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2011.9.15
対談
TCC2011_0626.jpg「TCC広告賞展2011」、3回目のトークイベントは
新青森駅のキャンペーンで今年のグランプリを受賞した、
高崎卓馬さんと一倉宏さんの対談です。
新青森キャンペーンの制作秘話やコピー作法など、
さまざまなお話を聞かせてくれました。



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■6月26日(日)14:30~16:00

髙崎卓馬氏×一倉宏氏


『おい、グランプリ!』

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髙崎 

よろしくお願いします。電通の髙崎です。

一倉 

こんにちは、一倉です。

髙崎 

最初に今年TCCのグランプリをもらった
新青森のキャンペーンを見ていただきたいと思います。
最初の方は三浦春馬君が出ている、
僕たちがドラマ篇と呼んでいたものです。
後半は青森のいろいろなエリアを三浦春馬君がまわって、
ビデオで撮影したドキュメンタリー的なものです。



~JR東日本/MY FIRST AOMORI~





一倉 

あらためて見て、どうですか?

髙崎 

いいですね(笑)。

一倉 

東京篇から旅立ち篇までは、
企画・髙崎卓馬、演出・前田良輔ですが、
手づくりアイス篇とか味噌餅篇とかは
髙崎君が演出して、カメラも自分で?

髙崎 

カメラは、瀧本幹也さんのところにいた
杉田知洋江さんがまわしてくれました。
これは全部コンテがないんです。
いい場所を見つけたらそこでまわしてという感じで、
その場にいた、いい感じのおばちゃんに出てもらったりして。
でも、意外とみんな芝居が上手だったりするんですよね。

一倉 

では、まずキャンペーンの成り立ちの説明から始めましょうか。

髙崎 

最初は12月4日に開業する新青森駅の告知をしてほしい、という話でした。
ふつうならおもしろいCMをつくって目立てばいいんですが、
調べてみると青森ってエリアごとにかなり違いがあるんですね。

南部と津軽でもかなり違う。なので、新青森駅以外の人たちが、
新青森駅を自分ごとと思ってくれない感じがあったんです。
駅ができて青森全体が観光地として盛り上がるというのが、
JRとしてもいちばんいいので、
それをなんとかしなきゃというのが最初の課題でした。

一倉 

それが一昨年のことですね。

髙崎 

なぜコピーを一倉さんにお願いしたかという話は後ほどしますが、
一倉さんも含めて、最初に集まったスタッフの誰も
青森に行ったことがなかったんです。
それで一泊二日で青森に行って、
夜にみんなで飲みに行ったんですね。

一倉 

一軒目は民謡酒場みたいな店だったよね。

髙崎 

最初は津軽三味線居酒屋みたいなところで。
青森の人って人前で騒いだりしないのかと
勝手に思っていたら、みんな明るい。
        
店の雰囲中は楽しいし、三味線は激しいし、お客さんは歌ってるし。
僕たちが抱いていたイメージと
実際の青森は違うな、とその時思いました。
一倉さんは「三味線ってロックだ」って言ってましたよね。

その後にリトルトーキョーという店に移動したんですが、
そこで大島征夫さんという偉いCDが
北しばりでカラオケを始めたんですね。
僕はカラオケが全然ダメなんですけど、
みんなが騒いでいる時に一倉さんが渡してくれたのが、
会場にも展示してある、あのメモだったんです。

一倉 

そうか、あれはリトルトーキョーだったんだ。

髙崎 

「MY FIRST AOMORI」と書いたメモを僕に渡して、
「こういうキャンペーンどうかな?」って。
でも僕はあいまいな返事しかできなかったんです。
これで決めていいのかなって思ったし、
でも巨匠の書いたコピーだし。
どうしようかなってドキドキしてたら、
一倉さんは「チェッ」みたいな感じで(笑)。


        

         IMG_5439.jpg
         髙崎卓馬さん


一倉 
そうだった?(笑)

髙崎 
そのまま一倉さんはカラオケを始めてしまったんですよ。
北しばりを忘れて、関係ない曲を歌っていましたけどね(笑)。

一倉  (笑)

髙崎 
それがキャンペーンの最初だったんですけど、
やっぱり自分で見に行くのってすごく大事だと思いました。

一倉 
理屈じゃない、その時感じた空気や印象をその場で言葉にして、
結果的にその言葉を使ってもらえた。
そういう共有はやっぱり大切だね。

髙崎 
そうですよね。同じものを見て、同じ感覚になっているから。
それと、ふたりとも青森が初めてだったというのも、
大きいかもしれないですよね。

一倉 
何かもやもやした、いいものが青森にはあるぞと思ったんだよね。
それを下手にコピーにすると、
「何もないところがいい」みたいなのになりがちなんだけど、
それを言ってしまったら青森の人に失礼になる。
青森には絶対に何かあるということを伝えたい、
というのが僕たちの抱いていたイメージだったよね。

