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対談
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「TCCことばみらい会議」第3部はラッパーの晋平太さんと本年度のTCC最高新人賞、TCC賞をダブル受賞された渡邊千佳さんの対談です。史上初のラッパーとコピーライターによる「異種ことばバトル」もおこなわれ、会場を大いに盛り上げました。


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第二夜
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第3部
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いまと関係することば
コピーライター × ラッパー
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日時
2016年9月24日(土)16:30~18:40


登壇者

渡邊千佳 氏
(電通 コピーライター)
※2016年度TCC賞 & 最高新人賞

晋平太 氏
(ラッパー) 


進行
竹田芳幸 氏(POOL inc.)
宇野元基 氏(博報堂)

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宇野元基 さん(博報堂)、竹田芳幸さん(POOL inc.)


竹田
 
それでは第3部「いまと関係することば」を始めたいと思います。本日の司会を務めさせていただきます、竹田芳幸と博報堂の宇野元基さんです。

宇野 宇野です。よろしくお願いします。

竹田 この会を企画しようと思ったのは僕なんですけど、宇野さんもすごくラップ好きなんです。コピーライター歴よりラップ歴のほうが長いんですよね。

宇野 リスナー歴ですけどね。コピーライター歴が10年くらいで、ラップリスナー歴が20年以上です。1996年に「さんぴんCAMP」という伝説のヒップホップイベントも観に行きました。知らない人も多いかもしれませんが。

竹田 なるほど。そんな宇野さんと本日は進行していきたいと思います。では、さっそく登壇者をご紹介します。まずは史上初めて最高新人賞とTCC賞をダブル受賞した電通のコピーライター渡邉千佳さんです。

渡邉 渡邊です。よろしくお願いします。

宇野 そしてもうひとりは、2010年、2011年の「ULTIMATE MC BATTLE」の優勝者、晋平太さんです。

晋平太 よろしくお願いします。



<ことばに対するアティテュード>

竹田 本日は晋平太さんと渡邉千佳さんのおふたりに「いまと関係することば」というテーマでお話をうかがっていきたいと思います。先ほどもちょっと触れましたが、渡邉さんは今年、最高新人賞とTCC賞をダブル受賞して、しかも新人賞は満票という史上初の快挙。ほんとうにおめでとうございます。

渡邉 ありがとうございます。今が人生のピークです(笑)。

竹田 一方の晋平太さんは2010年、2011年と2年連続でラップの日本一に輝いています。まさにラップとコピーの頂上対決が今日実現したという感じです。じつは、今日おふたりに対談をしていただく前に、お互いの仕事を見ていただいています。どう感じたか、おふたりにうかがいたいと思います。晋平太さん、渡邉さんの長崎バスはいかがでしたか?

晋平太 偶然なんですけど、僕のおやじはバスの運転手なんです。今までおやじの仕事のことなんて深く考えたことなかったけど、長崎バスのCMを見て、すげーいい仕事をしてるんだなと初めて思いました。「名もなき一日を走る。」っていうコピーにも感動して、ああいう人たちがいることがうれしく思ったし、何よりバスに乗りたくなりました。

渡邉 わたしが思っていたことを全部言っていただいてありがとうございます(笑)。

竹田 渡邉さんは晋平太さんのラップをご覧になっていかがでしたか?

渡邉 今までラップという世界に触れたことがなかったので、初めてちゃんと見て、命削ってる感じがマジかっこいいと思いました。

竹田 「マジ」とか使い始めましたね(笑)。

渡邉 ちょっとラップに寄せてみました(笑)。わたしも自分ではじわじわ命を削りながら仕事していると思っているんですけど、ラップの世界の爆発的に命を削ってる感じがすごくかっこいいですよね。

竹田 今日はコピーライターとラッパーという、ふたつの職業の共通点、相違点を見つけられればと思っています。いくつかテーマを用意しておりまして、最初は「ことばに対するアティテュード あなたのことばは誰に向かっていますか?」というテーマです。誰に向かってことばを書いているのか、発しているのかをおふたりに聞いてみたいと思います。まずは渡邉さん、いかがですか?

