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《対談》TCC広告賞2013トークイベント 第2回
2013.12.27
対談
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「TCC広告賞展2013」第2回目のトークイベントは、今年の最高新人賞を受賞した
博報堂の吉岡丈晴さん。
2011年に最高新人賞を受賞し、今年のTCC賞も受賞した電通の藤本宗将さん。
そして1995年に最高新人賞を受賞したワトソン・クリックの山崎隆明さん。
三人の最高新人賞受賞者が一堂に会し、「教えて!最高先輩!」というテーマで下積み時代から現在に至るまでの苦労話を笑いを交えて聞かせてくれました。



吉岡
博報堂の吉岡丈晴と申します。よろしくお願いします。
今年、最高新人賞をいただいたんですけど、僕はわりと
おっさんで、今年で35歳なんですね。最初は受賞作に
ついてひとりで話してくれと言われたんですけど、それ
はキツイなと。その時、不遇な時代の長かったふたりの
先輩を思い出して、全然面識はなかったんですけど、
「僕も12年間後輩に抜かれまくって生きてきました。
現在ご活躍されているおふたりの苦労話を聞かせていた
だけませんか」というメールをお送りしたら、快く引き
受けてくださいました。

今日は一応「無風時代」「転機の時代」「現在」という3
部構成になっています。僕は別に司会というわけじゃな
いんですけど、まずは山崎さんからお話を伺ってよろし
いですか。


新人賞には程遠かった無風時代

DSC_0776.jpg


山崎
吉岡さんから「不遇時代の悲惨な話をして、若い人に元
気を与えたい」という話を聞いて、快く承諾したのです
が、いかんせんこのふたりが「トークが苦手」と言って
まして。すでにいっぱいいっぱいになっているのを見て、
やっぱり来なければよかったなと(笑)。

僕の不遇時代というと、電通に入社したのが1987年だっ
たんですけど、入社から3年くらいで、4、5回はチーム
を異動させられたんですね。当然仕事という仕事はあり
ませんでした。その時代のことでいちばん印象に残って
いるのは、あるハウジングメーカーの仕事だったんです
けど、毎週日曜日にスーツを着て住宅展示場に来る人た
ちの受付をするんですね。「こちらに住所と名前をお願
いします」とか言ったりして。広告制作とはまったく関
係ない。すいません、延々こんな話してていいんですか? 

吉岡
全然大丈夫です(笑)。

山崎
僕は31歳でTCC新人賞をいただいたんですけど、20
代はそんな感じで出品できるものがまったくなかったで
すね。藤本さんはその辺どうですか?

藤本
僕は2年前に新人賞をいただいたんですけど、その時入
社15年目で30代も半ばを過ぎていました。僕も20代
の時にはTCCに出せるものが全然なくて、それでも一
生懸命出していたんですけど、だんだん「もう、いいや」
みたいな気持ちになってきて、新人賞をもらう前の3年
くらいは応募すらしてませんでした。「俺はTCCとは方
向性が違う。違う道を行く」みたいな振りをして(笑)。

山崎
違う振りといえば、TCCのリレーコラムで、吉岡さん
も書いてましたよね。かなり悲惨な話を。

吉岡
僕は28歳くらいから「獲った顔」をしていました(笑)。
「俺はもう獲ってるから」みたいな。新入社員が入る度
に獲った顔で「お前らもがんばれよ」って。でも年鑑を
見られるとすぐにバレるという(笑)。


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山崎
なんだっけ、歯ブラシの話もしてましたよね?

吉岡
あるCDに「おまえにこれを任せた」といって歯ブラシ
を渡されて、「これのキャンペーンを任されたのか」と
思ったら、ほんとうに歯ブラシのパッケージのコピーを
書く仕事でした(笑)。4年半くらいずっとそれを書い
ていました。

山崎
それはTCCには出せないですよね。

吉岡
「歯と歯の隙間がどうの、裏の裏までどうの」みたいな
コピーなので、出せるわけがないです。年鑑とは全く違
う世界でしたね。

山崎
でも若い頃の仕事ってわりとそんな感じですよね。そん
なに都合良くおいしい仕事なんかこない。僕がひとりで
やった初めての仕事って、競馬の仕事で、いろんな先輩
が嫌がった新聞一段の原稿でした。「ウマンガ」という
4コマ漫画をつくったんです。風邪をひいた馬がくしゃ
みをして、「ハナの差」で勝つみたいな。でも、そんな
もの、TCCの審査員は無視しますよね(笑)。

