東京コピーライターズクラブ
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《対談》トークイベント 「TCCことばみらい会議」 第一夜・第2部
2017.1.4
対談
「TCCことばみらい会議」第一夜・第2部は、今年度のTCC賞審査委員長の福里真一さんと今年度のTCC新人賞を受賞したお笑いトリオ「グランジ」の五明拓弥さんとその相方の遠山大輔さんによる対談です。広告とコントのつくり方の違いなど、今までに語られたことのないテーマについて話していただきました。
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第一夜
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第2部
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おもしろいことば
― コピーライター × お笑い芸人 ―
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日時
2016年9月23日(金) 18:30~20:40
登壇者
福里真一 氏(ワンスカイ CMプランナー/コピーライター)
※2016年度TCC賞 審査委員長
グランジ 五明拓弥 氏 & 遠山大輔 氏
(よしもとクリエイティブ・エージェンシー 芸人)
進行
岩田純平 氏(電通)
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岩田 本日のファシリテーターの岩田です。よろしくお願いします。あらためてご紹介します。今年のTCC賞の審査委員長を務められました、CMプランナーの福里真一さんとグランジの五明拓弥さんと遠山大輔さんです。よろしくお願いします。
五明 よろしくお願いします。
遠山 なんか僕らがお笑い芸人代表みたいになってますけど、それが心苦しいんですよ。芸人を代表して「おもしろいことば」について語るといったら、ふつう千原ジュニアさんとかバカリズムさんになるじゃないですか。会場のみなさんも僕らのこと絶対に知らないと思うし。大丈夫ですか、我々で。
岩田 やっぱり芸人さんってよくしゃべられるんですね(笑)。すごいな。でも、大丈夫ですよ。コピーライター界では今いちばん人気のある芸人さんだと思いますよ。会場では知名度100%です。
五明 すいません、今日は温かい目で見守ってください。
<サントリーBOSSのことば>
岩田 では、福里さんの紹介から始めたいと思います。福里真一さんは2016年度のTCC賞をサントリーBOSSの宇宙人ジョーンズシリーズで受賞されました。その代表作である「北海道新幹線篇」をご覧ください。
サントリー/宇宙人ジョーンズ「北海道新幹線」
岩田 お馴染みの宇宙人ジョーンズのシリーズですね。
福里 もう11年も続いているシリーズなんですが、グランジのおふたりはBOSSのTVCMは知ってます?
遠山 もちろん、存じ上げています。
福里 どういう感想をお持ちですか?つくった本人を目の前にして言いにくいでしょうけど。
遠山 いや、非常にクリエイティブないい作品だと。
福里 答えがおもしろくないですね(笑)。
遠山 すいません。でも僕、出身が北海道なんです。だから北海道新幹線が開通したのってやっぱりうれしいんですよ。ニュースや新聞だけでなく、CMでも取り上げられて。雪まみれの通学路を思い出したりもしたので、素敵なCMだなぁと。
福里 なるほど。
遠山 やっぱりそういうことじゃない感じですか?
福里 いやいや(笑)、うれしいコメントですよ。宇宙人ジョーンズというのはおっしゃるようにその時々の時事ネタを取り上げてきたシリーズなんですね。なるべく、今の日本を感じられるようなネタを取り上げてきた。シリーズが続くとそういうことがしやすくなるんです。で、「北海道新幹線の開通」を遠山さんのようによろこぶ人もいれば、CMの中の石川さゆりさんのように、連絡船の方が好きだったという人もいる。そんなリアルな反応を描くことを通じて、今の日本を描くのが狙いでした。
福里真一さん(ワンスカイ CMプランナー/コピーライター)
五明 でも、トミー・リー・ジョーンズだけじゃなく、北島三郎さん、石川さゆりさんも出ていて、ギャラがすごいんじゃないですか?
遠山 そういうこと聞くなよ。福里さんも困るだろ。
五明 ぶっちゃけ、サブちゃんはいくらもらってます?
