舞台の上のトマト
16歳~18歳まで、吉本興業のNSCという養成所に通っておりました。
といっても、一般的に知られている「お笑い」コースではなく、歌とダンスを勉強する
今はなき「歌組」というコースです。
お笑いコースの同期でいうと、ジャルジャルさん、銀シャリさん、アキナさんなどがいます。
(といっても、別に当時面識があったわけでは、ない。)
ビヨンセやクリスティーナアギレラのようなDIVAになりたかったティーンの私は、
何を血迷ったか
月謝が安いのと、「吉本」という関西における圧倒的なネームバリューに引かれ、
高2の春、NSCの門を叩きました。
(今もしあの時の自分に会えたら、もっと別のレコード会社のオーディションとか受けろとアドバイス、したい。)
当時、NSCには夢を追いかける素敵な仲間がいっぱいいました。
何十人もの個性的すぎる人達の集団の中で、
ひときわ異彩を放って目立っていた女の子が、1人いました。
「トマト姫」です。
歌組では本名で活動する人がほとんどの中、
トマト姫だけが自分に芸名をつけて、アーティスト活動をしていました。
ちなみにトマト姫は、トマト星のお姫様らしく
リコピンビームでみんなを元気にするそうです。
まだ、こりん星から別のお姫様が襲来する前のことです。
当時の私からは、彼女はとても異質でアウトロー的な存在に見えていたのですが、
今思うと、すごい。
きちんと自分の存在をみんなと差別化して、明確にブランディングすることができている。
だって、仲良い子以外にいまでも名前覚えてるの、このトマト姫、だけ。
「わたしは正統派でやりたいから、本名でいくもん!」
って思ってた当時のわたしに、バックドロップですね。
そのあと、何年かしてトマト姫が関西ローカルの有名TV番組に出演していて、
とてもうらやましかったのを覚えています。
そんな私は何年か前から、広告の仕事以外に趣味で
「はたルーシーくみこ」というミドルネーム入りの名前で絵を描いたり、作詞をしたりしています。
飲み屋でのあだ名も「ルーシー」です。
ある日、いきなりふと、自分に芸名が欲しくなって、勝手につけました。
DIVA→コピーライターという、また違った土地にたどり着きはしましたが、
もしかしたらいまだ無意識の中で、10代のあの頃の忘れ物を
必死で取り戻そうとしているのかも、しれません。