藤本
僕はもともと広告にそんなに興味はなくて、たまたま入っ
たのが広告会社という感じなんです。テレビ局に入って
地味なドキュメンタリーをつくりたいと思ってたら、全
部落ちちゃって。そしたら今の会社が拾ってくたんです。

会社に入ったら、たまたまクリエーティブ局に配属になっ
て、「何やりたい?」と聞かれたんですけど、広告のこ
とを勉強したことがなかったので、CMプランナーとい
う職種を知らなかったんですね。コピーライターという
のはなんとなく聞いたことがあったから、「コピーライ
ターですかねぇ」と答えたら、いつの間にかコピーライ
ターになってました。映像をつくりたいと思って会社に
入ったんですけど、結局ずっとグラフィックのコピーラ
イターをやっています。

最初は新聞広告ばっかりつくってたんですけど、原稿の
サイズだけはデカかったんですね。一年目の途中くらい
で「15段やってみるか?」と言われて、「15段つくらせ
てもらえるんですか!? やります!」って言ったら、携帯
電話の機種がずらっと並んでて、キャッチが「史上最軽
量」とか「料金プラン10%値下げ」みたいな原稿で(笑)。
そういうのを1週間に2、3回ひたすらつくってました。

山崎
それはけっこう体力が要りますよね。

藤本
そうですね。だいたい夕方にオリエンが来て、朝までに
3案くらい考えるんですけど、ADがいないんですね。
僕とプロダクションのデザイナーさんのふたりだけでつ
くって、CDも見ないので、そのまま営業に渡して。昼
間はずっとデスクで寝てて、夕方になると、「返事が来
たよ」って起こされて、また朝まで作業して。そんなこ
とを何年もやっていたのですっかり夜型になりました。


DSC_0783.jpg


師匠のこと

吉岡
おふたりは師匠っているんですか?

山崎
藤本さんは師匠がいたよね。

藤本
最初はいい師匠についてたんですけど、2年目から離れ
てしまいました。さっき山崎さんが異動ばかりだったと
いうお話をされてましたけど、僕も数えたら10年間で
10回以上変わっているんですね。たらい回しにされて
いる感じで。

山崎
たらい回しはショックだよね。

藤本
ショックですね。愛されてないんだなって思います。フ
ロアの中でもだんだん端のほうに移っていくんですよね
(笑)。

山崎
師匠の話からちょっと外れるけど、僕は半年だけしかい
ない部とかありました。確実に「おまえなんかいらん」
と言われてるわけで、嫌やったねぇ。

藤本
つらいですね。

山崎
僕はどちらかというと陽気で元気な若者だったから、
「君は営業向きだ」とか上司に言われてましたね。電通
の新入社員が全員登る富士登山※でも全体で9位。そん
なに張り切って山登りするヤツはクリエーティブ局には
いない(笑)。営業向きと言われてからは、できるだけ
大きな声でしゃべらないとか、電話に出ないとか、「あ
いつ陰湿な奴なのかな」と思われるように自分を演じて
ましたね。セルフブランディングです(笑)。

※新入社員が全員で富士山に登る電通の恒例行事。

吉岡
いますよね、そういう人(笑)。

山崎
話がすっかりズレました。師匠の話です。

吉岡
僕が一度ついた師匠は「寝ない奴がえらい」という人で
した。その頃京浜急行で通勤してたんですけど、徹夜続
きで寝過ごして、「YRP野比」という横須賀のほうにあ
る駅まで行ってしまったことがありました。金沢文庫に
も2度行ったことがあります。

山崎
20代の頃はひとつ上に林尚司さんというめちゃくちゃ
優秀な先輩がいて、その人の仕事の仕方をいつも横から
見ていましたね。入社2年目にいきなりTCC最高賞を
獲ったんですが、新人部門に出したつもりが一般部門に
出してて、それが最高賞になってしまったという、すご
い人です(笑)、最初にこの仕事の楽しさを教えてくれ
たのは、林さんですね。

藤本
僕は一年目の師匠から外れたあと、転々としていたんで
すけど、恐いCDの下につけられることが多くなってき
て。

山崎
忍耐強いタイプ?

