リレーコラムについて

8Kコピーライターへの道

早坂尚樹

Hypocognitionという言葉をご存知だろうか。

 

ひらたく言えば、特定の概念を表す言葉がないために、

表現や認知がうまくできないことを言う。

 

少しわかりやすくするために、乱暴に具体的な話に置き換えてみたいと思う。

 

目の前に青系統の色があったとする。

 

ある人が見たら、この色は、インディゴだと答えるかも知れない。

 

でも、その言葉を知らない人に聞いたら、青色と答えるだろう。

 

もし、青という言葉を知らない人だったら、

それを明るい色や暗い色と表現するかもしれない。

 

つまり、言葉にできないということは、

自分の中にある、それより粗い概念でしか

物事を捉えることしかできないということなのだ。

 

そういう意味では、

何かを知るということや、

それを言葉にするということは、

世界を見る解像度をあげるということなのかもしれない。

 

僕自身、コピーライターという仕事を通じて、

ここで言う世界を見る解像度が、

少しはあがったように思う。

 

おそらく以前までは、

初期のインベーダーゲームぐらいの解像度をみていたのが、

スーパーファミコンくらいにはなってきた。

 

 

それでも、まだまだ粗い世界を見ているように思う。

トップランナーの先輩方は、

8Kとか、さらにすごい解像度で見ているように感じる。

 

「ここのピクセルのところに違和感を感じる」と言われても、

「あ、すみません。ちょっと全部つぶれちゃって同じに見えますね」という状態だ。

 

やはり本当のプロというのは、

みんながだいたい同じじゃんというところで、

確かな差異を出せる人のことなのだ。

 

言葉という誰でも使うもので、

他の人にはできないものを書くのだから、

そこの視点が勝負の分かれ目なのだろう。

 

だからこそ、

5年やそこらで、大成できる世界ではないのだと思い知った。

 

20年、30年という修行を経てこそ、

いける高みなのだと思う。

 

まだまだ先は長い。

 

しかも時代的には、

ある程度の解像度でいいじゃんという

声もどんどん強くなっていきそうな気がする。

職人的なコピーライターを目指す人も減っていくのかもしれない。

 

でも、やっぱり、

職人のような先輩ってかっこいいんだよなぁ。

 

どんな世界が見えるのだろう。

いつか、見てみたいものです。

 

 

―――

5回分、ありがとうございました。

カンヌが開催されているタイミングに

なぜバトンを受け取ってしまったんだ!と後悔しましたが、

そんな中でも、読んでいただけた方がいたら、うれしいです。

 

次のバトンは、最近お会いできていない、メンターの佐藤舞葉さんにお願いしました!

 

直前のお願いにも関わらず、快く受けてくださり、ありがとうございます。

よろしくお願いします!

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