遠山 やめろ(笑)。
福里 正直知らないんですよね(笑)。
遠山 このシリーズって、もともとTVCMから始まってるんですね。僕、僭越ながらACCのラジオCM部門の審査員を3年続けてやらせてもらっていて。
五明 なんでおまえがやってんだよ。
遠山 それは澤本さんに聞いてくれ。とにかくラジオ部門の審査員をやらせてもらってるんですけど、BOSSのCMを審査会で聴いたことがあるんです。ラジオCMも宇宙人ジョーンズが出ていますよね。
福里 広告って、テレビもラジオもポスターも同じフレームで展開したほうが効率がいいので、ラジオCMも「宇宙人ジョーンズ」でつくっているんです。といってもラジオCMは僕が企画しているわけではないんですけどね。そうやって面で見せていくことで、「BOSSといえば宇宙人でやってるやつ」という印象がすりこまれることが、広告が力を発揮する上でいちばん大切なことだと思います。
<東京ガスのことば>
岩田 では次におふたりの作品の話を伺いましょうか。まずは五明さんのほうから。今年のTCC新人賞を受賞された、東京ガスのラジオCMを聴いていただきます。
東京ガス「母からのテレパシー」40秒
SE : オフィス
息子 : 仕事を淡々とこなす毎日。
テレパシーとかそういう類の事は信じないけど、
いつも気持ちが落ちている時に限って、
田舎の母さんからメールが届く。
SE : メールバイブ着信音
M : ♪〜
母の声 : 「ちやんと、栄養あるごはん食べてまか?
最近さむくなてきたから、お風呂につかつて、
からだあつためてくさい。
近いうちにかえて・・・(F.O.)」
息子 : 誤字脱字だらけのメールだけど、
僕の携帯に入ってるどのメールよりもあたたかい。
今日は母さんのいうとおり、お風呂つかつて、
からだあつためよう。
NA : 頑張る人に、いいエネルギーを。東京ガス
息子 : (お風呂の中)あつたかーい。
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福里 岩田さん、審査員としてどうですか?
岩田 僕、1票入れましたよ。ラジオCMで新人賞を取ると全部自分の手柄になるからいいですよね。自分で考えた言葉だけの勝負ですから。
福里 ジャンルとしては共感CMですよね。こういうことあるなっていう。
五明 そうですね。
福里 お母さんのメールが誤字脱字だらけというのはわりと思いつくかもしれませんが、間違い加減が絶妙なことと、息子がお母さんの間違いをなぞったり、最後のセリフでもダメ押ししたりしてて、技がきめ細かいと思いました。次々とダメ押ししていく感じがうまいですよね。
五明 ありがとうございます。
岩田 これはどうやって思いついたんですか?
五明 記憶にございません(笑)。
遠山 あるだろ!言えよ(笑)。
岩田 最初にオリエンがあったわけですよね?
五明 そうです。オリエンに参加させていただいたのが最初で、東京ガスさんから、「お風呂」と「クリスマス」と「料理」、3つのテーマのどれかで考えてくださいと言われまして。で、お風呂で考えてみようかなと。
グランジ 五明拓弥さん(よしもとクリエイティブ・エージェンシー 芸人)
福里 これは実体験なんですか?
五明 実体験ではないんですけど、おやじから誤字脱字だらけのメールが来るという話を相方から聞いたことがあったので、それをネタにしたらおもしろいかもなと。その話とお風呂を強引に結びつけました。
岩田 では、きっかけは遠山さんなんですね。
福里 それでいうと、そもそも五明さんがラジオCMをつくることになったきっかけが遠山さんなんですよね。遠山さんがACCの審査員として澤本さんと知り合いになったという経緯があって。
遠山 そうです。2年前の話ですね。
福里 それまではラジオCMをちょっとバカにしてたんですよね?俺だったらもっとおもしろくつくれるって。
遠山 してませんよ!
五明 おまえマジかよ。
遠山 いやいや、ちゃんと説明すると、ACCの審査会でラジオCMを聴きながら、「ここは食い気味でしゃべったらもっとおもしろくなるんじゃないか」みたいなメモをなんとなく書いていたんです。それって、僕ら芸人が漫才やコントをやりながらいつも感じていることなんですけど。で、お昼ごはんを澤本さんと食べているときに「どうだった?」と聞かれて、思ったことを話したら、「じゃ、ちょっとやってみる?」と。半信半疑だったんですけど、澤本さんの豪腕でトントン拍子に話が進んで、オリエンに参加することになったんです。五明もふだんネタを書いているので、せっかくだからと誘ってみました。
グランジ 遠山大輔さん(よしもとクリエイティブ・エージェンシー 芸人)
福里 ということでおふたりがCM界に乱入してきたんですね。
岩田 でも、どうして遠山さんがACCの審査員をやることになったんですか?