藤本
忍耐強いとは思わないんですけど、がんばってないとチャ
ンスは来ないと思って、どんなにひどい目に遭っても我
慢しようと思ってました。コピーの話をいろいろ教わる
んですけど、先輩の話が違うと思っても、反論できない
性格なんです。

山崎
僕も入社して3回目の人事異動でついたCDに連れられ
て、大阪の焼鳥屋に行ったことがあるんですけど、そこ
で「広告に必要なことって何かわかるか?」って訊かれ
たんです。で、そのCD、いきなり男性局部の放送禁止
用語を3文字、大声で叫んだんですよ、店の中で。店の
人がみんな振り向くじゃないですか。そしたら「これが
広告や」って(笑)。「みんな振り向くことがまず大事
んや」と。すいません、下ネタで。

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ライバルなんていなかった

吉岡
山崎さんはライバルっていますか?

山崎
20代の頃は同期がTCCを獲ったりすると焦りましたけ
ど、ライバルというよりは自分を何とかしなくちゃとい
う感じで、人のことを考える余裕はありませんでしたね。

それからだいぶあとになって、多田琢というCMプラン
ナーが現れましたけど、彼は電通の同期なんですね。多
田は最初営業で、新人賞を獲るのは僕のほうが早かった
んですけど、転局後すぐに彼も獲って。「多田、良かっ
たな」なんて言ってたら、あっと言う間にスターになっ
てしまいました。

多田と僕が同期であることが師匠の石井達矢さんに知れ
たら、怒られると思ったので、そのことは隠してたんで
す。だから石井さんの前では「多田さん」って呼んでた
んですけど(笑)、ある日多田が東京で石井さんに会っ
た時に、「山崎、元気にしてますか?」って僕のことを
話題にしたみたいで。そしたら「山崎っておまえと何年
違い?」「いや、同期です」。それで同期であることがバ
レた(笑)。

藤本
僕の場合、新人賞を獲るまでがダメ過ぎて、ライバルと
いうより、他の人がみんな自分よりすごい人に見えちゃっ
て、俺だけこんなでいいのかってずっと考えていました。
タレントがどうしたとか、ディレクターを誰にしたとか、
CMの仕事をやっているというだけで輝いて見えて。僕
はモノクロの新聞をずっとつくってて、2次元のポジし
か見たことがないような感じだったので、ライバル心を
抱くというより劣等感しかありませんでしたね。ほんと
うに救いのない話ですけど。

吉岡
僕もそれに近い感じです。「PARTY」の川村君とか、
「SIX」という会社のメンバーとか、めちゃくちゃ優秀
な同期がいて、彼らが「表現」と戦っている中、僕は
「薬事法」と日夜戦うみたいな感じ(笑)。薬事法にだ
けはどんどん詳しくなって、TCCとは全く違う方向を
突き詰めていましたね。

山崎
それは確実に票が集まらないね(笑)。

吉岡
票というか、出すことすら考えないです。今でも薬事法
のことは僕に訊いてくれたら何でも答えられます(笑)。

山崎
そんなおふたりですけど、藤本さんは2011年に最高新
人賞を獲りました。あのベルリッツは断トツでしたよね。
吉岡さんも今年獲るべくして最高新人賞を獲っている。
それはダメだった自分が力をつけたということなんです
か?

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藤本
ベルリッツはたまたま伊藤公一さんというCDの部に異
動になって、そこで任された仕事です。伊藤さんが部を
つくることになって、AD2名、コピーライター2名、C
Mプランナー2名を集めたんですね。その時、他局から
移ってきた人をひとり入れようと、僕に声がかかったん
ですけど、僕のことは最初CMプランナーと思っていた
みたいです。それくらい僕のことを知らなかったのに、
なぜか仕事をどんどん任せてくれたんです。これまで誰
も期待してくれなかったから、「おまえ、やれよ」と言わ
れて、がんばりました。

山崎
吉岡さんは?

