リレーコラムについて

2020年代の50道

松田正志

ちょっと昔「生年月日を捨てましょう。」という宝島社のコピーがあった。豪華な雰囲気の部屋に置かれた、これまた豪華なソファの上にお座りになっている美輪明宏さん。そのセンターにどかんとキャッチコピー。撮影時、このコピーを見た美和さんは「賛成」とおっしゃったと何かで読んだ気がする。とても共感できる素敵なコピーで衝撃を受けた。

 

あるときネットで、1950年代に撮影された若者数人が写っている写真を見た。顔はみんな若いのだけれど、服装がどうにもジジくさい。うすい水色のポロシャツと地味な茶色のジャケット。どうやら写っているのは大学生らしい。現代のおじいさんが着ているようなファッションが、当時の若者の間で流行していたという。そのネット記事の趣旨は「おじいさんは、おじいさんになったから年相応の服を着るのではなく、おじいさんが若い時流行した格好を今も着続けているだけではないか?」と書いてあって妙に納得してしまった。シャッター商店街で、シニア向けの洋服店を通りがかったときに、その店先に並ぶ古風な品々を見て「よくつぶれないな」なんて失礼な感想を持ってしまったりするけれど、案外繁盛しているのかもしれない。

 

僕は明日50歳になる。なんということだ。僕がイメージしていた50歳には程遠い。なんていいかげんな大人になってしまったんだと焦る。オリエンシートを見ていて、「ターゲット:50代男性」と書かれているのを見て「はいはい、オジン(死語)向けの商品ね」などと、どこかひとごとのように思いながら「あっ!ターゲット俺じゃん!」と我に返ったりする。けれどよく考えてみれば、その「50歳のおじさんのイメージ」とは「僕は子供の頃に接していた50歳くらいのおじさんのイメージ」のことだ。2023年の50歳のおじさんと異なるのは当たり前である。だから、これからも安心してベッドの中でゼルダの伝説で遊びながら“2020年代の50道”を邁進していきたいと思う。あれ、生年月日捨てきれてない…。

 

さて、この一週間、僕のダラダラと長いコラムにお付き合いいただいた奇特なみなさまに厚く御礼申し上げます。次週は電通九州の北川譲さんにお願いしました。今日のコラムは、北川さん作の福岡雙葉学園のコピー「子どもは、親が生きたことのない時代を生きていく。」を手掛かりに書きました。北川さん、リレーコラム初登場らしいのでどうぞお楽しみに。

 

松田正志の過去のコラム一覧

5639 2023.12.15 2020年代の50道
5638 2023.12.14 やばい講座
5637 2023.12.13 移住は幸せか?
5636 2023.12.12 チー牛の伝説
5635 2023.12.11 ゾワワな弟子
NO
年月日
名前
5805 2024.11.22 中川英明 エキセントリック師匠
5804 2024.11.21 中川英明 いいんですか、やなせ先生
5803 2024.11.20 中川英明 わたしのオムツを替えないで
5802 2024.11.19 中川英明 ドンセンパンチの破壊力
5801 2024.11.18 中川英明 育児フォリ・ア・ドゥ
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