会員専用サイトでのみ閲覧できる
TCC会報から選りすぐりの記事を
一般公開する「TCC会報出張所」。
過去に行なわれたトークショー
での対談など、コピーライターの
語る言葉をお楽しみください。

最新記事

《書籍紹介》歌集『ケモノ道』/ 柿本希久 著

《対談》トークイベント「TCCことばみらい会議」第二夜・第4部

《書籍紹介》最も伝わる言葉を選び抜く コピーライターの思考法/中村禎 著

《対談》トークイベント 「TCCことばみらい会議」 第二夜・第3部

《書籍紹介》ネーミング全史 商品名が主役に躍り出た / 岩永嘉弘 著

《書籍紹介》 降りてくる思考法 / 江上隆夫 著

《対談》トークイベント 「TCCことばみらい会議」 第一夜・第2部

《対談》トークイベント 「TCCことばみらい会議」 第一夜・第1部

《イベントのご紹介》 いとうとしこ著「売れるキャラクター戦略 "即死""ゾンビ化"させない」 刊行記念トークショー

TCCコピー年鑑2016発刊記念イベント 「おこしやす!TCC」

《書籍紹介》 売れるキャラクター戦略 "即死""ゾンビ化"させない / いとうとしこ 著

《イベントのご紹介》 大曲康之写真展2「農村と、山村。」

《書籍紹介》 待っていても、はじまらない。―潔く前に進め/阿部 広太郎 著

《イベントのご案内》 第3回柿本照夫作陶展「わがケモノ道」

ようこそ!2016年度新人賞のみなさん

《書籍紹介》仕事偏差値を68に上げよう / 松尾卓哉 著

《書籍紹介》ハフリ/山田光美 著

《書籍紹介》師の句を訪ねて―岡本眸その作品と軌跡/広渡詩乃

《書籍紹介》汽水―益岡茱萸句集/福本ゆみ

《書籍紹介》名作コピーの教え/鈴木康之 著

おこしやすTCCin ヒカリエ

《書籍紹介》言葉の処方箋 /竹内好美 著

《書籍紹介》 マイペースのススメェー/ 文:三井 明子

《書籍紹介》広告コピーってこう書くんだ! 相談室(袋とじつき) /谷山雅計著

こども広告教室を開催

《対談》TCC広告賞展2015 TCC TALK LIVE Vol.2 『尾形さんって、なに考えているんですか。』

《対談》TCC広告賞展2015 TCC TALK LIVE Vol.1 『たふてこ。(多田福里照井のコピー会議)』

《書籍紹介》さるすべりの花のように/島崎保彦著

2015年度、新人賞のみなさんから!

