3.言葉を額縁の外へ連れ出そう。
うまいコピーライターになりたかった。
正しくは、うまいコピーライターだと思っていた。
プロになる人は、おそらくみんなそうなのである。
けれど、32歳のときに入った代理店で「コピーが下手」との評価を下され、
海外賞を獲りまくっていた多忙な先輩に誘われて(騙されて?)
右も左もわからぬまま、デジタルやアクティベーションの企画をした。
いつのまにか、名刺にコミュニケーション・プランナーの肩書きが加わっていた。
そのあたりからだ。自分の中で「コピー」の定義が変わりはじめたのは。
広告業界全体を見渡しても、ポスターやCMなど、
いわゆる「広告のキャッチコピー」を書く機会は激減している。
コピーはもう、額縁の中の美しい一行ではない。
けれど、コピーライターの職能を「コンセプトワーク」と捉えれば、
その活躍の場は無限に広がっていくのではないだろうか。
戦略を考え、向かうべき方向を、切れ味するどい一行で規定する。
そんな技術の使い道を拡張することで、
広告、企画、事業、プロダクト、空間、街、映画、本、宗教…
何だってつくれるのではないか、とすら思う。
いま僕の名刺には、Copywriter / Conceptor と肩書きが刷ってある。
一行のコンセプトメイクを追求したい意志を込めて。
その甲斐あってか、広告というアウトプットの
だいぶ前段階から関わらせていただける仕事が増えた。
新サービスのコンセプト、地域開発、国の観光PR、企業のビジョン…。
そのブランドが大事にしてきたことを踏まえながらも、
大きく飛躍するための「歴史の転換点をつくる」
お手伝いをしたいと思っている。
さて、2018年TCC新人賞に末席ながら加えていただいたのが、
この成田国際空港さんの新聞広告。
実はこれも「世界の名所・裏側広告」という
コンセプトから出来上がっていった企画だった。
あえてヘッドラインを挙げるなら「スフィンクス。」
10年前の、うまいコピーライターを目指す自分が見たら、
なんとうまくないコピーだと驚くだろう。
コピーの時代ではない。けれど、言葉の時代ではある。
コピーライターにできることはまだまだあると、
恐縮しながらも日々思う。
*
neuron 味村 真一
mimura@neurontokyo.com
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