リレーコラムについて

署名原稿!?

板東睦実

井口さんから、TCCの「リレーコラム」を書け、というメールを頂いて驚いた。

署名原稿じゃないか!?

自慢じゃないが、博報堂に入社してから42年間、匿名原稿であるコピーは書きまくってきたが、署名原稿は1度も書いていない。板東睦実、とかいう名前で書いた記憶がいっさいない。

署名原稿って、匿名とは全く違うものですよね。

コピーが職業だから署名原稿も面白いだろう、というのは根本的な間違いで、その逆です。

散髪屋がハサミを使うから仕立て屋としてもうまいだろう、というのと同じ。署名原稿は、「書きたいことがある」から書くものであって、お仕事や義理で書くものではない。

しかも、来週掲載、つまり3日くらいで書け、とか言っている!あり得んでしょう。

そこで、思った。きっとこのTCCリレーコラムというのは、そもそも「軽々しい依頼」なのだ、と。しっかり構成とか内容とかを吟味して、いいものを書け、というオーダーではないのだ、と。何だっていいから、軽々に書け、といっているらしい。

なので、考えました。どうせなら、「つまらないもの」を書いてやろう。どんなに短くても、途中で読むのがイヤになるような、そんなものを書いてやろう。僕だってそりゃ、コピーを書く時は、できるだけ興味をそそる、面白いものを書こうとしますよ。成功しなかったことの方がはるかに多いけど。だから、構成も考える。キャッチも工夫する。仕事だからね。広告はつまんないものは読まれないし、それだと何の効果もないから、得意先に申し訳ないし。

でも、そもそも文章を書くのに、「面白く書こう」とか「カッコいいものを書こう」などというのは邪念なのだ。「書きたいことがあるから書く」これが文章というものであって、そうでないものは読むに堪えない。今すぐ何か書かないとCDに怒られるから、などという理由で無理やり何かひねりだして書いちゃいけない。第一、言葉が出てこないでしょう。屑籠を肥やすだけでしょう。言葉というのは自分で勝手に出てくるもので、作り出すものではない。

僕には今、特に書きたいことはない。少なくとも、あと3日ではない。だから、できるだけつまらない、誰も読まないものを書こう。

そこで、ジャンルを決めた。どうせなら、自分がやたらと詳しい、得意な分野について書こう。今から勉強して、人が読んでためになるものなんて書ける見込みはないから、もともと好きなことについて書こう。

僕は食べ物について書かれた本が好きで、一時は、300冊ほど家に持っていた。300冊読んだ、という意味ではありません。読んで面白くなかったものは捨てた。図書館で借りた本は返した。そして、残ったのが300冊なのだ。実際に読んだのは1000冊近いと思う。この中から抜群にいいと思った本、何冊かのことを書く。これなら、すぐに書けるし、こんなにいっぱい読んでいる人は少ないだろうから、少々間違ったことを書いてもバレないだろう。見当はずれのことを書く心配も少ないだろう。素直に書けるし、何よりもきっと面白くはならないだろう。誰も読みたくならないだろう。

ということで、今週は祝日もあるのであと3回だけ、「食べ物の本」のことを書きます。というここまでで1回分もう書いてしまった。ケケケ。

明日から、どうぞよろしくお願いします!(←今日からじゃねーのかよ)

どうです。読みたくなくなったでしょう。

板東睦実の過去のコラム一覧

5627 2023.11.24 批評
5626 2023.11.23 お休み
5625 2023.11.22 最上級表現
5624 2023.11.21 同語反復
5623 2023.11.20 署名原稿!?
NO
年月日
名前
5805 2024.11.22 中川英明 エキセントリック師匠
5804 2024.11.21 中川英明 いいんですか、やなせ先生
5803 2024.11.20 中川英明 わたしのオムツを替えないで
5802 2024.11.19 中川英明 ドンセンパンチの破壊力
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