《対談》「西村さんを囲む夕べ」

眞木準さん(のお弟子さん)を囲む夕べ

C-1グランプリ100回記念特別企画を開催しました

《書籍紹介》可不可●西村佳也句集

《イベントのご案内》谷内六郎の絵と岩崎俊一のコピーで綴る昭和展 昭和というたからもの

《イベントのご案内》コピーライター 西村佳也「可不可展」

《イベントのご案内》あんましヤル気のない風景。大曲康之写真展

《書籍紹介》ここらで広告コピーの本当の話をします。/小霜和也

《書籍紹介》 大人の迷子たち/岩崎俊一

《対談》TCC広告賞展2014TCC TALK LIVE Vol.4 『澤本嘉光×多田琢 頂上対談!!』

《対談》TCC広告賞展2014 TCC TALK LIVE Vol.3 『ズバリ!困っている人のためのアイデアとプレゼンのはなし』

《対談》TCC広告賞展2014 TCC TALK LIVE Vol.2 『ちょっとだけ新世代』

《対談》TCC広告賞展2014 TCC TALK LIVE Vol.1

《書籍紹介》困っている人のためのアイデアとプレゼンの本

《書籍紹介》 魚住勉の一行の恋/魚住勉

《イベントのご案内》 歌謡曲集「枕草子」リリース記念コンサート

《書籍紹介》 コピーライター放浪記―All Around the World/木戸寛行

《対談》TCC広告賞2013トークイベント 第2回

コピーフェア トークショー 2013年度TCC賞 「いいコピーって、何だったんだろう?」

《書籍紹介》 電信柱の陰から見てるタイプの企画術/福里真一著

TCC広告賞展2013 トークイベント Vol.1 髙崎卓馬さん

《書籍紹介》 『ガラスのハートのきたえかた方』 竹内好美 著

《書籍紹介》 『土屋耕一のことばの遊び場。』 土屋耕一 著

《書籍紹介》 『言葉あそび入門』 多比羅孝

2012年度TCCホール・オブ・フェイム顕彰式(糸井重里氏スピーチ掲載)

《書籍紹介》 『あたまの地図帳』 下東史明

《書籍紹介》 『あしたは80パーセント晴れでしょう』 坂本和加

《書籍紹介》 『はるかかけら』 髙崎卓馬 著

《書籍紹介》 『表現の技術』 髙崎卓馬 著

《対談》 鈴木康之さんを囲む夕べ(3)

《対談》 鈴木康之さんを囲む夕べ(2)

《対談》 鈴木康之さんを囲む夕べ(1)

《対談》 TCC広告賞展2011 トークイベント第3回(2)

《対談》 TCC広告賞展2011 トークイベント第3回(1)

《対談》トークイベント 「TCCことばみらい会議」 第一夜・第1部
2017.1.3
対談
talk_tit1.gif

TCC広告賞展2016のトークイベントとして、9月23日・24日の2夜連続で開催された「TCCことばみらい会議」。第一夜・第1部のレポートからお届けします。

「TCCことばみらい会議」第1部は仲畑貴志さんと日本IBM東京基礎研究所、那須川哲哉さんと上條浩一さんによる対談です。ビッグデータによって人工知能が飛躍的に進化する時代に、言葉はどうなっていくのか。興味深い話が繰り広げられました。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
第一夜
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
第1部
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
人間のことば
― コピーライター × コンピューター 
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

日時
2016年9月23日(金) 18:30~20:40


登壇者

仲畑貴志 氏
(ナカハタ クリエイティブディレクター/コピーライター)
※東京コピーライターズクラブ会長

那須川哲哉 氏(日本アイ・ビー・エム/Watson研究者)

上條浩一氏(日本アイ・ビー・エム/Watson研究者)


進行
武田さとみ 氏(電通)

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


sec01-img02.jpg
総合司会 並河進さん(電通 コピーライター)



<言葉を理解するコンピュータ「Watson」>

武田  電通のコピーライターの武田さとみです。よろしくお願いします。早速パネラーの方々をご紹介します。クリエイティブディレクター、コピーライターの仲畑貴志さんです。

仲畑  よろしく。

武田  続いてコンピュータのWatsonと、Watsonの開発研究をされていらっしゃる、日本IBM東京基礎研究所、那須川哲哉さんと上條浩一さんです。よろしくお願いします。

那須川  よろしくお願いします。

上條  よろしくお願いします。

武田  そして、仲畑さんと対談していただくコンピュータのWatsonなんですが、まずはCMをご覧いただこうと思います。


(IBM Watson CM動画)


Watson (Watsonが言葉を話す)みなさん初めまして、Watsonと申します。仲畑さん、本日はよろしくお願いいたします。

仲畑  あらまあ、どうも(笑)。

武田  今回の「コピーライターとコンピューター」というテーマにぴったりの仲畑さんのコピーがあるんです。1976年に書かれたサントリー角瓶の「誰かが『角』を飲んでいる。」というコピーです。

