CMプランナーという人たちは。
佐藤雄介くんは、ガンダムの切り身である。
ぼくのなかではそうなっている。
もうずいぶん前のことになるけど、
ある競合プレゼンにむけた最初の打合せのとき、
雄介くんが出した企画の一案目が、
「ガンダムを切り身にして売ります」というものだった。
おもしろいだけでなく前段もしっかりしていた。
つい筆がのってと言いながら、
ガンダムの制作会社であるサンライズさんを説得するための手紙まで書いてあった。
そのあとに続く案も、どれも素晴らしく、どれを提案しても喜ばれそうで、
どれに決まっても話題になりそうだった。
全部で何案あったかは忘れたけど、
企画書の紙の束の厚さは2センチはあった。いや、3センチはあった。
企画の多さでいえば、尾上永晃くんもそうだった。
10年くらい前。その頃の尾上くんは、
まだクリエイティブに転局してきたばかりだったので、
内側に秘めていたありったけの思いを吐き出したのだろう。
その打ち合わせが終わったあと、CDだった澤本さんが、
「あんだけ持ってきたやつ、はじめてみた」とぼそっと言っていた。
ぼくはぼくで、このときの尾上くんから、
この先立派になりそうな気配を感じ取ったので、
尾上くんには優しくしておこうと思った。
今西塾でどーんといった大石タケシくんもえらかった。
オリエンのときは「いやー最近忙しいからなあ。どこまでできるかなあ」
と弱気な伏線を貼っておきながら、
次の打ち合わせには大量の企画を持ってきていた。
ご両親が中村雅俊ファンだったの?と一度聞いてみたいけど聞けずにいる
栗田雅俊くんも、毎回10案近く持ってきていた。
同期の岡部将彦くんは、
一回の打ち合わせで10案をノルマとして自分に課していると言っていた。
ヘンテコなCMといえばこの人、松村祐治さんの企画書も分厚かった。
その打ち合わせには若手も含めて4人ほどいただけど、
誰よりも分厚かった。しかも字コンテじゃなく絵コンテだった。
九州新幹線やポカリスエットでおなじみの正親篤さんは、
200案持ってきたことがあった。200枚の紙の束が配られたときは驚いた。
絵コンテもあれば、字コンテもあり、イメージを貼り付けただけの1枚もあった。
企画のとっかかりとしての1行だけが書かれた1枚もあった。
めくってもめくっても企画。あの束は宝物として大事にとってある。
最後の案は「森の奥で木が倒れる音がした。」という1行だった。
ちなみにそのときの商品は、カップラーメンの新商品である。
PERFECT DAYSまだ見れてなくてすみません!
高崎卓馬さんは、若い頃、広い打ち合わせテーブルを、
自分の企画だけで埋め尽くすことを目指したという。
まだ電通にいた頃の麻生哲朗さんは、
ある先輩によると、夜、帰り際に麻生さんを窓際のデスクで見かけて、
翌朝会社にいくと、同じ場所で、同じ姿勢で企画をしていたらしい。
同じ服だったから徹夜したんだろうと言っていた。
CMプランナーたちは、わずか15秒、30秒のために、
いったいどれだけの時間と労力を注ぎ込むのだろうか。
ほんとうに尊敬する。
コピーライターが企画すると説明的になりがちなものを、
CMプランナーは伝えるべきことをしっかり消化しつつ、
エンターテイメントに仕立てていく。真似できないといつも思う。
そしてコピーを書いても上手なのである。
CMプランナーたちは、「仮に書いてみたんですけど」などと言いながら
企画といっしょにコピーを書いてくるけど、
もうこれでいいじゃん!ということが多くて、
コピーライターはうんざりする。
(つづく)の保持荘太郎くんなんて、
「いちおうコピー書いておきましたが、
ここは上田さんがすばらしいコピーを書いてくれると思いますので、
よろしくおねがいします」なんて余計なことを言ったりするから、
コピーライターは笑うしかない。
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