

普通はコピーが下に入って上にビジュアルがある。
でもこの会社からはビジュアルが出てこないから仕方がない。
それで、まわりを模様にして真ん中に箱を置くという
奇妙なレイアウトを考えてしまった。

その代わりに不利もずいぶんありましたけどね。
レイアウトが毎回同じですから、広告賞などに出品すると、
また協和発酵ね、みたいなことを言われてりして。
毎回レイアウトを変えたらもっと新鮮だと思うんだけど。
まあそのような損はありましたね。
 
          DSC_4956.jpg



あのかたちを見たら協和発酵と思ってくれる

鈴木  
25年間には社長が4人、広報部長が4人代わってるんです。
電通のCDの方は代々何も言わないでやらせてくれました。ただし、
社長や宣伝部長が変わると営業のほうが新しいシリーズを提案しませんかって
言うんです。よその代理店が仕掛けてくるかもしれないからって。
それで担当の部長や課長にさぐりを入れてもらったら、
「どうして変える必要あるの?」って返事が返ってきて、
すごくうれしかったですね。蓄積の得難い価値を知っている広報部でした。
年に1本か2本という年もあったのに、
「年に4~5本つくってるの?」ってよく言われたのは、そのせいかもしれませんね。

質問2
社員の方の感想が変わってきたということはありますか?

鈴木  
ないですね。取材に行くとウケはすごくいいんですよ。
なにしろ、あの広告でスタートしてるでしょ。
「僕もあそこに名前出たんです」とか「私も7行目に出てました」とか、
だから取材はいつも和やかにいくんです。



創造の人としつこい人


野澤  
先ほどの創造の話で、糸井重里さんのような人が創造の人なんだろうなと
思ってたら、じつは糸井さんもクライアントの話を相当聞いてコピーを
書いていたという話を先日聞いてびっくりしました。

鈴木  
創造の人って言い方はしたくないんだけど、そういう人を挙げるとしたら、
土屋さんとか秋山晶さんは創造に近い仕事してるのかなという気がしますね。
でも他の人、たとえば糸井君も何十本ってコピーを書いて、ボディコピーも
丁寧に推敲してるんですね。僕が一番尊敬している岩崎さんだって相当
書き直してますよね。書き直すともっとよくなるということをみんな
経験しているから、これでいいやって思えなくなってしまうんですね。

僕は今パソコンで書いてますけど、縦組みのものは絶対に縦で書きます。
14字組といったら14字組で書かないとだめで、どこで改行されるかまで含めて、
縦は縦、横は横、できれば明朝かゴシックかまで考えて書く。
それで最後、プリントアウトするとまた直してしまう。そういうふうにこだわる人は
多いと思うんです。パソコンの透過光で見る文字と、印刷された反射光の上の
日本文字って全然違うんですね。

日本文字があるからやっぱり日本人の表現力は豊かだと思うんです。
そこを大事にしないと日本人であることがもったいと思いますね。

野澤  
鈴木さん、今日は本当にありがとうございました。ラクかどうかはわかりませんが、
コピーライターほど楽しい仕事はないと思います。

鈴木  
割合でいえば、つらいときのほうが多かったかもね(笑)。
つらさを楽しさに変えてくれるのは自分しかいない。

          (了)