遠山 僕、6年前から東京FMで「SCHOOL OF LOCK」という10代向けの番組をやらせていただいているんですけど、ラジオCM部門の審査委員長である澤本さんが、CMの制作者だけでなく、しゃべり手の意見も聞きたいということで、吉本を通じて僕に声がかかったんです。
福里 で、その審査会で「どれもつまんねえな」と思ったわけですね(笑)。
遠山 だから、思ってないですって(笑)。
福里 でも、実際に自分でラジオCMを書いてみて印象は変わりましたか?
遠山 変わりましたね。誰かがつくったものをあーだこーだ言うのと、実際に土俵に立つというのはやっぱり違いますよね。
岩田 では、ここで遠山さんのラジオCMを聴いてみましょうか。
東京ガス「暗証番号」60秒
息子 : あ、父さん、なに?
父 : いや、明日だろう、東京行くの。
息子 : うん。
父 : うん。
息子 : あ、あのちょっと今、荷造りしなきゃだからさ。
父 : うん。おい、これ。
息子 : うん? 何これ?
父 : キャッシュカード。
息子 : え?
父 : いやあ、おまえ上京したときのために、コツコツためといたから。
息子 : え?
父 : 家具とかまあ、何でも好きなもん買え。
いや、父さんらしいことあんまできなかったからさ、今までさ。
息子 : と・・・父さん(泣)。
父 : なんだよおまえ、だらしねえなあ。
よし、じゃあもう最後だし、一緒に風呂でも入るか。
息子 : なんでだよ、恥ずかしい。
父 : (笑)。このカード、暗証番号は0637な。
息子 : 0637。
父 : 「おろすな」で覚えとけ。
息子 : 使いづらいな。
父 : うそうそ。1126な。
息子 : 1126?
父 : そう。1126。
息子 : あ、いい風呂。
父 : 東京ガス。
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(会場笑い)
五明 ウケたじゃん。
遠山 4人くらい笑ってくれた。
岩田 福里さん、いかがですか。
福里 遠山さんのはよくできたラジオCMを壊そうという意志がありますね。
五明 え、それは遠山のほうがおもしろいってことですか?
遠山 ちっちゃいよ、おまえは(笑)。
福里 商品への落とし込みがふつうのコピーライターが書くよりもかなり強引で、そこが新鮮だしおもしろいんですけど、これは意識してやったんですか?
遠山 はい。
五明 ほんとかよ!
遠山 いや、ほんとです。さすがです。
五明 さすが審査委員長。
遠山 ただ、賞はいただけなかったんですけどね。
福里 そうなんです。五明さんは新人賞を受賞なさったんですけど、遠山さんは1次審査通過止まりだったんです。新人賞って20人くらい獲るから意外と簡単と思われるかもしれませんが、受賞するのはほんとに難しいんですよ。1次通過するのだって大変です。毎年400~500人の応募者がいますから。芸人さんがいきなり新人賞を取るというのは広告業界的にも事件だし、おふたりはむしろエリートだと思いますよ。
五明 ありがとうございます。
遠山 今後は肩書に「エリート」って書いていいですか?
福里 たぶん誰にも意味は伝わらないと思いますけど(笑)。
遠山 じゃあやめときます(笑)。
岩田 でも名刺に「コピーライター」って入れてもいいんじゃないですか。
遠山 名刺はつくったよな。
五明 はい、つくりました。
遠山 芸人はふつう名刺持たないですけどね。
五明 何かの役に立つんじゃないかと思ったんですけど、まだ何にも役立ってないです(笑)。
<広告のことば>
岩田 この話の流れで今日の本題に入りますけど、コントを考えるのとラジオCMを考えるのは違うものなんですか?それとも同じ?
五明 僕はまったくいっしょでした。コントでボツにしたネタとかがけっこう使えたりして。
福里 広告はコントと違って商品に落とし込まないといけないじゃないですか。商品が出ないほうがおもしろいのにとは思いませんでしたか?
五明 こんなこと言うと怒られるかもしれないんですけど、広告って最後にひとこと言いますよね。あれがあればどうにかなっちゃうじゃないですか。
岩田 今回の東京ガスでいえば「頑張る人に、いいエネルギーを。東京ガス」みたいなことですよね。
五明 そうです、そうです。
福里 BOSSのCMも最後に缶コーヒーを飲めば成立しちゃうっていうところはありますけどね(笑)。むしろ、広告は商品がある分、ネタを考えやすいってこともありますか?