渡邉 わたしは世の中の圧倒的な多数である「ふつうの人」に向かってことばを書くことをつねに意識しています。山梨の田舎にいた時の感覚を絶対に忘れちゃいけないなと。長崎バスのコピーを書く時は特に気をつけましたね。

竹田 長崎バスでは綿密に取材をされたと聞きました。

渡邉 そうですね。バスの運転手さんにも、乗客の方にも、もう行き当たりばったりローラー作戦で話を聞きました。自分の会社の名前を出すと構えられちゃうから、しがないバスマニアを装って(笑)。営業からやめてくれと言われましたけど(笑)。

竹田 それは完全にアポなしなんですか?

渡邉 最初はそうでした。CMに神ノ島教会というところが出てきますけど、そこにぼーっと座っているおじさんがいたので、話しかけてみたんです。そしたらそのおじさんが元暴力団員で(笑)。雀卓でいっしょにビールを飲んで話を聞いていたら、「今日泊まっていく?」とか言われて。さすがにそれは断りましたけど(笑)。とにかくそんな感じでふつうの方々にいろいろお話をうかがいましたね。

晋平太 すごいインパクトのあるエピソード(笑)。

宇野 コピーライターのことばって世の中に広く届けることばだから、自分がどう思うかも重要ですけど、世の中からどう見えるかも重要だと思います。取材が大事なのもそこですよね。一方の晋平太さんは、フリースタイルバトルに限定していえば、対象は対戦相手だけど、聴いているお客さんもいる。目の前の相手をディスりながら、同時に観客にもことばを届けるというのは、どんな感じなんですか?


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晋平太さん(ラッパー) 


晋平太 フリースタイルMCバトルで僕が意識しているのは、その場にいる全員が共感できる、対戦相手のポイントを瞬時に見つけることですね。相手のバックボーンなんてわからないので、その場にあるものにしかフォーカスできない。帽子をかぶっているとか、メガネをかけているとか、あとは相手のことばとか。みんなの感じていることを一発で代弁する感じですね。

宇野 ひとつの仕事にコピーライターが2、3人いることもあるので、コピーを見せると速攻で先輩にディスられた経験がコピーライターなら誰しもあると思います。なので、フリースタイルMCバトルのシビアな感じはなんとなく共感できます。手を震わせながらコピーを出す若者とかもいますから(笑)。

晋平太 逆に一発でもいいパンチが当たれば年齢に関係なく勝てるところもありますね。

宇野 そうですね。

晋平太 でも、相手のことばに対して、自分のことばでどう応酬していくかというゲームなので、近いところはあるんじゃないですか。

竹田 知らない方もいると思うのであらためて説明すると、フリースタイルMCバトルというのは決められた歌詞でラップをするんじゃなくて、対戦相手を見て、即興で考えたことばを歌詞にするんですよね。

晋平太 そうです。初めて会った相手を「Ready Fight!」でいきなりディスる。

渡邉 すごい。

竹田 僕らは打ち合わせの前に少なくとも2時間とか3時間は考える時間があるわけですけど、フリースタイルってその場で商品を与えられて、その場でコピーを考える感じですよね。

渡邉 ほんとうにそうですね。すごい思考回路だと思います。

宇野 晋平太さんはディスるのが得意で、渡邉さんは褒めるのが得意そうですよね。見た目的に。

晋平太 間違いないですね。ディスるってdisrespectの略で、respectの反対ってこと。なので、相手のrespectできるところから、無理矢理disの部分を見つけて、思いっきり誇張するってことなんです。だから根底にある人間の見方みたいなものは同じなんじゃないかと思います。表裏が逆なだけで。

竹田 コピーライターの仕事はrespectの部分を見つけるということですね。渡邉さんはその辺どう思いますか?

