麦とろ牛皿御膳/がっつりヘルシー!新麦とろ牛皿御膳 835秒 NA(サラリーマン):
真夏の外回り真っ只中、
エネルギーを充電しようと吉野家に入ると、
朝いつもと変わらず大学に出かけた娘が…

サラリーマン:
直子!

直子:
お父さん!

NA(サラリーマン):
ガンダムの人になっていた

シャア:
お父さん?

アムロ:
え?え?え?え?え?フラウボウのお父さん?

サラリーマン:
フラウボウ?

直子:
あの…いやー…

サラリーマン:
いやいやいやいやあのね、フラウボウって何?
この子は直子っていう名前があるんだよ。
でね、今朝大学に行くときも駅まで
私と一緒だったんだけれども。ね?
あの普通の、ふつーの、もう至って大学生、
ふつーの出で立ちだったんだけれども。

アムロ:
有明でちょっとしたイベントがありまして

シャア:
ほほう。
レイヤーであるということを父上には隠していたのか、
フラウ。

サラリーマン:
ごめんごめんごめん。
今の短い会話の中にももうわからない用語が目白押し。
めじろが押し押ししてくる感じ

直子:
お父さん!あの…私…コ…コ…

シャア:
(口パクで)頑張れ

アムロ:
(口パクで)うん

直子:
コスプレーヤー、やってんの!

サラリーマン:
コスプレ?

直子:
そう、あの、今日、
有明でそういうコスプレのイベントがあったから…
あの、家出るときはいつもの服装で出て、
そのー会場近くで、これに着替えて…

サラリーマン:
いやいやでもさ、コスプレってさ、あれだよね、看護師とかさ、
あのー何あのー婦警さんとかそういう

シャア:
それはおっさん、
いやスケベおっさんの感覚です。

サラリーマン:
おい、お前おい、ぶっ飛ばずぞお前、
お前その娘のまえで父親に対して、
あのスケベおっさんとか言うな

アムロ:
お父さん!僕たちはアニメファンなんです!
コスプレイベントはアニメファンの祭典なんです!

サラリーマン:
おー…えーそして、こ、これは?

直子:
ガンダム!お父さんの世代なら、
知ってるはずでしょ?

サラリーマン:
んーいやいやガンダムは知ってるんだけれども、
まあそんなにあの、
すごい詳しいってわけじゃないからね

シャア:
坊やだからさ

サラリーマン:
うん、坊やじゃないね。
全然坊やじゃないじゃん。
見りゃわかるじゃん。
誰から見たっておっさんじゃん。

アムロ:
お父さん!もしよかったら、ご一緒に、
新・麦とろ牛皿御膳食べませんか?
すみません!
新・麦とろ牛皿御膳、スタンバイ。

店員:
かしこまりましたー!

アムロ:
お父さん!

サラリーマン:
勝手に注文したねえ

店員:
いらっしゃいませー

サラリーマン:
ははは

シャア:
食欲のなくなりがちな夏にピッタリ。
サッパリでありながらスタミナたっぷり。
夏の吉野家の定番ですよ。

直子:
…怒る?怒るよね、普通に大学行くふりして
こんなことしてるんだもんね…

サラリーマン:
うんうんうん、まあまあね、
まああのちょっと意外ではあったけれども

シャア:
認めたくないものだなあ、自らの娘が
アニメのコスプレイヤーだったということを。

アムロ:
どうした、二人!
お互いショックなのは確かにわかるけど、
何も犯罪を犯しているわけじゃないんです。
どうです?お父さん。
フラウボウ、可愛いでしょ?

サラリーマン:
いやそれはまあ、我が娘ですからね。
可愛いか可愛くないかで言えば
もちろん可愛いです。

シャア:
認めたー!速攻認めた!認めたくないものだな、
早めに言っといてよかったー!
ははは

サラリーマン:
いやいやおい、ちょっと黙れ、黙れ。
認めてない。別に認めてはいない。
だって本来は大学に行くべき時間なんだからね。

シャア:
でも可愛いでしょ?

サラリーマン:
いや、可愛いよ?でもね…

アムロ:
確かにー!しかーし!
僕は、そんなに可愛いフラウが僕に思いを
寄せてくれているのにも関わらずララァに
恋をしてしまうんですよ、お父さん!

シャア:
私もなのだよ、父上。

直子:
ひどい!ひどいよアムロったら!
私は、こんなにもアムロのことが好きなのに!

