リレーコラムについて

1. イメージを仕事にする。

原田朋

「原田のコピーには、イメージがぶらさがってない」

と大先輩のMさんが言った。コピーライターになって10年目のころである。
年を重ねるにつれ、この言葉の意味が深く分かるようになってきた。

コピーというのは圧縮ファイルのようなものであり、
文字列が、受け取った人の脳内でそれが解凍されて、
イメージがぶわわわわっと広がるんだなと。

受け取る人の脳内にある大量のイメージを火薬として爆発する、とも言える。
簡単に言うと、想像力をかきたてる、ってことなんだけど。

僕らは、
言葉の仕事をしているようで、
イメージの仕事をしている。

人は、言葉で動くというよりも、
言葉が喚起するイメージで動く。
というのが、僕の実感に近い。

幸せなイメージ。
おそろしいイメージ。
おいしいイメージ。
エロティックなイメージ。

心を揺さぶるイメージを、数文字でとどける。
脳みそを直撃するイメージを、いつでも思い出せる、持ち歩ける形にする。

広告代理店のコピーライターって、
ロジックを通すという大事な仕事がある。
表現と戦略をつなぐロジックをコピーとして書かなければ。
そんな頭でっかちの自分は、
イメージを持たない、
やせた言葉しか書けないでいたんだなあと。

コピーライターになってから20年がすぎ、
広告だけでなく、商品や事業やブランドを開発する仕事がふえてきたけれども、
やっぱり自分のコアになっているのはコピーの力だと思う。

むしろ、広告以外のフィールドに出ると、コピーの力は無敵だ。
だって、コピーで勝負するライバルがまだいないんだもん。

この春から、広告よりも、新規事業開発の仕事を本業にしているが、
やっぱり頼れるコピーの力について、考え直してみた。

その言葉に、イメージはぶらさがっているか。

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原田朋です。博報堂、TBWAHAKUHODO、CHIATDAYを経て、
新規事業創造を手がけるQUANTUMという会社にいます。
www.quantum.ne.jp

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