渡邉 わたしは本質についてすごく考えます。その物事の根っこにあるもののことを。長崎バスでいえば、「何でもない日常を支えている人がいる」ということで、もし西鉄バスだったら全然ちがうメッセージになったと思います。その本質を探すことがプロとしてのコピーライターの仕事なのかなと。

晋平太 その視点がすごいですよね。僕らは自分の主観をことばにすればいいけど、コピーライターは商品になりきってことばを書かなきゃいけないじゃないですか。何についてもキャッチフレーズを書けるってことですよね。

宇野 書けるというより、書かなきゃいけない。

渡邉 そう、「書かなきゃ」ですよね。

宇野 コピーライターは商品を観察して、消費者に向けてことばを発する。ラッパーは対戦相手を観察して、観客に向けてことばを発する。観察という点では共通するところはあるんじゃないかと思います。

竹田 そうですね。では、なんとなくコピーライターとラッパーのことばに対するアティテュードが見えてきたところで次のテーマに進みたいと思います。



<いまと関係することば>

竹田 次のテーマは「いまと関係することば」。いまはSNSで自分のことばをみんなに発信できる時代です。そういう時代をおふたりはどう捉えているのかをお聞きしたいと思います。

宇野 いま竹田君が言ったようにSNSでコピーっぽいことばとか、ラップっぽいことばを書いている人がけっこういるように思います。おふたりもSNSをやられていますけど、その時にどのくらい「ことばのプロ」という意識をもって書かれているのか。自分をプロたらしめているマインドのようなものはありますか?

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渡邊千佳さん(電通 コピーライター)※2016年度TCC賞 & 最高新人賞


渡邉 プロたらしめている・・・うーん・・・。さっき商品を褒めるという話が出ましたけど、ストレートに褒めても褒めることにならないことってあると思うんですね。「名もなき一日を走る。」というコピーも世に出るまでがすごく大変で、本編集というCMが完成するギリギリのタイミングでクライアントからNGが出たんです。もし、あのコピーが「今日を大切に走る。」になっていたら読後感はまったくちがっていたと思います。「今日を大切に走る。」と比べたら「名もなき一日を走る。」は一見ネガティブに聞こえるんですけど、最終的には広がりのある世界観が表現できる。なので、そのコピーがいかに本質的なことを表現しているかという手紙をクライアントに書きました。手書きの手紙を3枚くらい。

晋平太 「今日を大切に走る。」と「名もなき一日を走る。」じゃ味わいが全然ちがいますね。でも思うのはあのCMを観て「名もなき一日ってなんだよ。あの人たちだって一生懸命生きてるじゃねえか」って思う人なんているわけないと思うじゃないですか。でも実際はリアルにいるんですよね。で、それをネットであたかも正論のように吐き出すことが可能なのがいまの時代。それってすごく異常なことだし、すげー怖い。その人たちのことまで考えて本質を掴んだことばを吐くのって無理じゃないかと思うくらい。

宇野 ほんとうにそうですね。

晋平太 ラップのバトルなら目の前の相手を傷つけてもいいし、相手の家族や友だちやファンを敵に回してもいい。それは同じリングの上だから。でも広告はクライアントがいるし、いまはコンプライアンスとかもうるさいから、コピーライター的には嫌な時代ですよね。

渡邉 晋平太さんのことばが強いのはひとりですべてを背負っているからだと思います。コピーライターもこの仕事はすべて自分が背負う、全責任は自分にあると思えるかどうかでことばの重みがちがってくると思います。

宇野 発するときの覚悟が、ことばの重みにつながってくるんでしょうね。

晋平太 ことばってプロだけが使えるものではない。じゃあプロとアマのちがいは何かと考えると、覚悟を持ってやり続けられるってことがプロだと思う。10年も20年もやり続けられるってことが。

竹田 晋平太さん、去年大学の学園祭で若い子たちとバトルをしていましたよね。プロの貫禄を感じました。

晋平太 でも、俺、そのバトルに負けてるんですよ。

竹田 そういえばそうでしたね(笑)。

晋平太 まあ、勝ち負けなんて自己満足でしかないので、そんなことに気を取られて小さくなるのも嫌ですけどね。

渡邉 そうですね。つまらないですよね。

宇野 おふたりはSNSでどういうことを発信しています?

晋平太 僕はもう自分の宣伝だけですね。

渡邉 わたしはfacebookでくだらないことばっかり書いてます。

竹田 渡邉さんのfacebookは酔っぱらって書いているみたいですよね(笑)。

渡邉 そう。いつも飲んだくれています(笑)。

晋平太 酔っぱらってSNSはやらないほうがいいですよ。

渡邉 そ、そうですか? 

