この家族旅行のあと、
僕は東京に行きます。 つばめが走り出しても、父はずっと新聞を読んでいた。
そして僕と目が合あうと、お決まりのセリフを言った。
「新聞くらい読めよ。社会人になるんだろ。」
僕は来春、東京に行く。二十二年間暮らした事を出る。
「その前に、三人で旅行しない?」
それは、母からの提案だった。
中学生の頃から、僕は家族旅行の話が出ても断っていた。
なんか、照れくさくて面倒くさくて、
でも、いつもいつも誘ってくれる母がいた。「いいよ。どこ行く?」
今回は、僕も、なにか感じるところがあった。
行き先は、父と母が新婚旅行で行った鹿児島になった。
新聞を読み終えた父が、ようやく母に話しかけた。
「母さん知ってるか?
日本で初めて新婚旅行に行った坂本龍馬も、
行き先は鹿児島だったんだぞ。」
「あなた、その話、新婚旅行の時に聞いたわよ。」
聞こえないふりをする父、いつもこんな調子だ。
旅館に着いても、夕食をとりながら
きっと父は「会社とはなぁ」とか、語りはじめるんだろうな。
きっと母は、「ちゃんと食べるのよ」とか、何度も言うんだろうな。
やっぱり家族は、面倒くさくて照れくさい。
そんな家族家族を目に焼きつけて、
僕は、東京に行く。

つばめ。
旅する新幹線

NO.28610

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業種 貨物運輸・旅客運輸(鉄道・船舶・飛行機会社)・観光サービス(ホテル・自治体観光ポスター)
媒体 ポスター
コピーライター 佐藤雄介
掲載年度 2010年
掲載ページ 232