髙崎 
青森の空気をちゃんとつかまえたほうがいいなと思ったんですね。
どうすれば青森という土地が魅力的に見えるかと思いながら現地に行って、
行った瞬間に「透明感」という言葉を見つけた。

それがキャンペーンをつくっていく時の大きなルールになったと思います。
人や風景も含めて、透明感のあるつくりにしたいという。
それが槇原敬之さんの曲を使うことにもつながっています。

それとその時に、青森のミュージックステーションの視聴率は
40パーセントを超えているという話を聞いて驚いたんです。
視聴率が40パーセントを超えている土地で
CMプランナーが何も効果を出せなかったらヤバイですよね(笑)。

一倉 
キャンペーンの構造について言うと、
まずヒロイン募集から始めたんですね。

髙崎 
そうです。

一倉 
ヒロイン募集のポスターが青森のいたるところに
貼られるという状況ができて、
ヒロインが決まった後に第一話を撮り始めた。

髙崎 
このキャンペーンは青森でやった青森のためのキャンペーンで、
ヒロイン募集なんか青森で知らない人はいないくらい大量に出稿して、
50人ぐらいしか応募がないんじゃないかと言われていたんですけど、
結果的に2,600人ぐらい応募がありました。

10代、20代に限っていたんですけど、
50歳過ぎの人や赤ちゃんもいて(笑)。
その中からあの子を見つけました。

東京だと2カ月くらいの期間でバーッとオンエアしたんですけど、
青森ではその前からずっとキャンペーンをやっていたんですね。
青森でつくっているキャンペーンが東京に来たというかたちをとりました。

ちなみに、福里さんがあの女の子が途中で変わっているという
変な説を流しているらしいです(笑)。

一倉 
そのくらい成長したんだよ。
やはり女の子とはそういうものだなと思ったね。
正真正銘の地元の高校生なんだけどね。


         IMG_5521.jpg
         一倉宏さん


髙崎 
どの辺から変わったのかなぁ。
全然動じないで三浦春馬君の相手役をやるようになりましたからね。
あの子も地元ではわりと有名になっちゃって、
どこへ行っても、「○○さんだ」って言われるって笑ってましたけど。

この間会った時に、芸能界に入りたいって言うかなと思って、
「これからどうしたいの?」と聞いたら「電通に入りたい」って(笑)。
 


大河ドラマのようなCM

髙崎 
どうしてコピーを一倉さんにお願いしたかという話なんですが、
新しい駅ができるというような、ニュースや社会現象にもなるようなことを
広告するのって、僕にとって初めての体験だったんですね。

JRの中にも「夢がかなった」と思う人はいっぱいいたし、
何より僕自身いつかやりたいと思っていた旅の仕事だった。

その時なんとなく、今までのやり方でやったらダメだなと思ったんです。
僕はふだん自分でコピーも書いてしまうんですけど、
今回は自分のキャパを超えている可能性があると思って、
一倉さんにお願いすることにしました。

僕、一倉さんのコピーを全部持っているんですよ。
弟子に年鑑を全部コピーさせて、それをいつも読んでいます。
ボディコピーもほんとうに大好きです。
そういうあこがれの人に仕事をお願いして、
とにかく背伸びしようと思ったんですね。
演出も前田良輔さんという初期のサントリーウーロン茶や
「その先の日本へ。」を撮った巨匠に初めてお願いしました。

一倉 
撮影が大変だよね。

髙崎 
鬼ですね(笑)。
「あそこの田んぼに水張れないの」って前田さんが言うと、
「はい」って制作部が走って水を張ろうとする。
植生を変えようとするんですよ(笑)。
「あの電柱邪魔だな」と言うと、「切れるかどうか聞いてきます」って
走って行っちゃう(笑)。

新幹線がバーっと出る、すごく好きなシーンがあって、
新幹線の操車場で撮っているんです。
そこで前田さんが「新幹線、あと3センチ前」とか、
「ちょっと前に出過ぎました。5センチ下がって」って指示するんですけど、
操車場の一番偉い人が前田さんを見て「おまえか」って。

「その先の日本へ。」の撮影の時、
その人が新幹線を運転していたらしいんですけど、
むちゃくちゃな要求をする監督がいて、頭にきていたらしいんです。
今回もまた3センチとか言ってる奴がいると思って、見たら同じ監督だった(笑)。

