小さい島で膝を打ったこと
船で小さい島に行きました。その島は自転車で廻るのに丁度いいのですが、連休で生憎レンタサイクルはすべて貸し出し中。それでもせっかく来たのだし…と、歩くことにしました。
風が気持ちよく、海岸沿いの道を足がどんどん進みます。7キロも8キロも歩いたところで、ふと帰りの船のことが気になり、スマートフォンで調べてみるとびっくり。夕方の船の数が、思いの外少ないのです。来た道を戻ると、帰りたい時間の船には乗れなくなってしまう。
バスに乗ればいいやと、路線バスの時刻表を見ると、土日祝日は運休。タクシーを呼べばいいやと、観光センターの人に聞くと、クルマがない家はないという環境で、島にタクシーは2台だけ。今日はその2台が出払っていると言うのです。
腹なんて全然立たず、寧ろ「タクシーは電話をすればすぐやってくる」という感覚を、島に持ち込んでいる自分が情けなくなりました。
下調べ無しで来てしまった自分が悪い。帰りが遅くなってもしょうがない。そう思い、申し訳なさそうに頭を下げる観光センターのおじさんと別れて、暗くなり始めたいま来た道を10分ほど歩いた時でした。
それこそ本当に、猛スピードで。さっきのおじさんが、「タクシーがつかまりましたー」と叫びながら自転車を走らせ、追いかけてきてくれました。
タクシーが何台も待機していてすぐに乗車できたら、それはそれでよかったでしょう。でも、おじさんが汗をかきながら、走って教えてくれてやっとタクシーに乗れた方が体験として何倍もうれしい。妙に満ち足りた気持ちになっている自分に気がつき、「そうか」と思いました。
人に旅の体験を聞くと、面白そうに語り出してくれるのは、大抵旅先で困ったことで、それをどうリカバーしたかという話のような気がします。何もかもスムースで、受け身でいられる楽さも否定はしませんが、多少の不便や躓きがあって、それに対して能動的に行動し、思わぬ助けに救われた記憶の方が、鮮やかで深いものになる…。もちろん、無事で帰ってきてこそ言えることではありますが。
何もかも網羅し、過不足なく充実させてしまいそうなところをぐっと我慢して、工夫や偶然のための「余地」を残しておく。過ぎた親切はおせっかいになってしまうように、デザインのようなものも、敢えて少し足りないくらいに留めておくことが、人にとってよい塩梅なのかもしれません。
-金曜日を迎えて-
いつもできるだけ多くの情報を集めて新しい仕事に取り掛かりますが、やはり実際に見たこと聞いたこと、感じたことが思考の立脚点となります。そんな断片を集めて、一週間を繋いでみました。
もし読んでくださった方がいたとしたら、本当に有難うございました。
また、バトンを渡してくださった服部タカユキさんに、改めてこの場を借りて感謝を申し上げます。
来週は、TCCの同期で、九州でがんばっている西鉄エージェンシーの森下浩子ちゃんが登場します。真向かいの席に座っているという元同僚、野口健太郎氏によると、「受賞後もいいコピーを書き続けていて、すごい」とのこと。気になります!
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