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2012.2.9
対談
DSC_4943.jpg昨年12月に行われた
鈴木康之さんを囲む夕べ
『コピーライターほどラクな仕事はない』の
全トークをお届けします。


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コピーの殿堂入り巨人を囲む「夕べ」シリーズ第6回
鈴木康之さんを囲む夕べ
『コピーライターほどラクな仕事はない』

2011年12月15日(木)19:00~ TCCクラブハウスにて
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野澤  
本日はお忙しい中お越し頂きまして、ありがとうございます。
鈴木康之さんです。略歴をご紹介させていただきます。
1937年秋田県に生まれ、早稲田大学仏文科をご卒業された後に
桑沢デザイン研究所でデザインを学び、
その後、コピーライターとして、日本デザインセンターに入社されます。
アドエンジニアーズを経てフリーとなり、1969年に(株)タイムを設立。
その後は皆さんもご存じのとおり協和発酵工業を始めとする
数々の企業広告シリーズを手掛けられました。
特に味わいのあるボディコピーで読者を魅了しています。
またコピーライターなら必ず一度は手にし、通読している、
『名作コピー読本』の著者でもあります。

鈴木  
鈴木です。野澤くんとよく落語の話をするんですけど、
先代の鈴々舎馬風が高座にあがると、丁寧におじぎして、顔上げて、
笑って「よく来たなあ」って言うんですよね。
あるとき「よく来てくれましたなあ」って言おうと思ったら、
緊張してつい出てしまった言葉らしいんですけど、ウケたので以来馬風の十八番になった。
まさに僕は今「よく来たなあ」って感じで、心で皆さんにおじぎをしています。


協和発酵との出会い

鈴木  
「康さん、協和発酵の仕事がきたんだけど、やってみない?」って
電通のある人から言われたんですね。1981年のことでした。
じつはそれまで協和発酵という名前を知りませんでした。

その協和発酵がニューヨークにいた某日本人デザイナーに
新たなプランドイメージ構築しようと、CIを頼んだんです。それまでのは
協和発酵という4文字を丸の中に入れた印鑑文字みたいなマークで、
昔よくあったスタイルでした。
それだとどうしても一般の人に親しまれない。特に困るのが求人活動。
いい人材が欲しいんですけど、高校生や大学生に全然知られていないので、
ちょっとおしゃれなマークにしようと、こういうものになったわけです。

          
          CI.jpg


しかしこれ、当時の東洋工業のマークと似ていました。中の1つの形は
ダイエーのマークとそっくりです。これで新たなブランドイメージが
構築できるのか、頼りなく思いました。この企業広告づくりの指名が
僕に来たんですね。幸か不幸か(笑)。
聞いてみたら、バイオテクノロジーで医科家向けの医薬品とか、
発酵製品やその素材とかをつくっている会社だと説明されました。
当時「バイオテクノロジー」という言葉はまだ一般的では
ありませんでした。ヤクルトさんもバイオだし、味の素さんもバイオだし、
バイオテクノロジーそのものを技術としている企業は他にもあったんだけど、
まだその言葉を使ってなかった。
ではまだ馴染んでいないこの言葉を先取りした広告シリーズにしましょうと
言ったら、協和発酵の幹部の人たちも「これからはバイオテクノロジーの
時代になるからいいんじゃないか」ということになった。


2つの問題

鈴木  
そういうことでスタートしたわけですが、問題がふたつ出てきた。
ひとつは、私が全国各地の支社や工場や研究所をまわって
「このマークどう思いますか?」って聞いてみたら、
社員たちの反応が極めて悪かったんですね。

ほとんどの人が「別に」っていう反応なんです。
わずかに20代の人たちが前のマークと比較して
「まあいいんじゃないんですか」っていう程度。

これはちょっと具合が悪いなと思いました。
これから社員がそのマークを胸や名刺につけるし、工場や製品にも
くっついていくのに、社員たちがそれを自分たちのマークだと
ノッテいない。

それから、もうひとつは「バイオテクノロジーって何ですか?」って
研究者に聞いたら、「組織培養」とか「遺伝子組み換え」「バイオマス」とか、
聞いたことのない言葉が次々に飛び出してくるわけです。
聞き返すのも恥ずかしいから、「はあ、はあ」と言いながらメモを取るものの、
僕には馴染みのない、理解のできな話ばかりでした。
取材に来た僕に対して、業界紙の人が来たのと同じくらいのレベルで話を
するわけです。だから、さっぱりわからない。


6181人の名前

鈴木  
まず、ひとつ目の問題を解決する方法として、
社長から新入社員まで6,181人の社員全員にこのマークは自分の会社の
マークなんだという自覚を持たせる仕掛けを考えようと思いました。
それで、これでこういう広告をつくったわけです。

 
          s01.jpg

クライアントとの打ち合わせから帰ってすぐにデザイナーに
「6,181人の名前、全15段に入るか」と聞いて
レイアウトさせたんです。そしたら1割入らなかった。

写植の9級です。新聞が今のようにデジタルではない時代でしたから、
刷りで文字がつぶれないように、小さな字を使ってはいけないという
新聞広告の掲載規約があったんです。大丈夫なのは9級までで、
8級はだめなんですね。9級では1割入らない。
夜中から翌朝にかけてくやしくてしょうがない。で、徹夜明けの朝、
トイレに行ったときにふと気がついた。
「この時間まで長体1番かけることになんで気づかなかったんだ」と。
写植という文字は変型レンズで長体・平体がかけられるんです。
長体1番というのは横に1割縮めた変型なんです。

