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イントネーション心理学

2017.05.17


高校時代、私は少々道を逸れた。

勉強に部活に真面目な女子校の雰囲気に嫌気がさし、
学校にあまり行かずプラプラしていたのである。

定期券内だった渋谷をうろついて、
いわゆるギャルと呼ばれる女子たちと仲良くなった。
今となってはそれもいい思い出なのだが、
未だに少し困っていることがある。

彼氏、である。

といっても問題は
彼氏そのものではなく、その発音。
当時の癖が抜けず、カレシ(→→↑)と
尻上がりのイントネーションで言ってしまうのだ。

チョベリバとか、アゲアゲ〜などとは
決して言わない。(当時も別に言っていなかったけど)
ただ、この発音だけは直らない。
直したい。でも、どうしても直らないのだ。

この発音は、言語学では「平板式」というそうなのだが、
実は裏側にきちんとしたインサイトがある。

それは、「慣れ」のアピール。

つまり、カレシ(→→↑)と
上がり下がりの少ない平坦な発音をすることで、
彼氏ごときでテンションあがってないわよ、
彼氏がいるなんて当たり前でしょ。
と言外に牽制しているのだ。

クラブも、ドラマも、ショップもそう。

ラインも、ビームスも。
私は慣れてますけど?という
マウンティングの気持ちが隠れている。
(そう考えると、外来語に特に多いのも頷ける。)

すなわち、私の発音を直すには、
その心の奥底にある自慢気な気持ちを
まず無くさなくてはならないのだ。道のりは長そうだ。

私たちのつくる言葉の多くは、紙の上だけでは終わらない。
トーン、リズム、アクセント。
音にするだけで、伝わる内容は100倍増える。
はじめてCMナレーションを担当したときに
学んだことを、改めて実感している。


ちなみに、余談だが、
「桃井さん」の発音には2パターンある。
ももい(↑↓→)と、ももい(→→↑)。
経験上、後者は55歳以上の人に多いので、
ご年齢が全く分からない時に参考にすることも…。