- - - - - -

俺は村の有名人だ。いや正確には俺の所有する機械が有名なのだ。
家には夜毎村の人々が集まり、囲碁、将棋、オセロ、チェスなど、
いろいろなゲームを機械に挑むのだが、誰一人として勝ったものはなかった。
やがて噂は広まり全国の腕利きがチャレンジしたが、すべて敗れ去った。
そして本日、遂にチェスチャンピオンと対戦した。激戦だった。
戦いは長時間に及んだ。機械は熱を出し、胸の小さなランプを点滅させて、
切ないため息をもらすひと幕もあったが、勝利は機械の手に。
人々は惜しみない拍手を送り賛美した。やがて人々の好意は同情へと変化した。
何の報酬もなく、何の楽しみもなく、ただひたすら勝負を続ける姿が
哀れだというのである。所有者である俺には非難の目が向けられた。
その夜、俺の楽しみ、いつものウイスキーを傾けながら、
機械の楽しみについて考えているとき、おやっと思った。
変だ。妙だ。近頃「角」の減りがいやに早いぞ。

- - - - - -

武田  仲畑さんがこのコピーを書かれた40年後の今、まさにそのようなことが起こっているように思います。仲畑さんは予測して書かれたんですか?

仲畑  予測なんかしてないよ。SFというジャンルが大昔からあるから、それを利用してやっただけのことです。


sec01-img03.jpg
仲畑貴志さん(ナカハタ クリエイティブディレクター/コピーライター)


武田  みなさんにはもうひとつ動画をご覧いただきたいと思います。Watsonがクイズ対決で人間に勝ったというものです。これはテレビ番組ですよね?


(IBM Watson CM動画)


那須川  アメリカの「Jeopardy!」っていう50年以上も続いているクイズ番組です。Watsonが対戦したふたりはすごく有名なチャンピオンで、ひとりはこの番組で3億円以上の賞金を稼いでいます。もうひとりは番組で74連勝もしている人です。ふたりともクイズ王としてものすごく賢い人と言われています。

武田  これは早押しクイズなんですよね?

那須川  問題が読み終わるのを待って、そこから早押しになります。Watsonも全問正解というわけじゃなくて、間違ったりもするんですけど、最終的にはクイズ王に勝利しました。これまでにチェスや囲碁でコンピュータが人間に勝つということはありましたが、博学といわれている人たちに言葉で勝つということで非常にインパクトがあって、アメリカでは大変話題になったんです。これが人工知能ブームのひとつのきっかけともいわれています。

武田  すごいですね。

那須川  今日は「ことば」というテーマなので、コンピュータがどうやって言葉を認識しているかという話をしたいと思います。人工知能は知識のインプットが必要なんですけど、人間が全部教えることはできない。ところが、人工知能が自分で学習できるようになってきたというのが最近の進歩です。日本語って「このデジカメはグリップが大きくて便利で、しかも電池が持つ」というように、満足しているときには褒める言葉が連続して並ぶんですね。けなすときも「このうどん屋は愛想が悪い上にコシがなくてがっかりした」みたいに言葉が連続する。「褒める」と「けなす」、両方言いたいときは「けど」や「しかし」という言葉で接続する。そこで、この法則を利用して、褒める言葉である好評表現と、けなす言葉である不評表現とを大量のデータから人工知能が学習するアルゴリズムをつくりました。そうすると、今まで人間が教えるしかできないと思っていたことをコンピュータが自動的に判断できるようになったんです。


sec01-img04.jpg
那須川哲哉さん(日本アイ・ビー・エム 研究者)


武田  なるほど。コンピュータが自分で考えるんですね。仲畑さんもボディコピーを書くときには言葉の並び方とかを考えながら書いているんですか?

仲畑  考えてないよ。クライアントの代弁者となって、サービスとか機能を伝えるために書いているわけで、俺が言いたいことを書いてるわけじゃない。

武田  コンピュータのように分析しながら書いているわけじゃないんですね。

仲畑  だって、そんなこと考えてたら書けねえだろう。コンピュータはしょうがないから考えざるを得ないけど、俺らは考えてなくても書けるわけでさ。でも、今はまだ勝っているけど、いずれやられるだろうね。

武田  コンピュータにですか。

仲畑  いずれコンピュータにやられるだろうなと思う。だってスピードと量が全然違う。コンピュータがノイローゼになったり、てめえで自殺するところまでいったら、俺たちは完璧に負けるだろうな。