吉岡
僕はとにかく量はめちゃくちゃ書いてたんです。それは
今思うと良かったなと思います。地味な仕事だったけど、
すごい量のコピーを書いていたので、長いボディコピー
を書く力はいつの間にか身についていて、それが今回の
ヘーベルハウスのような仕事で出せたのかもしれません。

山崎
ヘーベルハウスはボディコピーも良かったですよね。やっ
ぱり書いてみるもんですね。

吉岡
そうですね。歯ブラシでも「こんな仕事」と思っていた
らダメだったと思います。

山崎
ちょっとつまらないと思っている仕事でも、そこを突き
詰めていくと力がつくということですね。

吉岡
筋力は絶対つくと思うんです。その時培った筋肉が別の
商品を任された時に使えるというのを実感しました。

山崎
それはすごくいい話ですね。賞に出せないものでもひた
すらがんばってつくるということですよね。

吉岡
そうですね。


モチベーションを保つ秘訣

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山崎
若い頃はとにかくおもしろい仕事がしたいという気持ち
だけはいっぱいあったんですけど、自分にその力がない
上に、クライアントからの意味不明なフィードバックへ
の対応など、とにかく疲弊して、だんだんやる気がなく
なっていった時がありました。そんな時に電通関西の
「堀井組」の作品集を見たんですね。「堀井組」という
のはCDの堀井博次さんを中心に、ラディカルなCM
をいっぱいつくっていたチームです。

夜中の12時頃嫌々修正の企画を考えている時にその作
品集を見たら、2時間釘づけになりました。ほんとうに
おもしろくて非常識な作品集でした。「こんなもの、
よくつくっているな」というものばかりなんですね。商
品のことがよくわかっておもしろい。話題になってモノ
が売れているCMもいっぱいあった。全部見終わったあ
とに一視聴者として「楽しかったなぁ」と思って、なん
だかすごくすっきりしたんですね。

その時に思いました。今自分が嫌々つくっているCMも
おもしろいものに変わる可能性があるんだって。それで
作品集を戻しておこうと思って、石井達矢さんのデスク
に行ったら、机の上に石井さんの名刺が置いてある。「電
通クリエーティブ局CMプランナー」って書いてある名
刺。僕の肩書と同じなんですよ。その時初めて本気でヤ
バイと思いました。同じ肩書なのに、俺恥ずかしいなぁ
と。クライアントのせいにして、くだらないものばかり
つくっている場合じゃないぞと。

そこからですね、自分が向かうべきゴールが見えたのは。
ゴールさえみつかれば、あとは簡単です。ゴールに向かっ
ている途中だと思えば、今やっている作業がつらくても、
嫌じゃなくなる。

広告って見る側も嫌々見るものなのに、つくっている側
まで嫌々つくっていたら悲惨じゃないですか。だから、
そこからは上司に何と言われようと、自分が楽しんで広
告をつくろうと自分を主体にするというスタンスがはっ
きりしてきました。

吉岡
いい話です。

藤本
ほんとうにいい話で、今日はここで終わりたいくらいで
す(笑)。

僕は新人賞を獲る前、自分はこの仕事に向いてないから、
会社を辞めたいっていつも思ってました。でも急に辞め
てもお金に困るから株を始めてみたんです(笑)。そう
したら株価が気になってしょうがないんですね。仕事中
も携帯で株価をチェックしたりして、CDから話しかけ
られても「今仕事してる場合じゃないんです」っていう
くらい、ダメなところまで落ちてました。

そんな時にベルリッツをやることになって、初めて世の
中の反応を感じることができたんです。それが自分にとっ
てすごく励みになりました。今はツイッターとかで反応
を見ることができますよね。自分の仕事がどう言われて
いるのかすぐにわかる。ひどいことを言われている時も
あるんですけど、その広告を見て商品を買ったというよ
うなつぶやきがあると、ちゃんと世の中のためになって
いるんだなと実感できる。そういう世の中の反応を確認
することが今はいちばんのモチベーションになっている
と思います。

山崎
吉岡さんのモチベーションは?

吉岡
僕はあまり自分を出したいタイプじゃないので、若い頃
は営業だったり、プロダクションのデザイナーさんだっ
たり、その仕事に携わる誰かがよろこんでくれることが
励みになってました。

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山崎
いろんな事情があって、つくったものがそんなに良くな
くても、クライアントの担当者から「よくがんばってく
れた」と言われたりするとすごくうれしいよね。

吉岡
そうですね。

山崎
僕もそういうことによろこびを感じていた時があったん
ですけど、ちょうどその頃結婚したんですね。そしたら
奥さんが僕のつくったCMを見てみたいというので、ま
とめて見せたことがあるんです。全部見終わったあとで
奥さんが言うんです。「不安にならないか?」って。僕は
その言葉の意味がわからなくて「どうして?」って訊い
たら、「こんなにつまらないものをつくって不安にならな
い?」って(笑)。

