第1話:エンヤ婆の言葉
空気を吸って吐くことのように!
HBの鉛筆をベキッ!とへし折る事と同じようにッ
できて当然と思うことですじゃ!
荒木飛呂彦先生作
『ジョジョの奇妙な冒険』より
空条承太郎が主人公の第3部スターダストクルセイダース。
宿敵DIOがとある能力を初めて発現させる場面で、
DIOの側近の一人、エンヤ婆が放った台詞です。
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エンヤ婆がいなければ、
私は一生TCCに手が届かなかったと
言っても過言ではないのだッ!
というのも、約1年前のちょうど今頃。
受賞作となった西武・そごうさんの
お正月広告のコピーを書いていました。
「さ、ひっくり返そう。」のキャッチコピーは確定。
キャッチに対し、語り手の視点を変えつつ
3パターンのボディコピーを用意していたところ、
CDから「逆から読むと意味が反転するやり方ってあるよね。
そういうのが1案あっていいかもよ?」と一声あり、
「じゃ、やってみま〜す」くらいの感覚で
初稿はバーッと2時間弱で書き上げました。
幸いなことにクライアントも面白がってくれたのですが、
「社内でいろんな人に見せたんだけど、
半分以上の人にわからないって言われて…」と戻しが。
た、たしかに、途中で何回も意味が反転するし、
結局ネガなのかポジなのか何だかすっきりしない。むむむ。
で、当然、修正するわけですが、
「でも1文字動かすとこっちが成立しなくなって
えっとこれは入れ替えても大丈夫で、いや、大丈夫じゃなくて……
ンアーーーーーーーーーー!!!!!」
当初、考えていたよりもだいぶ難儀かもしれん
と気づいても後の祭り。
※世に出たボディコピーは11行ですが、初稿は19行ありました。
接続詞もやたらに多く、言い回しも複雑。
あまりに単純だと驚いてもらえないと不安だったのです。
修正を繰り返す日々、ささやかな楽しみは、
アプリの少年ジャンプ+で復刻連載されていたジョジョを読むこと。
逆読みに四苦八苦していた私は、
エンヤ婆の台詞にドスゥッと射抜かれたのです。
昔、読んだときはさほど気にも留めていなかったのに。
それからというもの、逆読み以外でも、
仕事で追い込まれて心が砕けそうになると
私の頭の中のエンヤ婆が
「できて当然と思うことですじゃ!」と囁き、励ましてくれ、
入社以来最高に忙しかった年を乗り切れたのですじゃ!
(我ながらどうかしてる)
ジョジョは名言の宝庫ですし、
独創的な擬音表現が有名だったりしますが、
HBの鉛筆の他にもあの手この手で繰り出される
比喩表現も魅力です。
「なるほど!」と納得するものもあれば、
「ん!?」となるものもあるのですが、
だがそこがいい。
ページの隅々にまで、
誰とも同じじゃあない言葉が満ち溢れている
荒木先生のセンスとサービス精神たるや!
長くなってしまい、すみません。
私の無駄無駄無駄な駄文はさておき、
ぜひジョジョを読んで黄金体験を!!
※漫画はちょっと入りにくいという方は、
アニメがおすすめです。
「オラオラ…」の数や「だッ」の「ッ」の発音まで
原作の言葉を忠実に再現することに
こだわられていて素晴らしいです。
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私を月曜早朝6時にコンビニへ走らせる作品から次回、
『気楽に復讐を!』
です。
よろしくお願いします。
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