五明 コントって設定が命なので、どういう設定にするかを考えるのがすごく大変なんです。でも今回は東京ガスさんから「お風呂」「クリスマス」「料理」というテーマを与えられていたので、そこはやりやすかったですね。
福里 なるほど、やっぱりそうなんですね。僕ら広告制作者からすると、コントって設定が自由なだけに、どの設定だとおもしろくなるかの判断が難しいんじゃないかと思うんです。その点広告は商品に落とし込むという基準があるので、そこから逆算ができるから、考えやすいと思うんですよ。
五明 コントの設定ってほぼやり尽くされているんですね。「学校」なんて死ぬほどやられてる。そこで今までといかに違うもの、おもしろいものができるかどうかが僕らの判断基準かもしれないですね。どう思う?
遠山 みんなでネタを考えて、いいところまでいったなと思っても、誰かから「ちょっと待て、どっかでこれ見たな」という意見が出たら、もう人前には出せないからね。
福里 大変ですね。
遠山 福里さんだって同じじゃないですか。
福里 いやいや、ぶっちゃけて言うと、広告っておもしろい必要はないんですよ。商品名が残るとか、広告として機能するかという尺度がまずあるので。だから「おもしろくはないけど、広告としての目的は達成している」という言い方もできちゃうわけです。それに比べると、コントっておもしろいことが目的だから、おもしろくないと言われたらもう終わりですよね。
遠山 そうですね、たしかに。
五明 福里さんはコントをつくったことはあるんですか?
福里 一回もないですね。
五明 僕らのためにコントを書いてくださいよ。
福里 それはまず澤本さんがやるべきだと思います(笑)。
遠山 じゃあ、澤本さんには漫才を書いてもらって、福里さんにはコントを書いてもらいます。で、キングオブコントを狙う(笑)。
福里 いやいや、おふたりに広告を振ったのは澤本さんなんですから、僕は関係ない。
五明 今回、ワンスカイさんから僕と遠山に福里さんの作品集を送ってもらったんですけど、全部知っているCMでした。
福里 ほんとですか。
五明 ほんとです。全部知ってて、しかも無茶苦茶おもしろいんですよ。通販生活のマシンガンのCMとか。
福里 あれがじつは僕の新人賞受賞作なんです。1997年だから、はるか昔の話ですけど。
遠山 そのときおいくつだったんですか?
福里 28歳ですね。
五明 すごい、今の俺らの7個下だ。やっぱり福里さんはコントつくれるはずですよ。
福里 一応知らない方のために説明すると、今のは「通販生活」という雑誌のCMの話で、おばさんがマシンガンを乱射しながら「もういやだ、こんな生活」と叫ぶと、機動隊が「じゃあ、どんな生活がいいんだ」と応える。それで「通販生活」というナレーションに落ちるというCMです。これ以外にも愛人の男性とホテルにいる女性や、姑との関係がうまくいっていない嫁が登場するバージョンもあるんですけど、どれも「もういやだ、こんな生活」「じゃあ、どんな生活がいいんだ」「通販生活」というパターンなんですね。それでわかると思うんですけど、商品名から発想した企画なんです。最初に「通販生活」という名前がおもしろいなと思って、そこに落とし込むにはどういう設定がいいかを考えて、セリフを書いている。だからマシンガンを乱射するおばさんがおもしろいというところから入ってるわけじゃないんですね。そういう意味で僕はネタ発想ではなく商品発想なので、コントは向いてないと思います。
五明 「じゃあ、どんな生活がいいんだ」というセリフを思いついたときは「やったー」という感じでした?
福里 まあそうですけど、広告の場合はそれが広告主に通るという保証はないので、いちいち「やったー!」とよろこんでいるわけではないですね。「ひとつ思いついたから、別のを考えよう」みたいな感じですね。とにかく広告って、考えたものに対して世に出るものはほんの少しなので、思いついていちいちよろこんでる場合じゃないんです。
遠山 思いつくために何かされていることってあるんですか?
福里 特にないんですけど、毎日きちんと企画する時間だけは確保するようにしています。
遠山 企画するときはおひとりでやってるんですか?
福里 ひとりです。基本的に午前10時から12時までを企画する時間にしていて、その2時間は白い紙に向かうようにしています。おふたりはどうですか?
遠山 僕は歩きながら考えるタイプです。
福里 そういう方いますよね。
遠山 音楽を聴きながらとにかく歩いて、何か思いついたたら携帯を取り出してバーっと書いて。それを家に帰ったあととか、次の日に冷静になって見返す感じです。今回は東京ガスさんに10本くらい提案したんですけど、20秒くらいでぱっとできたのもあれば、1週間かかったのもあって。
福里 それは1週間その企画だけを考えているってことですか?