晋平太 絶対に。

宇野 晋平太さん、友だち申請してみたらどうですか。渡邉さん、長崎バスとは全然ちがうバスに乗っていますから(笑)。ではつぎのテーマに進みましょうか。


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<コピーライターVSラッパー>

竹田 今までわりとまじめなテーマで話してきましたけど、つぎはお楽しみのコンテンツを用意しています。「コピーライターVSラッパー 異種ことばバトル」です。これおそらく史上初の試みだと思います。

宇野 せっかくコピーライターとラッパーが並んでいるんですから、ここはガチンコで勝負していただきたいと思います。

竹田 テーマは事前にお伝えしています。渡邉さんには「ラッパーを褒めるコピー」、晋平太さんには「コピーライターを褒めるラップ」。おふたりにことばを披露していただいたあとに会場からの拍手の大きさで勝敗を決めたいと思います。ではまず先攻後攻を決めるジャンケンをお願いします。

宇野 晋平太さんが勝ちましたね。先攻と後攻、どっちにします?

晋平太 じゃ後攻で。

宇野 では、先攻が渡邉千佳さん、後攻が晋平太さんで。渡邉さんお願いします。

渡邉 発表する前に私のコピーの説明をちょっとすると、ラッパーってどういう人たちなんだろう、世の中にどういう価値を提供している人たちなんだろう、ということを考えて書いてみました。



 傷つくことが金になる。
 今、自分は宇宙一不幸であると思っている方。
 信じていたものはこっぱみじんに、天と地はひっくり返り、
 すするのは泥水か酒しかなく、
 殴打するような頭痛、生理痛、胃痛。
 涙は血となって流れてきそうで、この世の終わり感半端ない。
 ああ、明日ってなんでやってくるのかなっていう。
 そんなどん底、ぼろぼろ、
 ボロ雑巾気分を抱えている方、大丈夫です。
 その傷は金になるから。傷つくことで闘える。
 傷つくことは芸になる。
 傷ついた人ほど人の心にぶっ刺さることばを紡げる。
 宇宙一不幸な人は宇宙一強くなれるのかもしれないと、
 今日も逆風を全身に受けて叫び続けるラッパーたちの
 背中は教えてくれる。
 かさぶただらけのことばって、なんて愛が深いのだろう。



竹田 晋平太さん、いかがですか?

晋平太 ヤバイですね。 すばらしいです。

宇野 ちょっと鳥肌が立つような。ラッパーだけじゃなく、駆け出しのホストとかが聞いてもぐっと来るんじゃないでしょうか。

竹田 さあ、後攻の晋平太さんはどうやり返すでしょうか。

晋平太 僕は事前にいっさい考えてないので、フリースタイルで。渡邉さんに褒めてもらったことに対して、ラップでアンサーしたいと思います。さっきのコピーをもう一度見せてもらっていいですか?

宇野 じゃ、スクリーンに映しますね。

晋平太


 yo! 傷つくことが金になる ことばは誰のためにある
 どこまでリアル 自分を磨く 自分自身で光る
 金になるためにやる それだけじゃないはず
 名もない一日を生きる 名もない一日を切り取る 
 そいつを歌う 時に涙はこの頬を伝う
 そいつをしっかり一瞬でつかむ
 それはコピー 俺ならラップ
 天地がひっくり返る チャンスが来るまでじっくり耐える
 俺はこいつをずっとやり続け信じる ビッグになれる
 俺についたコピー ご存じ「傷だらけ」 
 俺がいつも信じてんのはマイクにつながる絆だけ
 俺がタフ? そんなはずない ずっと自分の目標に一途なだけ
 俺も宇宙一不幸 そんなふうに思ってない
 自分の両親 誓って言う 育ててくれた教師 何よりも伝えたいぜ
 ラッパーとして持ってる自尊心 自分が自分であること誇る
 そういうやつだけ生き残る 
 俺にあるのはかさぶた でもきっとついてないアダプタ
 充電尽きるまで10年あるかわからない
 それでも目指すぜ バス停にある終点 いつかたどり着くぜ。



みたいな感じですかね。

宇野 すごい!長崎バスとかけてきた!

