10年愛 完
「石井さん、どう?忙しい?」「めっちゃくちゃです」「…え?」「今週は一日中研修づけすよ~」「…え?」「いや~大変…」「あれ…?有休消化中じゃないの…?」「いや、もう始まってんすよ~…マジで時間ないす…で、どうしたんすか?」「……すげえ忙しそうな時に言いにくいんだけどさ…折り入って頼みがあんすよ…」「なんすか?」「黒澤仁から電話がかかってきてさ…」「おお、はいはい」「コラムやれっていうんだよね…」「そ…それは自分で書いてくださいよ~!」「書いてんのよ…」「あ、そうなんすか?」「戸田とか基とか高田さんとかにどんどん断られてく様子をさ、コラムに書いてんだけど…」「あ~なるほど」「石井さんに断られるとさ、リレーコラムがさ、もう永久に俺のコラムコーナーになっちゃうんだよ…」「なるほど…」「で、一生のお願いなんだけど、次、引き受けてくんないかなあ…?」「ええ?いつからですか?」「来週というか…」「いやあ…今日日曜ですよ…明日からですか…?ちょっ…ちょっと今、美容院なんで、後でまた電話します~…」「お…おお…うん…分かりました…待ってますー…!」
やばいじゃん。これ、断られムードじゃん。
マジで次の人見つからなかったら、どうすんだろ?
TCCの人に連絡したら、誰か紹介してもらえたりすんのかな?
TCCの人って、そういう事態、想定してんのかな?
石井さんに断られたら、マジで黒澤仁に戻すしかなくなるよなあ。
黒澤仁も、俺が本気でまた戻してくる危険性を察知してか、
週の半ばあたりで、「戸田に書かせるべきだね」とかメールして来たからなあ。
期待に応えて戻そうかな、実際また前と同じ人に戻った例ってあんのかな、
だいたいなんで仕事でもないことでこんな悩まなきゃなんねえんだよ、
TCCなんか入んじゃなかったぜ、新人賞なんか獲らなきゃ良かったぜ、
いや、それは嘘だな、だって俺からTCC取ったらただのプー太郎だしな、
そう考えるとTCCって精神安定剤っぽいな、あってよかったTCC、
なくてもいいよねリレーコラム、とかなんとか、
延々2時間ぐるぐるめそめそしてたら、石井さんから着信。
「もう僕の名前、出てんじゃないすか…」「すみませんすみませんすみません!」「ま、いいんですけど、あんま今、書けることがないんですよね…」「大丈夫大丈夫大丈夫!俺みたいに、適当に思い付きであることないこと書けばいいし忙しかったら1回か2回アップすればいいし石井さんは忙しいからあんまり回数は書けませんの旨のエクスキューズ入れとくし仕事タダでやるし焼きそばパン買ってくるしなんでも言うこと聞くから一生のお願いです!お願いします!」「あはは、分かりましたよ、ただ、毎日は書けませんし、今、微妙な時期なんで、もしかしたら、お断りするかもしれませんが…」「!!!」「その時は…」「!!!!!」「誰か別の方に…」「!!!!!!!!」「バトンを渡しますよ」「あああああああああああああああああ~りがとうございますううううううううううううう!」
ということで、最終回にして本コラムの教訓。
【持つべき友は、石井克哉】
業にまみれた同期からの身勝手な泣き言にも嫌な顔ひとつせず、
耳を傾けてくださる懐の深さはまさに、広告界の瀬戸内寂聴。
その御声は、いかにも徳々しく、電話口からは心なしか、
光が差してございました。
転職先の詳細は、まだつまびらかにはしかねるとのことでしたが、
曼陀羅山寂庵だと思って、ほぼ間違いないでしょう。
そんなこんなありましたが、
くだらない戯言の数々から一転、来週は、石井克哉法師による
霊験あらたかなご説法を賜ることがきる有難き徳別ウィーク。
徳大のご期待をもって、お迎えくださいまし。
それでは、石井さん、宜しくお願いします!
ほんとうに、ありがとう!愛してる!
※石井克哉のキャリアは、現在、センシティブなタイミングの真っ只中にあるため、
コラムを更新する頻度が極端に低い可能性があります。
※石井克哉のキャリアは、現在、センシティブなタイミングの真っ只中にあるため、
詳しい断りなく、他のコピーライターにバトンが渡される可能性があります。
※石井克哉のキャリアは、現在、センシティブなタイミングの真っ只中にありますが、
彼は多忙にもかかわらず、くされ縁の同期のピンチに優しく救いの手を
差し伸べてくれました。この場をお借りして、改めて、御礼申し上げます。