武田  なんか深いですね。

那須川  たしかに、人工知能はテキストデータを取り入れて学習していくわけですが、データって時代とともにどんどん変わっていくので、人間の思考の変化も捉えられるんじゃないかと考えているんです。大量のデータの中から「赤はかっこいい」「白はかっこ悪い」というトレンドが読み取れると、それを需要予測や商品開発に活用できるんじゃないかと。



<テキストマイニングによる性格推定>

武田  たくさんのテキストを人間では不可能なスピードと分量でコンピュータに分析させることをテキストマイニングというそうですけど、今日はそのテキストマイニングを仲畑さんが今までに書いてきたボディーコピーをデータとして使ってやってみたいと思います。そうすると性格判断ができるんですよね?

那須川  そうですね。最近は性格推定というのをやっています。これはwebで公開されているので、検索窓に「Personality Insights(パーソナリティ・インサイツ)」と打ち込むと、その画面が出てきます。トップページは英語なんですけど、「View demo」というボタンをクリックすると日本語のページが出てきます。ここで「テキスト入力」をクリックしてから「任意のテキスト」に文章を入れると、性格特性が表示されます。では、サントリーのトリス、オールドとTOTOのコピーを入れてみます。

武田  すぐにできるんですか?

那須川  ええ、ここにテキスト入れて「日本語」を選んで「分析」をクリックすると簡単に。今Watsonが分析してます。

武田  1万語くらい入れると正確な分析ができるとか。あ、出ましたね。

那須川  はい。「少し批判的なタイプであり、また鋭敏なタイプです」。あと傾向としては「健康を犠牲にして状況に適応する」。あと、「ソーシャル・メディアをフォローする」は低い傾向が出ています。

武田  「広告をチェックする」も低い傾向が出てますね。

仲畑  これは俺かい?


sec01-img15.jpg


武田  はい。これ仲畑さんのコピーからWatsonが推定した仲畑さんの性格特性です。仲畑さん、ご覧になっていかがですか?

仲畑  おもしろいねえ。「健康を犠牲にして状況に適応する」。まあ俺、タバコやめられないしなあ。これ、例えばファッション系のコピーばっかり集めたのと、機能型のコピーばっかり集めたのではやっぱり変わりますかね。

那須川  そうですね。実は、ウォシュレットとウイスキー、別々で分析するとやっぱりちょっと変わってしまうんですよ。

仲畑  そうでしょうね。

那須川  ただ、Watsonが見ているのは内容だけじゃないんですね。助詞とか代名詞とか否定形、 「て」「に」「を」「は」や数字をどのくらい使っているか、そういうところも見ているんです。

仲畑  だけど、サントリーの角瓶で言うとさ、あれだけだと非常に理屈っぽい野郎だと思われると思うんだよ。でも、角瓶ではあえてそういう文体を使ってるわけだから。俺個人の特質じゃなくてね。

那須川  そうですね。

武田  仲畑さんの性格というよりは、仲畑さんのコピーを分析したときにどういう傾向が見えるかってことですよね。

那須川  そうです。但し、書いた内容というよりは、書き方、表現の仕方を見ているという点で、書いた人の傾向になります。

仲畑  広告はチェックしねえよなあ。広告見ないもん。

武田  じゃあ当たってますね(笑)。

仲畑  ソーシャルメディアなんか、全く見ない。そういう意味では、後半は当たってるけどね。

武田  後半をちょっと読むと、「少し批判的なタイプであり、また鋭敏なタイプです。現実的。抽象的なアイデアや新しい発想にはあまり目を向けず、現状の中でうまく対応していくことを好みます。人生を最大限に楽しもうとしています」と書いてあります。