サラリーマン:
いやーもうだんだん、
我が娘の喋り方まで変わりつつある…

アムロ:
というわけでお父さん、
残念ながらあんたの娘は単なる、
あ、遊びの女です!
ははははは

サラリーマン:
ははははは。面白い。ははははは。
面白いね。この青年はね。
あのーあの僕、ちょっと笑いながらでいい。
笑いながらで全然構わないんだけど、
ちょっとこちらにお顔ちょうだい。
ちょっとこちらにお顔ちょうだい!

アムロ:
ぶったね!二度もぶった!
親父にもぶられたことないのに!

サラリーマン:
二度もぶってないよ。

店員:
新・麦とろ牛皿御膳、お待たせしました。

サラリーマン:
はい

直子:
ガッツリヘルシーなんだから、いつまでも健康にね!
お父さん!

シャア:
スタミナ、必要ないでしょ!

サラリーマン:
まあ、こんな状況だからね。はははは。

直子:
ガッツリヘルシーで、このショックから立ち直ってね!

サラリーマン:
んー困ったもんだ。
え?もう完全に開き直った娘に父親としては何を
言えばいいのかね私はね。
まあでもいただくかね。
おーでもこれは確かにヘルシーで且つね、
スタミナたっぷりだね、これはね。

アムロ:
アムロ、行きまーす!

サラリーマン:
あーちょっとごめん、ちょっとごめんね、ちょっとごめん、
あーごめんごめん。
いいのよ、あのちょっと肉おいて、
で、箸もちょっとここに置こうか。
ね、箸ここに置いて、ほんでね、どうしよっかな。
何がしたい?何がしたい?
えっとじゃあ、どうしよっかな。
じゃあブイブイってやりな。ブイブイって、
右手でブイブイイェーイって、ブイブイってやった上で、
顔ここにちょうだい、顔ここ!
ここにちょうだい、ここにちょうだい!
ここにちょうだい!

アムロ:
あっ!

サラリーマン:
ちょっと入った今、本当に入ったね今ね

アムロ:
二度もぶった

サラリーマン:
うん、まあ合計確かに、合計二度ぶったね

アムロ:
親父にもぶたれたことないのに!

サラリーマン:
なんでさあ、自分の過保護をいちいちさらけ出すの?

シャア:
はははははははははは

直子:
ごめんアムロ!
あの、お父さん、そういう名台詞とか知らないから!
さあ、食べて!外回りの途中でしょ?
そんなにのんびり食べてる場合じゃないもんね。

サラリーマン:
まあそうだね。じゃあいただこうかね。うん。

シャア:
見せてもらおうか。
夏、あくせく働いても安月給のサラリーマンの
食べ方とやらを!

サラリーマン:
なんて言い方すんだお前。嫌な言い方すんなあ。
ぶっ飛ばすぞ

サラリーマン(麦とろ食べる):
んー

直子:
お父さん、美味しい?

サラリーマン:
いやー美味しいね!
こりゃ夏もグイグイ食べられるねえ!
んー、あのーちなみに直子。
あの、その衣装はあの、いくらぐらいするもんなの?

直子:
あー体にフィットするように特注したから、15万くらい?

アムロ(サラリーマンに殴られて):
あっ!うわっ!あっ!

直子:
高い?

サラリーマン:
いやまあまあ、その値段を聞いてもね、
あのグイグイ食べられるよ!
うん、そりゃあお前、
この新・麦とろ牛皿御膳素晴らしいね!ははははは

アムロ:
アムロも行きまーす!

サラリーマン:
あ、ごめん、本当にさ、君さ、ちょっと一回箸置こうか。

アムロ:
行きまーす!

サラリーマン:
ううん、行かない。
ちょっと箸置いて。ちょっとここ置いて、ここ置いて。
まず置いて。ほんでね、どうしよかな。
もう、どうしたい?どうしたい?
もう本当にもう俺はお前をどうしたい?
あの、こうバッチグーってやってごらん!
バッチグーって!バッチグーって!
うん、そうそうそう。
そんで、顔ここにちょうだい!顔ここにちょうだい。
近づけよう、近づけよう、ね?

アムロ:
近づけるんですか?

サラリーマン:
うん、で、バッチグー、バッチグーごと!

サラリーマン:
行くな、アムロ!行くな、ね?これ私の牛皿

アムロ:
二度もぶったね

サラリーマン:
三度ぶったよ

アムロ:
こいつ…動くぞ

サラリーマン:
めっちゃ俺見てる。え?俺のこと?
え、いやいやいやいや何を言ってるの?
だって、ずっと動いてるよ?え、動いてるよね?
俺だって、ずっとこう来てさあ、
ほんで箸持って今こう食べてるじゃん!
すなわち動いてるじゃん!