一倉 
いや、でもJRの運転手から見ても、
新幹線をよく撮ってくれているって思うんじゃないかな。

髙崎 
そうですね。仮編を見せたらみなさんちょっと泣いていました。
仮編を仕上げて持っていくと、
担当の方はそれを持ってどこかに行っちゃうんですよ。
自分の職場の大きなモニターで見てるんです。
そうすると街頭テレビみたいに人だかりができて。

一倉 
当たり前だけど、JRの方々ってみんな電車大好きだもんね。

髙崎 
あと、駅員をフィクションでやるというのが
JRとしても初めてだったんですね。
それもあって、自分たちと重ね合わせて見てくれたみたいです。
今思うと、ほんとうにいい仕事でしたね。

一倉 
うん。

髙崎 
無理矢理「うん」と言わせてる(笑)。

一倉 
いやいや。でも高崎君、この仕事が終わるのが
寂しそうだったよね。

髙崎 
そうですね。もっと続けたかったです。

一倉 
ほんとうは続けたいよね。
この先このふたりがどうなるのかも含めて。


         IMG_5506.jpg


髙崎 
東京に行った女の子が高いヒールを履いて、
カツカツ音をさせて戻ってくるという話を最後の撮影の時にしたら
みんなにすごく怒られました。「台無しにするのか」って(笑)。
   
一倉 
東京にいる4年間で彼女はどうなってしまうんだろう。

髙崎 
変わってしまうんですよね、たぶん。
ちょっとよくないところでバイトをしたり。
それで「どうかと思うよ」と、元に戻すのが三浦春馬の仕事になる。
そこまでやりたかったんですけどね。

一倉 
首都圏で見ると1話から8話まであっという間だけど、
青森ではほぼ一年かけて展開しているので、
NHKの大河ドラマみたいなんですよね。
三浦春馬の成長が描かれていて。
ただの高校生だったヒロインも最後は女優みたいになってきたし。

髙崎 
連ドラのようにしたかったんです。
自分の住んでいる地域がNHKの連続ドラマの舞台になると、
その地域はすごく盛り上がって、経済効果も生まれる。

だからほんとうに青森という地域のCMなんです。
震災後、無事に新幹線も走り始めたし、
みなさんぜひ青森に行ってみてください。
いいところばかりで、魚もおいしいし。

一倉 
魚はおいしい。

髙崎 
北海道が近いからですかね。お寿司もすごくおいしい。

一倉 
ポスターのコピーにもなっているけど、
青森は日本海の海の幸と、太平洋の海の幸がある唯一の県なんですね。
ちなみになぜ「唯一の県」にしたかというと、北海道があるから。

髙崎 
なるほど道が入ってくるから。今初めて聞いた(笑)。



槇原敬之さんの音楽

一倉 
このキャンペーンって音楽が大きいじゃない。
最初に槇原敬之さんの『素直』があって、
その後『林檎の花』が生まれて。
   
髙崎 
音楽に関して言うと、僕は企画をする時に大体曲を決めるんです。
自分が思っていることにいちばん近い音楽を見つけたら、
それを何回も聴きながらストーリーを書いていく。

今回は「青森版坊ちゃん」をやろうと思って、
それに合う曲を自分のiPodの中からひたすら探して、
最初に見つけたのが槇原さんの『素直』という曲だったんです。
そういえば『素直』って、昔PHSのCMで使われていたんですよね?

一倉 
うん、アステルのCM。じつはその仕事は当時僕がやっていた。

髙崎 
えっ!

一倉 
「さびしがり屋」をキーワードにして
最初は僕が歌詞を書いたんだけど、
その歌詞は使ってもらえなかったのね。

じゃあキーワードの「さびしがり屋」だけは使ってくれと言って、
サビの歌詞が「さびしがり屋はいつも僕に笑ってくれた」になった。
今回はサビの部分は使わなかったけど、
そんな感じで今につながっています。

髙崎 
若干鳥肌が・・・(笑)。

一倉 
名曲だよね。

髙崎 
名曲ですよね。ずっと『素直』を聴きながら企画をして、
プレゼンでは最初から最後までストーリーを説明したあと、
音楽は槇原さんでやりたいと言いました。
         
歌を聴いてもらったら、僕が手に入れようとしている世界観が
クライアントにもすーっと理解されました。
「ああ、こういう感じねなるほど」と。 

 『素直』のお願いをしに槇原さんのところに行った時、
CMの舞台が新青森駅に移るタイミングで
新曲をひとつ書いてほしいとお願いしたんです。
その曲を新青森駅の発車のメロディーにしたり、
青森みんなのテーマに曲にしたかったんですね。