それまでクライアントのいろんな事情をクリアして、
「山崎よくがんばったな」と言われることで満足してい
たんですけど、世の中の人にはそんなプロセスは関係な
いんだなと、奥さんに言われて気づいたんです。「じつ
はこれはもともとこういう企画だったんですけど、宣伝
部長の意見でこういうふうになっちゃったんですよねー」
ってCMが流れる家庭を一軒一軒訪ねて説明できたらい
いんですけど(笑)。

そこから、いい人でいたらダメだなと思いました。僕は
A型のてんびん座なので、すごい平和主義者で、ケンカ
も嫌いだし、わがままもほとんど言わなかったんですけ
ど、そこから変身しましたね。

吉岡
自分が妥協するということは、自分だけじゃなくて、そ
の仕事に関わるすべての人が妥協することになってしま
うので、それがすごく嫌だなと。僕も今はそんなふうに
ポジティブに考えています。


自分の転機になった仕事

山崎
では、ここからはそれぞれの転機について話してみましょ
うか。吉岡さんは?

吉岡
僕はヘーベルハウスの「2.5世帯」というシリーズです
ね。長いコピーを書かせていただいたんですけど、家の
問題をちゃんと考えてもらいたいと思って、あえて良い
ことも悪いことも書きました。

山崎
ボディコピー、よくできてますよね。

藤本
そうですね。しっかり書かれていて読み応えがあります。
この仕事はどういうきっかけで出会ったんですか?

吉岡
声をかけていただいたCDが僕のことを地味だけど書け
る奴と思ってくれてたみたいで、自主プレ的な競合だっ
たんですけど、声をかけていただきました。うれしかっ
たのはこの仕事で日経広告賞のグランプリをいただいた
んですけど、審査員の秋山晶さんが褒めてくれていたん
です。それでものすごく自信がつきました。それともう
ひとつがトヨタ・オーリスの仕事ですね。

山崎
オーリスのCMはワイドショーでもすごく話題になって
ましたよね。ワイドショーで取り上げるというのは、ヒッ
トした指標になるのですごいですよね。

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吉岡
じつはオーリスって夜の10時以降しかオンエアしてな
んです。テレビ局の考査も、パンツの面積が小さすぎた
らダメだとか、男とわからせるためには乳首を見せなきゃ
ダメだとか、いろいろと大変でした。

山崎
そんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、テレビ
局の考査についてはほんとに一度公開討論したいですね
(笑)。藤本さんは?

藤本
さっきもちょっと話しましたけど、ベルリッツという英
会話教室のポスターですね。ちゃんとしたビジネスマン
が英語をしゃべっているんですけど、じつはこんなふう
に聞こえてるかもしれませんよ、というシリーズ広告で
す。

山崎
これも良かったですよね。ものすごくど真ん中で、スピ
ードの速い表現で。

藤本
僕はほんとにネガティブな人間なので、「英語をしゃべ
れると海外で活躍できる」みたいな話をされても、「嘘
つけ!」って思っちゃうんですよね(笑)。どういう時
に英会話教室に通いたくなるかと考えると、自分だった
ら、「英語で失敗して外国の人に鼻で笑われた」という
ような時だなと。

山崎
「ほんとかよ」という目線が書かせたコピーなんですね。
これはどういうふうに思いついたんですか?

藤本
ベルリッツってちゃんとした英語を教えるところで、ビ
ジネス英語には自信があるんですね。最初にCDが「僕
たちがビジネスで使っている英語も、すごく変な英語か
もしれないよね」というようなことを話したんです。そ
れを聞いて、それをそのままコピーにしたら、英語で失
敗した人が見て、すごく恥ずかしくなる広告ができるん
じゃないかと思いました。電車でポスターを見るたびに
嫌なことを思い出してもらおうという狙いですね(笑)。
ただ、嫌な思いだけで終わってもいけないので、ちょっ
と笑えるものにしなければと思っていました。

クライアントさんからは何度もダメ出しをされました。
「間違い方が正しくないとダメです。こんな間違いはし
ません」って、正しい間違い方っていうのも変なんです
けど(笑)、人物を撮り終えたあとも何度も何度もコピー
を直しました。