仲畑  何とも言えねえなあ(笑)。まあ俺は快楽主義だけどね。なるほどねえ。

武田  仲畑さんだけだとどうかわからないので、続いて秋山晶さんのコピーも分析してみようと思います。

仲畑  ああ、いいね。

武田  ということで、キユーピーのコピーをバーっと入れてみます。仲畑さんのコピーとはテイストというかトーンがかなり違うと思うので、どんな結果になるでしょうか。

那須川  結果が出ました。「ソーシャルメディアはフォローしない」「広告はチェックしない」。ふたりとも同じですね。

仲畑  そこはほぼ一緒だね。

武田  でも、ちょっと違うとこもありますね。「熱くなりやすいタイプで自説を曲げないタイプです」。自己評価が高いっていうのは仲畑さんにも書いてありました。「自己主張が強い」とも出ています。

那須川  あと「アドベンチャースポーツをする」。

武田  あんまり想像できないですけど(笑)。

仲畑  秋山さん、全然やんないよ。自転車だって苦手なんだから。

武田  あとは、「伝統と成功することの両方にあまりこだわりません。人が通った道を行くよりわが道を行くことを大切にします」。「帰属につながる体験を好みます」。帰属につながる体験ってどういうことですか?

那須川  人との絆を求めるみたいなことですね。

武田  なるほど。確かにちょっと似てる部分はありますけど。みなさんも試してみてください。サイトでいつでもできるので。でも、これってブログの文章とかで分析した方がわかりやすいんですかね。

那須川  いちばんわかりやすいのはやっぱりtwitterですね。

仲畑  さっきも言ったように、広告コピーはバイアスがかかるから難しいよね。クライアントサイドのチェックもあるし。だからtwitterとかそういうものがいいよね。

武田  ということは仲畑さんの本に載ってるエッセイのほうが仲畑さんの性格が出やすいってことですよね。

仲畑  そうだね。そっちは自分で言葉をチョイスして書いてるから。あと、コマーシャルなんかだと言葉を音声としてしゃべるわけで、「バカヤロー!」と言うか、「ばかやろう」と言うかでずいぶん違う。そういうニュアンスの部分が次の領域にあるんでしょうね。

上條  そういう意味ではテキストとそれを書いた人の顔の画像を組み合わせて、性格の推定をするという研究もやっています。今までは本人と面会して話をした上で、性格判断をやっていたんですけど、テキスト分析は本人が目の前にいない状況でやるにもかかわらず、数値的にはけっこう当たっているんです。


sec01-img06.jpg
上條浩一さん(日本アイ・ビー・エム 研究者)


仲畑  なるほど。ローコストでいけるってことですね。

上條  そうです。

武田  やっぱり、書いた言葉には本人が出ているってことなんですね。

上條  そうですね。完璧ではないけどある程度は推定ができることがわかってきた。そこが画期的だと思います。

那須川  昨年研究所に入った若者の中ふたりが、twitterで知り合った相手と結婚したと言うんです。ネット上で言葉のやりとりをして意気投合して結婚まで行く。そのほうが外見から入るよりいいのかもしれません。

武田  SNS婚ですね。

那須川  まさにそうです。その話を聞いて、やっぱり言葉を読んで相性というのは感じられるんじゃないかと思いました。

仲畑  コピーっていうのは人の心を動かすことが目的で、いちばん効率がいいのは受け手の中に内在しているけど、まだ言語化されていない思いに触れること。コピーに限らず、歌詞でも演劇のセリフのワンフレーズでもそうなんだけど、言語化される前の思いに触れられると、人は「あ、そうだったんだ」と感動するんですね。そこを探るようなことがいずれ人工知能でも可能になるんですかね。

上條  そうですね、今はスマホなどのセンサーを使って、人の行動自体をビッグデータとして集計することはできるんです。ただ、心の中までわかるところまではいってないですね。我々がやらなきゃいけない研究テーマであると思っていますけど。

武田  さきほど、那須川さんからWatsonは助詞まで見ているという話がありましたよね。コピーでも人格が出るのは助詞の使い方まで見ているからという。そのあたりのことについて、コピーライターである仲畑さんからもご意見を伺いたいなと思って。