既存の曲ももちろんいいんだけど、
青森のために書いたという事実がほしかったんです。
そのお願いをするために槇原さんの曲を全部聴きました。
もともと好きだったんですけど、CDを全部持っているわけじゃないから、
CDを何十枚も手に入れて全曲聴いて。

すごいアーティストに曲をお願いすると、
全然違うものが上がってきたりすることがあるじゃないですか。
今回は先行して流れる『素直』の世界が崩れたら嫌だから、
5曲くらいを選んで「この曲のこの感じ」というふうに、
ものすごく細かいお願いを書いて持っていきました。

そしたら「そんな曲まで聴いてくれてありがとう」って
すごく気に入られちゃって。
ちょっとドキドキしました(笑)。
        
         IMG_5437.jpg

槇原さんって「詞先」なんですね。
詞を先に書いて、その詞にメロディーを与えるという
珍しいやり方をしていて、
「詞ができたらメールするね」と言われて。
で、上がってきた曲があれで。
        
撮影中にデータをもらって、
クルマの中でみんなで聴いたんですけど、
ドンズバ過ぎてびっくりしましたね。やっぱりすごい人だなと。
          
一倉 
あの曲を聴いた時に思ったけど、すごい職人だよね、マッキーは。
タイアップで、要望に合わせて曲をつくりますと言われて、
いい詞が上がってきたことはないからね。

だから僕は詞は自分で書くか、
斉藤和義のようにほんとうに信頼する人にしか頼まないんだけど、
槇原さんはその点すごくわかっているよね。

歌詞で描かれている男女の微妙な関係も、
CMのドラマをなぞっているわけではないんだよね。
なぞってはいないんだけど。

髙崎 
そうなんです。全部合っているんですよね。

一倉 
微妙なアヤとかね。CMの世界観にものすごく合っていて、
言葉の色彩の設計なんかも
前田監督のフィルムに合っているんだよね。
『林檎の花』が上がってきた時はやっぱりすごいと思った。

髙崎 
そうですよね。僕もいろいろな人とやっていますけど、
群を抜いてすごいかもしれないですね。
能力が突出している人だと思います。

ちなみに、『ブレーン』に載っているTCCの審査評で佐々木宏さんが、
「『素直』も『林檎の花』も僕のカラオケのレパートリー」って
書いているんですけど、『林檎の花』は新しくつくったのに、
なんであの人のレパートリーなんだろうって(笑)。

一倉 
あんまり好きだと自分のものだと思ってしまう。

髙崎 
すごい。でも、それは広告のモンスターになるための
秘訣かもしれないですね。
好きなものは俺のもの。
あれは俺がつくったんじゃなかったっけ、みたいな(笑)。



イメージからコピーを書く

髙崎 
ここから話題を青森新幹線から、コピーの話に変えますね。
僕は電通のコピーライターの書くコピーと、
一倉さんたちの書くコピーには
本質的な違いがあると思っているんです。

それは世代の違いによるものなのか、
代理店とフリーの違いによるものなのか、
いろいろ理由を考えるんですけど、一倉さんはどう思われますか。
違いがあると思います?

一倉 
いや、そんなことはないと思うけど。

髙崎 
個人差なんですかね。

一倉 
仕事の形態やジャンルにもよると思うけど、
僕はもともとお酒のコピーを書いていたわけです。
お酒育ちだから、細胞がほとんどお酒でできているんですね。
お酒って機能を言っても仕方がないから、
頭の中の妄想でいかに書くか、なんです。
   
やっぱり僕は、コピーはロマンチックでありたいと思う。
音楽がロマンチックであるように、
言葉もロマンチックでありたいと思ってずっとやってきました。
それがたぶん酒育ちってことだと思うんだけどね。

髙崎 
なるほど、酒育ち。だから好きなのか。

一倉 
そういえば、僕のコピーを見て勉強してたと言ったけど、
髙崎君が昔話してくれた、あの話をしてもいいの?

髙崎 
どの話ですか。怖いんですけど(笑)。

一倉 
福岡にいたと言ってたから高校時代でしょ。
僕の書いたコピーに思い出があるって。


         IMG_5529.jpg



髙崎
はいはい。岩田屋というデパートがあって、
そこにピラミッドゾーンというファッションビルがあったんですけど、
当時、そこで働いている女の人を好きになって、
しょっちゅう通っていたんですね。
で、そこに貼ってあったポスターのコピーが大好きだったんです。
「いじわるは少年のアイラブユーでした。」という。

一倉 
仲畑広告にいた頃ですね。
ピラミッドゾーンで垂れ幕をつくることになったんだけど全然お金がなくて、
副田さんが持ってきた写真が石の写真。
石が1個の写真と、2個の写真。これでコピーを書いてよと。