山崎
そういうことがリアルさに結びついているのかもしれま
せんね。

藤本
そうですね。ダメ出しされたほうが良くなると思いまし
た。若い時だったら、「いや、こっちの方が絶対おもしろ
いです」って、説得を試みたと思います。でもベルリッ
ツさんの言っていることはもっともだし、それをクリア
して尚かつおもしろくすればいいんだと思って、何百本
もコピーを書きました。

そういうわけで、最近はクライアントさんから何か言わ
れると、一度「そうかもしれない」と考えるようになり
ました。それをクリアしてさらにおもしろくするという
ふうに考えています。

DSC_0799.jpg


山崎
またいい話が出ましたね。

僕の転機といえるのは、最高新人賞の時の京都競馬かなぁ。
ジミー大西さんに絵を描いてもらったんですけど、みん
ながまだジミーさんが絵を描くことを知らなかった頃な
ので、「ジミー大西・画」がキャッチフレーズになって
いる感じです。

それとタイカンというカラオケ会社のCMですね。僕が
最高新人賞を獲った年に絹谷公伸君という人が「大阪府
警! いい人が捕まらなかったら、どうしよう。」という
コピーで同時に最高新人賞を受賞したんですけど、その
翌年にまた大阪府警で、「ちかごろの犯人は頭がいい。
あなたの知力を試してみませんか。」というコピーでTCC
賞を獲ったんですね。僕は最高新人賞を獲って安心して
いたら、同期の絹谷君が翌年TCC賞を獲ってしまった。
これはヤバイなと、タイカンのCMをつくって、その翌
年TCC賞をいただくことができたんです。タイカンで
TCC賞を獲ってすぐに石井達矢さんの下に行けと言われ
たので、転機といえば転機ですね。

TCC賞をもらって、一人前になったつもりで石井さんの
下に行ったら、2年間で一案も自分の企画が通らなかっ
たんです。34歳からの2年間で自分の案がひとつも通ら
ないって地獄ですよ。人生であんなに寝ないでコンテを
書いたことはないというくらい、企画を考えましたけど、
企画を石井さんに見せると、「おまえ、考え過ぎや」と
言われる。で、次に考えないで浅い企画を出すと、「お
まえ、何も考えてないやろ」と言われる(笑)。その加
減というか、コツが当時はわからないんですね。その2
年間は不遇の時代に逆戻りでした。毎日暗い気持ちでし
たね。

でも、今思うとその2年は宝の時間でした。その間に自
分の中にあるダメなものを全部外に出し切って、それか
らはあまり理屈で考えないクセがついたので。


そして現在

吉岡
では、最後のテーマ、「現在」の話に行きたいと思いま
す。と言いながらすいません、僕は今つくっているもの
がまだ世に出ていないものばかりで・・・。今はヘーベ
ルハウスの新聞原稿をいっぱい書いています。藤本さん
はいかがですか?

藤本
僕は新人賞をいただいたあと、これでたくさん仕事が来
るだろうなと思ってたら、一年間新規の仕事がひとつも
来なかったんです。いちばんモチベーションが上がって
いる時だし、次に続くものをつくらなきゃという焦りも
あって、どうしようと思ってたら、ベルリッツと同じ
CDの伊藤公一さんにホンダの仕事に声をかけていただ
いたんですね。それが「負けるもんか。」の仕事なんで
すけど、そういう経緯もあって、「負けるもんか。」は、
僕のネガティブな要素が全開に出ています。

新人賞って応募しても獲れない時は獲れないし、「がん
ばっていればそのうち獲れるよ」なんて言われても、全
然信じられなかったけど、辞めずに続けてきたら、ちょっ
と褒めてもらったり、信頼できる人に会うことができた。
そういう自分のほんとうの気持ちがそのまま出たのがよ
かったのかもしれません。

山崎
藤本さんのネガティブなフィルターを通しているから、
ナレーションの内容が恥かしくなく、気持ちのよいポジ
ティブなメッセージになりますね。

DSC_0830.jpg


藤本
やっぱりCMってみんながきれいなことを言っているの
で、それだけだと引っかからないと思うんですよね。

吉岡
このCMは僕の会社でもめちゃくちゃ人気でした。最
初藤本さんが書かれていたことを知らずに、「あれを書
いたのは照井さんだろう」と話してました(笑)。

藤本
照井さんと間違えられて光栄です(笑)。

山崎
僕もいい年齢になって、いい話を素直に聞けるようにな
りましたが、それでもいい話ばかりを聞いていると疲れ
てきて、ちょっと悪い人を出したくなってくる。それで
ギャツビーでは悪いことばかりを言う、「オサレ星人」
というのを出してます。

藤本
僕は「オサレ星人」、大好きです。みんなが思っている
ことを毒を入れつつ、でもちゃんとおもしろく表現して
いる。僕はそういうのが好きなんです。

吉岡
「オサレ星人」はどういうオリエンだったんですか?