僕はトイレに行くとなんかアイデアが出るんですね。
それでトイレから戻ってくると「全部やり直そう!」って、
アイデアやレイアウトなども全部変えてしまうものですから、
会社では「ボスがトイレに行くとコワイ」なんて言われてました。

電通の担当者に出社を待ちかねて、新聞の規約をすぐ調べてもらったら、
規約には「9級以上」と書いてあるけど、「9級正体」とは書いてない。
「やったぜベイビー!」ですね。

こういうずるいアイデアが僕はすごく好きなんです。アイデアというのは
見つければ見つかる。見つければ実る。このときから、だめだというものでも
絶対やってみせるという、僕の広告づくりが始まった気がします。それと、
とにかく人がやったことない仕事をやりたい、という意地をいつも
持っていました。


わかったつもりで書いても誰も読まない


鈴木  
ふたつ目の問題です。
文系の僕には研究者の言っていることがさっぱり理解できない。
この問題をどうしたらいいだろうと考えたんだけど、そんなに
ふさぎこむことはないぞと気づいた。

新聞の平均的な読者の中に僕はいるんじゃないかと。
僕が理解できないでいる研究者が話していることを、そのまま書いたって
誰も読みはしないし、わかりもしない。

協和発酵の広報室に「一般紙に出すんだから、私がわかるということを
基準にしてバイオテクノロジーの話を書きたいと思います。よろしいですか?」
と言ったら「いいですよ」って。


絵にならない、話しかない

鈴木  
それからもうひとつ問題が起こりました。
たとえばクルマの会社なら新型車の写真がもらえる。
ビールメーカーだったらパッケージが新しくなればそれが絵になる。

けれども協和発酵の仕事にはほとんど絵になるものがないんですよ。
錠剤を製造してるところなんて単なるオートメーションで、新聞広告で
見せられるようなものではないんですね。

電子顕微鏡写真ばかりなんです。ちっともおもしろくないんです。
その中でこの写真だけがなんとなくサボテンのように見えたんですね。
酵母菌の拡大写真なんですけど。



協和発酵で一番の働き者


鈴木  
協和発酵で実際に一番働いているのは誰よりも微生物なんですね。
微生物の力でいろんな成分を増産している。だから微生物がなかったら
協和発酵の生産はありえない。「6, 000人の社員の1人がいなくなっても、
協和発酵は大丈夫だけれど、微生物が1つなくなったらたいへんなことになる」
と聞いたんです。これはおもしろいなぁと思った。

じゃ微生物ってどこにいるんですか?と聞いたら、土の中に無限に
いると言うんですね。地球上に10万種類はいるらしい。当時の協和発酵は
それを3万株くらいまでストックしてたようですけど、新しく探そうと思えば
無限に探せるというわけです。

当時世間は、「資源は有限だ」とヒステリックに叫んでいた時代です。
ガソリンはいずれ枯渇するし、食料も、水すらもなくなると、そのときに
協和発酵の資源は無限だと研究者が言ってくれたものですから、
その言葉はいいですね、使いますと言って、持ち帰ってコピーにしました。


          s02.jpg



鈴木さんとこはお子さんは?


鈴木  
次のテーマも困りました。細胞融合です。2時間のヒアリングを
受けたんですが、さっぱりわからなかった。それで来週もう一度時間を
くださいと言って、町田の中央研究所まで行って話を聞いたんですけど
やっぱりわからない。細胞融合とは何ぞや?わかりやすくておもしろい話が
聞かせてもらえないんです。「細胞と細胞を融合すると新しい細胞ができる」
ではコピーにならない。

協和発酵は焼酎やワインも造っていましたから、研究所の人たちは早ければ
4時半くらいから酒を飲み始めるんですね。
で、5時を過ぎても僕がわかった顔をしないもんですから、
「ちょっと一杯行きましょうか」って町田の居酒屋に誘われました。

飲み始めたら、「鈴木さん、お子さんは?」って聞くんですね。
「娘が一人います」って答えたら「いい子でしょ?」って。
「まあいい子です」って言ったら「その娘さんは、お父さんとお母さんの
いいところをとったんですよね。だから顔もどこか似ているけど別な人でしょ。
それが細胞融合ですよ」って。

それを早く言ってくださいよ!と。
それで「お父さんとお母さんのいいところをとっていい子が生まれるように。」
ようやくキャッチフレーズを持ち帰られたんですね。これもやむなく
細胞融合の顕微鏡写真です。


          s03.jpg

         
(その2へつづく)