髙崎 
でも、コピーライター的には楽しい仕事ですよね。

一倉 
うん、楽しいね。金髪のモデルがいて、そこにコピーを書くより、
石だけの写真でファッションのコピーを書く方が燃える。

髙崎 
いいですよね。副田さんが偉いですよ。
僕らのまわりでつくるコピーってどこかロジカルなんです。
ロジックがあって、ミッションがある。
言うべきことを見つけて、それをどう言うかというコピーが多くて、
コピーをつくる思考が透けて見えるんですね。
だから言葉としてロマンチックじゃない。

でも、一倉さんのコピーは捉まえ方が全然違っているように感じて、
見る度に「こんなの書けないよ」って思うんです。
そこがすごく不思議なんですけど、
でも一倉さんは今日、そこを教えてくれる気配がないですね(笑)。

一倉 
いやいや、それはちょっと褒めすぎじゃないかと。
でも、最近はクライアントの人が
社内で通しやすいように書いてしまうと、
どうしてもロジックがあるコピーになってしまうけどね。

髙崎 
「うまいんだな、これがっ。」なんて、
絶対に電通のコピーライターには書けない気がする。

一倉 
あれは佐藤雅彦さんに
「一倉さん、絶対に賞を獲らないコピーを書いてください」
と言われたから。

髙崎 
また狂ったディレクション(笑)。

一倉 
その前からずっとモルツは担当していて、
新発売の時は「父も母も素敵でした。」という、
レトリカルな、ロマンチックなコピーでした。



         IMG_5796.jpg

 

髙崎 

そのシリーズでたくさんありましたよね。

一倉 

そこにスーパードライが出てきて、
「わたしはドライではありません」というコピーを書いたんだけど、
そこにもまだレトリックがあるんです。

髙崎 

わかります。

一倉 

佐藤雅彦さんと会って、最初僕は歌詞を書いたんだよね。
そしたら雅彦さんが「うーん、なんか余分だ」と。
で、ひたすら「モルツ、モルツ、モルツ、モルツ」と
繰り返すコマーシャルになって、最後の一言も、
「絶対に賞を獲らないような、究極のコピーにしてください」と言われて。
それで「うまいんだな、これがっ。」に。

髙崎 

すごいな、得体が知れない。
それはどういう意図でそう言っていたんですかね。

一倉 

雅彦さんというのは、おそらく生まれてから一度も
フィクションを読んだことがないんだと思う。

自分の思い出の中には、ロマンチックなものや
叙情的なものがあるんだけど、
小説やフィクションによってつくられた叙情というものに、
あの人は心を動かされないと思うんだよね。

だから、彼のロジックの中ではそういったものを余分と考えてしまう
ということなんだろうなと。

髙崎 

なるほど。

一倉 

ほんとうにもう、頭の構造が僕とは
まるで真逆、という人との組み合わせでした。

髙崎 

あんまりロジックで考えると、
「うまいんだな、これがっ。」のように
流行る言葉にならない気がします。
とはいえ、流行らそうと思っていると流行らないし、
難しいところですよね。

ものをつくる時、僕はすごく悩んで、
他の人はどうやって考えているのかなと思いながら、
自分の頭の中をその人の頭のようにして考えてみたりするのですが、
一倉さんはふだんコピーをどうやって書いているんですか?
巨匠の苦悩を知りたいです。

一倉 

どういうふうに書いているかといっても、
やっぱり漠然とイメージから書いているよね。
だから、「このイメージでいいんだ」というのがつかめれば、
あとはそれをいかに伝わるように書くかという感じ。


        

IMG_5447.jpg


髙崎 
書きながら考えるんですか?
それとも、イメージが固まってから書く?

一倉 
何かフワフワした雲のようなものでも、
イメージがつかめたらあとは
書くだけの作業という感じになります。

髙崎 
僕はイメージをつかむまでガーっと書いていくんです。
バカみたいに書いていくうちに
なんとなくこの辺がいいと体で感じる、
というタイプなんですけど、
なんとなく一倉さんはフワッと書いている気がします。

一倉 
そうですね。そんなに数は書いてこなかったかもしれない。
博報堂の打ち合わせに多いんだけど、
壁一面にコピーがバーっと貼ってあって、
それを見ながらブレストすることってありますよね。
そういうことを頭の中でやっている感じです。
だから、ある程度見えてきてから書き始めます。

髙崎 
そうか。やっていることは一緒かもしれないですね。

一倉 
一緒だと思う。

髙崎 
なるほど、やり方がちょっと違うだけなのかな。

(その2へつづく)