人生のオリエンシートを書け。
どもども。
クリエイティブディレクターの田中大地です。
最初に断っとかなきゃですけど…
前回、前々回の小霜さんの言葉たち。
あれは、まんまあの通り言われたというより、
ぼくの記憶の中でちょっとずつ変化したり
ちょっとずつ補正されたりしながら、
あの形でぼくの肝に銘じられた言葉たちでした。
実際の小霜さんは、部下にはとくに
「なんも言ってくんない人」だったので、、、
たまにブスッと刺してくるダメ出しや、
ボソボソっと喋ってくれるアドバイスから、
真意を必死に深読みしてきました。
そうやって、心に残った言葉たちです。
きょう紹介する小霜さんにもらった教訓
「人生のオリエンシートを書け」もそう。
この説教じみた言葉の通り
小霜さんに言われたわけではなくて。
以下のやりとりの中で勝手に自分で
痛感して、肝に銘じていることでして。
———————————
その日は、
いつにも増して小霜さんが不機嫌で、
二人で場末の飲み屋に来ていました。
「田中〜〜なんだお前、最近のぬるいコピーは」
「…すいません」
「紙のムダなんだよ。俺より地球に謝れ」
「…。」(なんてイヤミな人なんだ…)
「お前はいったい、どうなりたいんだ?」
「と言いますと?」
「どんなコピーライターになりたくて、
毎日毎日、あんなゴミを書いてるんだ?」
「…。」(こんなイジワルな言い方ある?)
「さすがにあるだろ目標とか」
「…。」(う〜ん)
「なんもないのかよ?」
「…。」(なんて答えるのが正解なんだチキショー)
「あたま空っぽか?」
「…。」(ううう)
「どうなりたいんだよ?え?え?」
「に、に、日本一のコピーライター…でしょうか?」
ぷっちん。
———————————
当時のいたたまれない気持ちが
フラッシュバックしてきたので、
この後のやりとりは割愛しますが・・・
とにかくそのあとは小霜さんがキレて、
延々と説教でした。
なんだそれ?
そんなもん目指してんの?
ばかじゃないのかお前?
なんでこんなヤツを採用してしまったんだ…
そもそも日本一かどうかなんて、
どうやって証明するわけ?
そんなあやふやなもん追い求めてるから
いつまでたってもお前はダメでゴミでクズで
ネチネチネチーーーーっ!
まあね。べつにね。
日本一に大した意味はないというかね。
なんか言わなきゃと口が滑っただけでね。
ただその時、自分の瞬発力の無さよりも、
もっと深刻な問題を自覚しました。
小霜さんに雇われるまで
「CMをつくる!」という
少年ジャンプ的な夢しかなかった僕は、
叶った後の夢の続きを
なにも持っていなかったのです。
とっさに「日本一」なんて
浅いことしか言えなかったのもサムいし、
「日本で何番目」という、
誰かとの比較でしか答えられなかったのもイタい。
なんならCMプランナーに
なりたかっただけのぼくは、
その時の本音では、コピーライターを
極めたいとも思っていませんでした。
CMをつくる。
その夢のような夢を「生活」にした後の、
漫画ゴラク的な「将来の展望」が
1ミリもない自分に愕然としました。
小霜さんの説教地獄のあと、
246をトボトボ歩いて帰りながら
「自分はどうなりたいか」をひたすら考えました。
そんでそんとき思ったんですよ。
「あれ?人生って広告と一緒じゃね?」
って。
オリエンシートには大抵書いてありますが
広告というのは必ず「目的」がありますよね。
まず目的ありきで、それを阻む制約を突破し、
課題を解決するための「手段」を考え抜いて、
行動に移す。行動に移したら効果検証し、
うまくいってもいかなくてもPDCAを回す。
そうだ。
このやり方は、まんま人生に転用できるなと。
今をどう変えたいか。将来どうなっていたいか。
最初に「目的」を定め、次に「手段」を考える。
「手段」は必ず「目的」から逆算され、
「手段」の正しさは常に「目的」が決める。
どうなりたいかイメージできないまま
仕事をこなしていた自分は、
目的無きまま手段だけを先に考えるような、
SNSでたまに遭遇する、くそチャラい
スキャム広告みたいな生き方をしてたのです。。。
246の路上でそう気づかされた
20代後半のあの日から、
ぼくのPCのデスクトップの王様席には常に
「人生のオリエンシート」が鎮座しています。
小霜さんの元を巣立ったあとも、
担当案件や仕事のステージが変わるごとに
そのMYオリエンシートを書き足したり直したり。
毎日、毎週、毎月、毎年、見返しては、
こつこつ修正しながらこれまで生きてきました。
(ぼくはなんて真面目なんだ…)
自分の脳から快感汁が出るのは、いつか。
汁を出っぱなしにするための、
人生の勝利条件とは何か。競争に勝つこと?