晋平太 フリースタイル一回やると10年寿命が縮むんです。俺たぶん、もうすぐ死にます(笑)。

渡邉 すごい!すごい!すごいとしか言えない。なんか元気になりますね、ほんとに。

竹田 僕はちょっと泣きそうになってます。目がうるんでいます。

という感じで世界初のコピー対ラップのバトルをやってみました。では、会場のみなさんに世界で初めてコピー対ラップのジャッジをしていただきます。まずは渡邉さんのコピーに撃ち抜かれたという人、拍手をお願いします。

(会場拍手)

竹田 けっこう大きかったですね。では次に晋平太さんのフリースタイルにやられたという人、拍手をお願いします。

(会場拍手)

竹田 いまのも大きかったですね。

宇野 判定が難しいですね。

竹田 ラップバトルだと延長戦をやったりするんですけど、コピーは即興で書けないですからね。

晋平太 でも、渡邉さんのコピーあってこその僕のラップなので、渡邉さんの勝ちってことでいいんじゃないですか。

宇野 いやいや、どうしましょうか。今日の勝負は引き分けということにしましょうか。

竹田 そうですね。コピー対ラップというバトルが実現できたことが感無量です。

宇野 僕も司会進行とかどうでもよくなってきました(笑)。


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<今の仕事を選んだ理由>

竹田 突然ですが、ここで質問タイムを設けたいと思います。いままであんまりこういう進行はなかったと思うんですけど。質問がある方は挙手をお願いします。


質問1 ことばの重みという話が先ほど出ていましたが、ことばが軽いと思うときはどんなときでしょうか?

晋平太 僕が思うのは「神」っていうことばですね。若い子が「ヤバイ!神!」とか言うじゃないですか。僕も昔は「クソヤバイ」とか言ってましたけど、それが「鬼ヤバイ」になって、いまは「神」ですからね。神までいったら次はもう宇宙くらいしかない。「コスモヤバイ」とか(笑)。

渡邉 わたしは軽いことばの最たるものが政治家の発言だと思います。思ってないことをしゃべっているのが透けて見えますよね。


質問2 ことばを伝えるときにおふたりが心がけていることはありますか?

渡邉 わたしはまだまだ若造なのでえらそうなことは言えないんですけど、サボらないことでしょうか。手を抜かずに一生懸命伝えればちゃんと伝わるし、それは自分への自信にもなると思います。

晋平太 僕が思うのは、ほんとうに思ってないことは伝わらないってことですね。ラップで勝ちたいときも本気で勝ちたいと思わないとやっぱり勝てないから。


質問3 仕事とプライベートでことばのつかい方を変えたりしていることはあるのでしょうか?ラッパーだからといって日常生活でつねにディスってるわけではないと思うのですが。

晋平太 僕、ひとりの時はずっとひとりでラップをやってますね。電車の中吊り広告を見たらそれに対してラップしているし、ニュースを見てもそう。「SMAP解散」というニュースが流れてきたら「まさかのまさかでSMAP解散 目の前にあってつまずく階段」みたいに。何でもラップにできるし、ここで渡邉さんをラップで口説けと言われてもできますよ(笑)。僕にとってラップって、いちばん飽きない遊びなんです。

渡邉 わたしは仕事とプライベートでことばを使いわけるってことはないですね。ただ、意識しているのはつねにアンテナを張って、気になったことばを自分の中に貯めておくこと。「名もなき」っていうのもたぶんそうやって貯めていたことばだと思います。自分の中からことばを引き出せるようにふだんから貯めておくようにしています。質問の主旨とはちがう答えかもしれませんけど。


質問4 どうしていまの職業を選ばれたのかを教えていただけたらと思います。

渡邉 わたしの場合は完全に成り行きです。今の会社に入ったときにコピーライターになれるなんてかけらも思いませんでした。わたしの人生って長い目標があるというより、自分に向いていると思う方向に一歩一歩進んで行ったらここにいるという感じなんです。転機になったのは長崎バスのCDで、ライザップのCDも手がけている今永政雄さんから「おまえは物語をつくるのがうまいから、とにかく文章を書け」と言われたこと。それからとにかく書きまくりました。最初から高い志があったわけではないので恐縮ですけど、こんなにもコピーを愛することになるなんて5年前の自分が見たらびっくりすると思います。おもしろいことを考えたり、妄想したりすることは好きだったんですけど、それとコピーライターという職業がそれまでは結びついていなかったんですね。

竹田 晋平太さんはどうですか?