山崎
ヘアスタイルをきっちりつくれるワックスであることを、
いろんなヘアスタイルを見せつつ、印象的に伝えて欲し
い。たしかそういうオリエンだったと記憶しています。
でも、若い子たちはヘアワックスの使い方なんかわかっ
るしカタログ的なことをする必要はないと思って、ああ
いう表現にしました。

藤本
クライアントさんはすんなりと受け入れてくれるんです
か?

山崎
マンダムさんはもう20年くらいやらせていただいてい
て、ほんとうにいつも我慢していただいてます(笑)。

吉岡
クライアントさんのほうにも「山崎さんだから」ってい
うところもあるんですよね?


山崎
いや、そんなことはないと思います。この前もある役員
の方に久しぶりにお会いしたら、「下ネタだけはやめて
くれよ」って釘を刺されましたから(笑)。

吉岡
というわけで、そろそろ終わりの時間になります。最後
に質問のある方いらっしゃいますか?


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質問1
CMはいろいろな表現手法があると思うのですが、その
中でも、「言葉じゃなくちゃダメなんだ」というような、
言葉に対するこだわりはありますか?

山崎
広告ってやっぱりメッセージなんです。そのメッセージ
を伝える手段として、「言葉は最強」という前提はある
と思います。

CMに使える秒数って15秒CMだと10秒ちょっとく
らいしかないんですね。その秒数の中で、理屈で説得で
きるとは思ってないので、僕の場合、まず理屈を排除し
てしまいます。言いたいことを15文字以内くらいのメッ
セージにして、そのメッセージをどうやって言えばユニ
ークに伝わるかを考える。商品名を訴求したい場合は商
品名を言いますし、そうじゃない場合はみんなが思って
はいるけど言語化されていない、共感という感情に訴え
たり、もする。

うちの子どももそうですけど、みんなほんとうにCMを
見ませんよね。LINEをやりながらツイッターをやった
りして、興味あるものが流れた時だけCMを見るという
感じ。そういった身勝手な視聴者をいかに捕まえて、い
かに惹きつけるか。そこはわりと考えるようにしていま
す。それと言葉は上から言わずに、かなり低い目線で言
うようにしています。やっぱりこれだけ情報が氾濫して
いるので、メッセージを覚えてもらうには、理屈をなる
べく排除して、できるだけ平たい言葉にするほうがいい
んじゃないかと思いますね。

藤本
僕の場合はまだ成功体験が少ないので試行錯誤しながら
どういう言葉が強いのかを考えている感じですが、キレ
イな言葉よりも異物感のある言葉のほうが、残るんじゃ
ないかと最近思っています。ベルリッツでもあのコピー
は、日本語として破綻していてますよね。でもそのくら
いのほうが「何なのこれ?」って引っかかる。「負ける
もんか。」というキャッチフレーズも元々は本田宗一郎
さんの言葉なんですけど、今の時代にこんなことを言っ
たら若い人たちには距離感があるんじゃないかと思った
んですけど、その違和感や気持ち悪さが、じつは言葉の
パワーだったりする。そういう異物感、違和感を殺さず
に大事にするようにしています。

吉岡
僕は全然発展途上ですが、これだけは守っているという
ものがあって、それは佐々木宏さんもどこかでおっしゃっ
ていましたが、「これを言ったら誰かが傷つくだろう」と
いうことは書かない。それだけは気にしながらコピーを
書いています。


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質問2
吉岡さんが「量だけは書いてきた」とおっしゃっていま
したが、案をたくさん出せるようになるために、みなさ
んはどういうことをされてきましたか?