シャア:
ははははは、速度が足りないのだよ、速度が!
そんな生ぬるい速度では気付かれて当然。見ていろ!

アムロ:
速い!通常の三倍のスピードだ!

直子:
見えない!速すぎて見えなかったわ!

サラリーマン:
もちろん、見えますよ。全然見えます。
しかも、こいつ今一回取ってこう落として割と苦戦して、
全部見えてただろ!
ねえ、見えてたろ?ほんで今も今、
くっちゃんくっちゃんやってんじゃん!

シャア:
チャンスは最大限に生かす。それが私の主義だ!

サラリーマン:
いい笑顔だ。ちょっと君さあ、
ちょっとヘルメット取ってみるのはどう?
ヘルメット取ってみるのはどう?うん。取った?
はい、じゃあ置いて。
そこ置いて。はい、置いて。ほんでね、ほんでね、ごめんね。
ちょっと顔をね、この辺りにくれる?
顔をこの辺りにちょっとくれる?
来たね、この辺り、この辺り。ここここ、ほんでここ、うん。
ここ、そこに来たらせっかくだから、そうだねえ。
『赤い彗星シャアだ!』って言ってくれる?

シャア:
赤い…

シャア:
当たらなければどうということはない

サラリーマン:
当たってるよ、ジャストミートしたよ!

直子:
ちょっとやめてよ!
お父さんがゆっくり食べてるんだから、邪魔しないで!

サラリーマン:
あー、ありがとう。
ね、あのそんな、ね、こんな状態でもね、
お父さんを思いやってくれるんだね。
ありがとな!うん、ありがとう。
じゃあまあ、あーね!食べようかね!
うん、よし食べよう!

シャア:
何か見ていると、また食べたくなってきたなぁ…

直子:
まあ!シャアったらくいしんぼうね!

シャア:
フラウボウ!
君は良い友人だったが、君の父上がいけないのだよ。(手を叩く)
新・麦とろ牛皿御膳、おかわり!

店員:
かしこまりました!

サラリーマン:
かしこまらないで、まあいいけど

アムロ:
僕も負けるか!僕もおかわり!スタンバイ!
カシャッ、プシューッ

シャア:
ふふふはははは。
モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的差でないということを
教えてやろう

アムロ:
プシューッ、プシューッ

直子:
アムロ、食べられるの?
普段少食のあなたが、おかわりだなんて!

アムロ:
シャアのやつ、体を動かして少しでもお腹を空かせる気だな!

シャア:
ブーン、ブーン、プシューッ

アムロ:
よーし!まだだ!たかがメインカメラをやられただけだ!

シャア:
ええい!連邦軍のモビルスーツは、化け物か!

アムロ:
僕が一番ガンダムを上手く使えるんだ!

直子:
シャアは吉野家に来ると大概おかわりなのよ!
あなたには到底敵わないわ!

アムロ:
戦いが終わったら、ぐっすり眠れるって、
保証はあるんですか!

シャア:
戦いは非常さー!

直子:
アムロ、生きて!生きて戻って!

サラリーマン:
うるさい、うるさい。うるさい、お前らほんとうるさい、まじで。
他にお客さんもいらっしゃるんだよ。うるさいでしょ。
ねえ、お願いだから落ち着いて静かに食べさせて。
吉野家は、私の外回りのオアシスなんだよ!

シャア:
デギンだ!デギンザビが現れたぞ!

サラリーマン:
ういーーーーーん。デデンデデン

シャア:うわあーーー

サラリーマン:
直子!
デギンザビのコスチュームをもう今すぐ秋葉原に行って
買って来なさい!

直子:
多分、売ってないわ

サラリーマン:
デデンデデン

シャア:
赤い彗星!

サラリーマン:
バホーン

アムロ:
アムロ、行きまーす!

サラリーマン:
バホーン

サラリーマン:
麦とろを食べてスタミナを補充したデギンザビは、
無敵なのであった。

直子:
お父さん!ガンダム、楽しいでしょ?
私がこの先、コスプレしていくの、許してくれるでしょ?

サラリーマン:
…うん、許す!かわいいから許す!ははははは

NO.2019362

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業種 食品・飲料
媒体 WEB
コピーライター 福田雄一
掲載年度 2019年
掲載ページ 362