「君がデザイナー?」
1993年の話だ。
博報堂第3制作局宮崎グループに配属された
3人の新人で、グループの先輩である
大貫卓也さんに挨拶に行った。
カップヌードル「hungry?」やとしまえん、
Laforet、西武などなど、
やる仕事やる仕事、
大貫ハンパないって!という
今年の大迫ハンパないって!
なんてもんじゃないレベルの無双状態で、
その年の6月に大貫さんは独立することが決まっていた。
岡田くん(その後CMプランナーとなる)、
鎌田くん(デザイナー採用)、
そして照井のうちの誰か(もう覚えていない)が、
「はじめまして。今年配属されました新人です」
と代表して挨拶をした。緊張しながら。
新入社員らしく3人とも
リクルートスーツのようなスーツを着て。
すると大貫さんは、ぼくを指差して言った。
「君がデザイナー?」
「い、いえ…違います」と言って、
デザイナー採用の鎌田くんを手で示しながらも、
ぼくはとてもうれしかった。
なぜなら、デザイナー最強説というか、
アートディレクションこそが広告を決定づけると考える
大貫さんに「デザイナー」と思われたということは、
「君のフォースがいちばん強い!」と言われたに等しい。
論理の飛躍はかなりあるけど、
ぼくはそう思うことに決めた。
大貫さんの、この何気ない一言は、
それからのぼくをずいぶん助けてくれたと思う。
谷山さんに出すコピー出すコピーを否定されたり、
宮崎さんにつまんなそうな顔をされたりした時も、
でも自分にはきっとなにかいいところがあるに違いない…
と自分自身に言い聞かせることができたのは、
「君がデザイナー?」というあの一言のおかげだ。
去年、大貫さんの『Advertising is』の
出版記念のお祝いを兼ねた忘年会で、
思いきって大貫さんに話してみた。
絶対覚えてないと思いますけど、
配属されてご挨拶に行ったとき、
「君がデザイナー?」って、
ぼくを指差して言ってくださったんですよ、と。
「えー、覚えてない」
大貫さんは笑いながら言った。
そりゃそうだろう。
忘年会の二次会では、
会に出席したみんなに、
大貫さんがひとりずつ
「Advertising is」のあとに続く言葉を
考えてサインしてくれるという
夢のような時間があった。
永井一史さんには、
「Advertising is PRINCE」
(解説:永井さんはあらゆる意味でプリンス)
横道浩明さんには、
「Advertising is SOUL !」
(解説:横道さんは熱い。西麻布のソウルバーにもよくいる)
須田和博さんには、
「Advertising is スタラボ!」
(解説:須田さんは文字通りスタラボ)
井村さんには
「Advertising is ミソンパ」
(解説:カップヌードルの「ミソンパ」は井村さんの企画だ)
で、ぼくの番になった。
大貫さんはすいすいっとペンを走らせて、
「Advertising is Copy !!」と書いてくれた。
神様はいると思った。
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井村光明(TCCグランプリ)×大貫卓也(ADCグランプリ)
特別トークイベント「Advertising is Copy?」(司会:谷山雅計)
11月22日(木)18時半〜 宣伝会議セミナールーム
参加費:1,500円(発売方法については近日発表です)
みなさん、ぜひ!!
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