吉岡
藤本さんは「コピー1000本」の話がありますよね。

藤本
「コピーを1000本書け」って言われたことがあるんで
す。1000本なんて書けるわけないと思ったんですけど、
なにしろ恐い先輩から言われたので。コピー用紙の束っ
てひとつが500枚なんですけど、1000本数えるのが面
倒なので、コピー用紙を2セット用意して、書き損じた
ら紙を足して、必死に1000本書きました。とにかく怒
られたくなかったんですよね。コピーがうまくなりたい
という気持ちより、怒られたくないという気持ちでいっ
ぱいでした。だから若い頃はどうやって頭を広げるかな
んてことより、自分の置かれた状況の中で必死にやって
いただけですね。それを日常的に繰り返していると、自
力になるというか、やらざるを得ない状況に自分を追い
込むことが良かったのかもしれません。


質問3
クリエーティブの質を一定に保つために、思考のパター
ンというようなものをお持ちでしたら、教えていただけ
ますか?

山崎
まず大きく言うと、広告って、「何を言うか」と、「どう
伝えるか」のふたつだと思います。「何を言うか」を決
めたら、その伝え方を一次発想で広げていく、というこ
とを僕はよくやります。たとえばホットペッパーの場合、
「レッドホットチリペッパーズは使えないかな」みたい
な、みんなが思いつくような発想でまず広げるんです。
あるいは「タヌキが9匹でクーポン」とか。今会場がシ
ラっとしましたね(笑)。でもそれを思いついた時は、
「企画の神がついに降りた」と思ったんですけどね。と
にかくそんな感じで、一次発想を広げてそこで取っ掛か
りを探す。ただそこで終わってしまうと、よくあるもの
になっちゃうので、言ってみれば、それはアイデアを出
すための助走のようなものです。そこで頭の中が温まっ
てきたら、そこからは雑誌でも映画でもYouTubeでも
なんでもいいんですけど、最近自分がおもしろいと思っ
たものをうまく使えないかと考えたりします。

商品のことを一回忘れるといいのかもしれませんね。商
品から考えることって、ただの考察なんですね。発想と
いうのは考察とはまた違って、商品とは関係のない、まっ
たく異質なものを取り入れることだったりします。日常
生活の中で「これ、おもしろいな」とか「今、目を奪わ
れたな」とかそういうことをつねに意識していると反射
的にアイデアが生まれるようになる気がします。

ロジカルに考えるプランナーもたくさんいると思うし、
僕も最初はそうやっていました。でも、理にはかなって
いるけど、おもしろくなかったんですね。それで、下手
でもいいからメッセージさえ伝わればいいんだと割り切
るようにしました。メッセージさえ伝われば、あとの表
現は自由になりますよね。最近おもしろかったものはな
いか、過去におもしろいと思ったものはなかったか、そ
んなことをしょっちゅう考えています。

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吉岡
アフレコの企画はどうして思いついたんですか?

山崎
プレゼン前で企画もできてなかったんですけど、人間ドッ
グに行くように会社から言われていたんです。バリウム
飲む前に病院のテレビをぼーっと見ていたら、洋画が無
音で流れていて、何か痴話ゲンカみたいなことをしてる。
その時「ふざけんなよ、おまえ。俺の財布から金を盗ん
だだろ」とか、「すごいやん」とか、適当に声を当てて
みたらおもしろかったんです。でも、その時すぐにホッ
トペッパーの企画に使えるって思いつきませんでしたね。
名前呼ばれてバリウム飲まされて、機械の上でグルグル
回されている間にやっと、「あ、さっきのアフレコ、ホッ
トペッパーに使えるな」って思った(笑)。

映像と音声とのズレがおもしろさのポイントだから、ア
フレコの場合、最初から商品のことを言えるし、言えば
言うほどおもしろくなる。そういう考え方はあとから説
明できるけど、アイデアが生まれる瞬間ってそんなにき
れいな形をしてないんです。ただ「あ、おもしろいな」
と思ったことがきっかけになっている。

そう考えるとアイデアの取っ掛かりをふだんは見落とし
ているんですね。プレゼンの間際になって、「おもしろ
いものはないか」と目を血走らせて、やっと気づく。だ
からものすごくしんどいですよ。

やっぱり自分たちが良くないと思うものを、良いと思っ
ているフリをしてプレゼンするのはよくないと思うんで
すね。最低限自分たちがやったと胸を張って言えるもの
をプレゼンしようと思っています。ワトソン・クリック
の一年目にTCC年鑑に広告を出したんですけど、その
時のコピーが「好きな言葉、『プレゼン延びました。』
正直な会社です。ワトソン・クリック」でしたね(笑)。

<おわり>