仲畑  コピーというのは目的をもった言葉だから、ベクトルが非常に強いわけじゃない。だからそれを変えるのはなかなか難しいんだけど、助詞、要するに「てにをは」の使い方でそれを簡単に変えられるんですね。それは利用する価値がすごくあるし、僕も相当活用してきましたけどね。さらに言えば、語尾もそうですね。「◯◯ですよ」「◯◯なのよ」「◯◯かしら」と延々とあるわけです。

上條  今回分析してわかったのは、助詞というのは書く人の人格と非常に関連性が高いんですけど、それって日本語に特有の話なんですね。そうするとアメリカ人のコピーライターなんかはどうしているんだろうと大変興味があります。

仲畑  謙譲語とか尊敬語とか、バリエーションが日本語は多いですよね。英語だと相手が上司でも若造でも「you」だから。言葉の多様性は日本語の良いところでしょうね。

武田  国ごと、言語ごとに研究の仕方が違ってくるということですか?

那須川  そうですね。日本語と欧米語のいちばんの違いは、日本語には単語と単語の間にスペースがない。だから単語の区切りから言語処理をしなくちゃいけないので大変なんです。英語なんかは最初から単語が区切られているので、キーワードの集まりとしてわりと簡単に言語処理ができるんですけど。でも、苦労した甲斐があって、言語処理の世界ではわりと日本がリードしていたりします。IBMの中でも東京がつくったシステムがワールドワイドで売られていたりするので。

武田  言語体系が複雑だから、技術が伸びたということですね。

那須川  そうです。



<コピーライターの頭の中>

sec01-img14.jpg


那須川  仲畑さんにいくつかお聞きしたいことがあります。コピーって受け取る人のことをずっと考えていると思うのですが、そのときにまずターゲットを決めるわけですよね。

仲畑  そうですけど、商品によってターゲットはすでに規定されているともいえますね。高級車のターゲットと即席焼きそばのターゲットはおのずと違ってくるので。

那須川  ところが、狙いが外れることもあるんですか。意外なターゲットに受けたとか。

仲畑  ありますね。

那須川  やっぱりあるもんなんですね。

仲畑  滅多に外すことはないんですけど、メインターゲットよりもその横にいる人たちに売れたということはあります。例えば栄養ドリンクで、本来のターゲットは40代の働く男性なんだけど、意外と女性層にも売れたり。

上條  あと、コピーにしやすい商品、コピーにしにくい商品というのはあるものなんですか。

仲畑  それはないですね。僕の場合は。僕ね、今ワコールのブラジャー売ってんです。こんなジジイがブラジャーをやってるとは誰も思わないと思うけど(笑)、売れ行きは抜群です。

上條  どんなコピーを書かれたんですか。

仲畑  下着姿のお姉さんが「ウデ上げて ねじりましょ そのとき胸にご用心」って踊ってるCMなんですけど、その歌詞を書きました。女性の商品だから女性のコピーライターっていう考えは当然あるんだけど、女性が書くから女性の心を動かせるとは限らない。あまりデリケートなところまで知りすぎない良さってのもあるんですよ。あくまで表現だからね。そこがまた広告の難儀なところでもある。今後Watsonを利用していくにしても、Watsonをどのように利用するかはクライアントによって違ってくると思います。Watsonの能力のどの部分を特化させるか。そこがおもしろいと思います。

武田  Watsonの使い方は使う側の発想次第でどんどん変わっていくし、課題次第で可能性は無限にあるということですね。

上條  そうですね。まだ始まったばかりなので、これからいろんなものを組み合わせていかにおもしろくしていくかってことですね。

仲畑  だから課題があるほどWatsonは進歩するってわけだよね。

武田  そうですね。

上條  ひとつお願いがあるんですけど、Personality InsightsにWatsonが学習していくためのアンケートがあるんですけど、そのアンケートにみなさんに協力していただけると非常にうれしいです。

武田 アンケートに答えると、データがWatsonにたまっていくわけですね。みなさま、ご協力お願いします。ということで「人間のことば コピーライター×コンピューター」というテーマでお話を伺ってきましたが、そろそろ終了のお時間がやってきました。仲畑さん、那須川さん、上條さん、どうもありがとうございました。それからWatsonも。ありがとうございました。