おなじまい 「ぬけた!」。
近くに暮らす母の家へ家族で遊びにいった日、
ずっとグラグラしていた娘の乳歯が抜けた。
イーっとしながら、皆に誇らしげに見せる娘に母が、
「おまじない、しようか」と言うと、娘は
「おなじまい?」と間の抜けた顔で母を見つめていた。
そういえば自分も昔、母に言われてやったことがあった。
丈夫な歯が生えるようにと、抜けた歯を屋根の上に投げるのだ。
普段のマンションだったらできなかったろう。
楽しそうに母についていく娘の姿に、昔の自分が重なった。
   
「せーの!」。
家族の掛け声に合わせて娘が投げた小さな歯は、
しっかりと屋根の上へと届いた。すると母が突然、
「おばあちゃんも投げちゃった!」と、
入れ歯をはずした口を大きく広げて娘を驚かしたのだ。
一瞬にして、家中が笑いに包まれた。
その中心でケラケラと笑っている母の姿に、
いつもは一人で暮らしている静かな日々を想像した。
母のこと、家のこと、考えていなかったわけじゃない。
母の気持ちをちゃんと聞いてみようと思った。

家族を思う、そのそばに。
ヘーベルハウス

NO.2019548

広告主 旭化成ホームズ
受賞
業種 精密機器・産業資材・住宅・不動産
媒体 新聞
コピーライター 鈴木雅昭
掲載年度 2019年
掲載ページ 440