賞を取ること?何者かになること?絶対違う。
なによりも家族や娘に誇れる仕事をして、
ハッピーに暮らせる状態を保守することだなと。
そのための条件は?それを阻む課題は?
それを解決するために、何から取り組むべき?
使えるリソースは?頼れる仲間は?
ストレスの原因は?このモヤモヤの正体は?
闇雲に頑張るより効率のいい抜け道はないか?
アウトオブボックスな裏技を見逃していないか?
もっと仕事をゲーミファイして痛快に生きるには?
どのボタンを押したら、人生のチートメニューを
アクティベートできるか???
・・・みたいなことを、
ふだんから延々と考えるようになりました。
広告を考えるみたいに、
人生を生きることにしたわけです。
広告を考えるみたいに、
広告の仕事をすることにしたわけです。
MYオリエンシートには、
それこそなんでも書き込みました。
例えば、「仕事を受ける判断基準」
みたいなものまで、小霜さんが
語ってくれた通りに書いてあります。
「俺たちはクライアント・ファーストだ。
だが、クリエイティブにリスペクトのない
クライアントとは、金輪際付き合わない。」
ある日、失礼なクライアントの仕事を
ぶった切る宣言した小霜さんの言葉です。
その言葉がまんま書いてある
MYオリエンシートを常に見直してますから、
ぼくみたいなもんでも、
仕事はやっぱり選ばなきゃいかんなと
信念が生まれるわけです。
例えば「月朝までに〜」って金夜にやってくる
「クリエイターの人生を屁とも思ってない案件」や、
いくら成果を出せども出せども
「毎回謎に競合プレになる案件」も、
小霜さんに言われた通り、お断りするようにしています。
反対もしかりです。
「規模や予算や制約に関わらず、
依頼者が“本気”な案件は受ける。
それが俺たち自身の価値を高める。」
MYオリエンシートのてっぺんに書いてある
その言葉に心から納得しているので、
そういう“本気”の人に応えることだけに
残りの広告人生を使い切りたいなと思ってます。
がんばって作ったパンを、
“本気”で売りたいパン屋さん。
人生かけた事業を、
“本気”で軌道に乗せたい起業家さん。
事情を超えて、前例を超えて、目の前の
商品を“本気”でなんとかしたい担当者さん。
クライアントさんだけじゃない。
“本気”で成果が欲しい営業さん。
“本気”で突き抜けたいADさん。
“本気”で何かを変えたいコピーライターさん。
“本気”でもがいているプロデューサーさん。
“本気”の人を探しているあなたの
“本気”案件は、どんな制約があっても
お受けしたいなと思ってます。
「この広い世界で、“本気”の人が
自分だけに差し伸べてきた手は、
掴むのが運命。」
その通りに生き切った小霜さんの言葉を
見返していると、仕事がパンパンの時も
なんだか勇気がわいてきます。
というわけで、
令和の今なら一発アウトなパワハラノリで
ネチネチなじられた夜でしたが、
10年後のいま、脳汁出しまくりで
生活できてるのは、あの夜に書き始めた
MYオリエンシートのおかげなのでした。
ところで小霜さん、
あの日は なんて答えたら
機嫌なおってたんすか?????
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