遠山 3日考えてもうまくいかなかったら、気分転換に別のことを考えるみたいな。行ったり来たりしながら考えています。
五明 僕は今35歳なんですけど、33歳まで実家暮らしだったんです。だからひとり暮らしがすごくうれしいんですよね。Wi-Fiも付けたんですよ。ということで、ずっと家で考えてました。
遠山 ひとり暮らしの話、いる?
五明 ソファも新しいのを買ったんです。
遠山 もういいよ!その話は。
(会場笑い)
福里 おもしろいことを言う前に一瞬目が鋭くなるのがすごいですね(笑)。さすがプロ。
<コントのことば>
岩田 ここで会場のみなさんにグランジさんのコントを見ていただこうと思うんですけど、じつはグランジって3人組なんですよね。
五明 そうです。
遠山 もうひとりは椿鬼奴さんの旦那の大(だい)です。ヒモでクズでおなじみの(笑)。
岩田 では、「僧コン*」というコントを見ていただきます。
*僧コン 「お堅い僧侶がもし合コンに参加したら・・・」という設定のグランジの人気コント。五明さんと遠山さんが僧侶に、大さんが女子に扮する。 (会場拍手)
五明 今日いちばんの拍手ですね(笑)。
遠山 お恥ずかしい。でもうれしいですね。
五明 このコントが入ったグランジのDVD『BEST NETA LIVE』絶賛発売中です。今、ブックオフで100円で売ってますので、お買い求めください(笑)。
福里 このコントの場合、発想の入口はやっぱり「お坊さんの合コン」というところなんですか?
五明 そうですね。あるとき僕がビッグスクーターに乗ったお坊さんを見かけたんです。「あの人絶対コンパ行ってるだろうな」と思って。で、お坊さんのコンパってどんな感じかなというのを考えて。
福里 設定を決めたらあとはどうするんですか。台本をつくるんですか。それとも実際に演りながらつくっていく感じ?
遠山 このときはたしか五明が持ってきた設定に「ここを変えよう」とか、「ボケを足そう」とか、みんなで考えてつくったと思います。
五明 最初にお坊さんのコンパで起こりそうなことを箇条書きにしましたね。
遠山 あとは劇場で実際に演ってみて、お客さんの反応を見て変えていったりもします。
福里 なるほど。CMがコントと違うのは演りながら直すっていうのができないところですね。東京ガスのラジオの現場はどんな感じだったんですか。演出もご自分でやられたんですよね。
遠山 そうです。
五明 今回出演してくれたのはみんな吉本の後輩なんです。10年くらい付き合いがあるので、こっちの意図を全部汲んでくれるんですよ。うまくいったのはそこが大きかったと思います。
遠山 それは澤本さんのアドバイスでもあるんです。気心の知れた、1言えば10理解してくれる人といっしょにやったほうがいいですよと言っていただいて。
五明 僕、ラジオCMをつくるのにはまっちゃって、東京ガスのラジオをつくったあとに地方のラジオCM大賞みたいのに応募したんです。そしたら運良く受賞して、実際にオンエアされることになったのはいいんですけど、できたものが僕のイメージとは全然違っていて。だから東京ガスさんのときは自分が現場に関われたというのがすごくありがたかったです。
福里 おふたりのラジオCMって他のラジオCMに比べてテンションがちょっと低めですよね。ラジオCMってわりと盛るというか、役者の演じ方も、音楽の盛り上げ方も、ちょっとやりすぎていることが多い。おふたりのラジオCMにはそれがないなと思いました。
遠山 そうですね。ACCの審査会でラジオCMを聴いていると、大袈裟というか「そんな感じないだろー」って思うことが多くて。なので、今回は出演者たちに日常の感じでやってほしいということを伝えました。
福里 それは先ほど言ったように、広告がお客さんのいないところでつくられているからかもしれませんね。だから大袈裟にしないと伝わらないんじゃないかとつい思ってしまう。でも、おふたりのような、現場の反応を知る人たちが広告をつくることで、リアルにやったほうがおもしろくなることにみんなが気づくかもしれませんね。
遠山 子役の子でも、いかにも子役っぽくしゃべる子じゃなくて、そこら辺の公園でさっきまで遊んでいた子を連れてきてしゃべらせたほうがいいんじゃないかと思うんです。もしこの先も広告がつくれるのであれば、そういうものをつくっていきたいと思ってます。
<おもしろいことば>
岩田 そろそろ終了の時間が近づいてきました。ここら辺で今日の結論を出したいと思うのですが。
遠山 僕ら、どこに向かってたんでしたっけ?