晋平太 僕は学生時代、クラスの中ではわりと明るくて、先生に茶々を入れてみんなを笑わせるタイプだったんです。メジャーリーグでもベンチから相手チームにヤジを飛ばすのが得意なトラッシュトーカーがいるけど、あんな感じ。そしたら、あるとき友だちが「おまえに絶対向いてるから、一緒にやろうぜ」ってラップを勧めてくれたんです。その時初めてラップを聴いて、たしかに俺にもできるかもしれないと思いました。すぐにその場で歌詞を書いて、次の休み時間にはみんなの前で披露してましたね。そんな狂った子どもだった(笑)。それ以来ずっとラッパーになることだけを考えてました。郵便局やラーメン屋で働いたこともあったんですけど、働きながらもずっとラップのことを考えている。ほんとうにやりたいことをやっていないことが自分でもわかるから、そんな自分が嫌で、このままだと絶対に人に迷惑をかけると思って辞めました。とにかく24時間ラップだけの生活がしたかった。それくらいラッパーになりたくてなりたくて仕方がなかったですね。



<ことばの力とは>

竹田 それではいよいよ最後のテーマ、「ことばの力」です。たとえば、髪を切るのは美容師さんにしかできないけど、ことばは誰でも使える。そういう「ことば」を職業にしている人たちがことばの力についてどう考えているのかを聞かせていただけたらと思います。まずは渡邊さんからお願いします。

渡邉 わたしは世界を広げる力だと思います。自分が知っている世界って思っている以上に小さいと思うんです。すごく小さい。でも、ことばを通じて外の世界を知ることができる。それで自分の世界がどんどん広がっていく。それはとても素敵なことです。バスの運転手さんがどういう想いで仕事をしているか、わたしは運転手さんのことばを通じて知ることができましたし、それをまたわたしがことばを使って世の中に伝えることができる。わたしにとってことばとは世界を広げていくためのツールだし、それがことばの力だと思います。

竹田 晋平太さんはいかがですか?

晋平太 魔法ですね。ことばは何だってできる。事実じゃないことを事実のように語ることもできるし、嘘だってつける。それだけじゃなくて、人間の感情をコントロールすることだってできてしまう。相手を傷つけることもできれば、気分をアゲることもできる。もちろんそれは自分に跳ね返ってくるから、相手を罵ることばを吐き続けていれば、自分も同じように罵られる。それを職業にしているというのは自分のカルマ。でも、これからは相手に何かを与えて、それを返されるようなことばのつかい方をしていきたいとも思っています。とにかく自分にとってことばとは何でもできる魔法。

宇野 ふたりの話をまとめると、ことばとは「世界を広げる魔法」ですね。

竹田 まとめましたね(笑)。

晋平太 合作だ。

竹田 というわけで、ことばみらい会議第3部「いまと関係することば」も、そろそろ終わりの時間が近づいてきました。最後におふたりから伝えておきたいことばはありますか?これからことばで何をしていきたいとか。

渡邊 誰もが思っていると思うんですけど、どう考えても今がわたしの人生のピークです。でもここをピークにしないようにもっと仕事をごりごりやっていきたいと思います。みなさん、お仕事ください(笑)。

晋平太 僕はもっとラップを広めていきたい。ラップってディスるだけじゃなくて、人に気持ちを伝えたり、人を楽しませることができる。そういうラップをもっと広めていきたいですね。

竹田 ありがとうございます。おふたりの今後の活躍を期待しています。それでは「いまと関係することば」、ここで終了とさせていただきます。おふたりに大きな拍手をお送りください。会場のみなさま、ありがとうございました。

(了)