福里 「おもしろいことば」です。
岩田 「おもしろいことば」にたどりつくには、ふだんからどういうことを考えていればいいか、みたいなことをみんなで共有できれば、と思うんですけど。
五明 福里さんはふだんから「おもしろいことば」をストックしているんですか?
福里 まったくないですね。
五明 芸人って大喜利のライブに呼ばれることがあるんですけど、急に「こんな学校はいやだ」みたいなお題が出ても何も思いつかないことがあるんですよ。そういうときのために僕はおもしろい言葉というか、バカみたいな言葉をストックしています。
福里 大変な職業ですね・・・。
五明 他人事みたいに言わないでください(笑)。
遠山 50メートルくらい離れたところから言われた気がします(笑)。
福里 いやいや、でも、広告ってただでさえ世の中から「この言葉を流行らせようとしてるんだろ」みたいに見られがちなので、最初からウケを狙った言葉は鼻につくのかもしれないですね。だから、ストックしておくというのがなかなか難しいのかもしれないです。もう少し自然に出てきた言葉のほうが広がりやすいというか。
遠山 ラジオCMをつくらせてもらったあと、過去の名作コピー集みたいな本を読んでみたんです。糸井重里さんのコピーとかも、まったく知らない言葉を使っているわけではなく、誰もが知っている言葉を組み合わせている。ふつうの言葉を使って今までまったくなかった組み合わせを見つけると斬新なコピーになるのかなとぼんやりと思っていたら、サカナクションのニューシングルが『多分、風』っていうタイトルだったんですよ。すごく素敵な言葉だなと思って。
五明 病気の話じゃなくてね。
遠山 リズムに乗って咳き込む歌じゃねえよ。ウィンドのほうの風だよ(笑)。
福里 「多分」と「風」という言葉の組み合わせに反応したんですね。
遠山 はい。そういう言葉を生み出すことができたらいいなと思いました。
福里 今回はコントでの言葉のつくり方を広告に還元してもらったわけですから、次はその逆をやってみるのもおもしろいかもしれないですね。広告のキャッチフレーズみたいな言葉をひとつ決めて、どんなコントでも必ずそれを言うみたいな。
遠山 なるほど。いいっすね。
福里 提案しておきながら、どんなフレーズがいいのか、まったく思いつきませんが(笑)。
遠山 じゃあもう、ふたりで吉本来ませんか?
岩田 え、僕らが?
遠山 いやですか?
岩田 いや、じゃあ、ぜひ。
福里 岩田さん、なんでも受け入れますね(笑)。
五明 すごい前向きですよね。
岩田 では最後に会場のみなさんにお伝えしたいこととかあります?
福里 僕からは今年の受賞作を一冊にまとめた『コピー年鑑』を買ってください、という宣伝をさせていただきます。今の時代の広告がまとまってますので、今の時代をとらえるヒントになると思いますし、もちろんコピーを考えるときのヒントになると思います。ただ2万円するんですけどね。
岩田 福里さんは編集長も務めています。
福里 五明さんの作品も掲載されているので、ぜひ手に取ってみてください。
岩田 グランジさんも何か告知しておきたいことがあったら。
遠山 先ほども話したように僕は東京FMで月曜日から金曜日まで「SCHOOL OF LOCK」という番組をやっているので、ぜひ聴いてみてください。サカナクションとか、SEKAI NO OWARIとか、Perfume、広瀬すずちゃんもレギュラーとして出ているので。よろしくお願いします。
五明 僕はbayfmという千葉のラジオ局で「ON8+1(おんぱち・ぷらす・わん)。という番組をやっています。生放送なんですけど、まさかの相方と時間帯がかぶってるという(笑)。
遠山 24分、どんカブりです。
岩田 さすが芸人さんは告知がお手のものという感じですね(笑)。
五明 あと、これからもラジオCMをやっていきたいのでご縁があったらよろしくお願いします。
福里 今日は広告会社の方もたくさんいらっしゃるでしょうから、ほんとうにおふたりにお願いしてみたらいかがですか。
遠山 じつは今日会場に来てる人のリストを持ってるんです。企業の方もたくさんいらしてるんですよね。
五明 あとで名刺交換しよう。
遠山 いやらしいな。ほんと抜け目ないわ(笑)。
岩田 ではこの辺で終了とさせていただきます。みなさん本日はありがとうございました。
五明 どうもありがとうございます。
遠山 お招きいただき、ありがとうございました。