体系化の罠
「インプット、どうやっていますか?」
新入社員や若手から最近よく聞かれる質問。みんな、どうやっていますか?
僕の場合は体系化というものを、あんまり信用していない。というか、自分でうまく扱えたことがない。
例えば、SNSに投稿された企業に対するいち意見を、100倍にスケールアップして看板に掲出しました!的な企画を見た時、「ふむふむ、巨大にすると面白いんだな」と、手法だけを見て「#巨大化」というカテゴリをつくり、自分のアイデアの引き出しにしまっておく。
そうして、綺麗に整理・体系化されたたくさんの引き出しを開きながら、いざ企画をしてみると、不思議とそれらしい形にはなるけど、企画になっていない予感がする。
どんなクライアント、どんな商品でも、巨大にすることはできるけど、何かが圧倒的に足りてない感。案数だけは稼げるけど、先輩には流されそうな嫌な予感。無意味に大きくなっただけの商品を見て、冷や汗が出てくる。
たぶん、巨大化という手法にインパクトはあっても、そこに新しさはなくて、「個人の意見を大切にする企業態度を示すために、小さな声を巨大な媒体でとりあがる」という文脈がセットではじめて巨大化に意味があるからだ。
じゃあ、インプットをどうしているのか。僕は、世で話題になっているもの、自分がいいなと思うもの、逆にあんまりよくないなと思うものも、その理由を言語化するとき、綺麗にまとめすぎないようにしている。自分が企画時に扱いやすい抽象度に、言語化のレベルを合わせていると言ってもいい。
企画や表現のへそを見つけることのほうが大切だから、無理に1ワードにしないし、カテゴライズをしたりもしない。
その分、引き出しとしては、索引のような便利なものは成立せず、ふつうにめちゃくちゃ忘れていくので、なるべく誰かに話すことで頭に定着しようと試みる。
と、ここまで書いて、このコラムもただの体系化のひとつになっている気がしたので、以降、インプットの生データを残しておこうと思います。
※『関心領域』という映画について、ネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。
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⚫︎ADのK先輩の場合
自分:関心領域見ました?
K先輩:うん
自分:よかったですよね。映像で見ているものと流れている音がまったく違って、セットでひとつのメッセージや体験になるという
K先輩:音の映画だから映画館で見る意味があった。あと、人が死んでいる隣で咲く花は綺麗なんだなと思った
自分:確かにー。木々の豊かさとか、川のきれいさとか、自然は人間に無関心って部分も対比的に残酷さを煽っていた気がしますね
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⚫︎CDのO先輩の場合
自分:関心領域見ました?
O先輩:見ました。
自分:見ているものと聞いてるものが全く違って届くというのが、体験として余計に考えさせられましたよね
O先輩:よかったよな。(劇中で)帰っちゃったおばあさんの気持ちがわかる
自分:確かに。あの人がいることで、関心領域の違いが出ているのか・・・全員無関心じゃないというか
O先輩:あれ見ちゃうと我々の仕事の関心領域についても気になっちゃうよね。商品が何かの悲劇を起こしちゃいないかとか
自分:やろうとしていることのどこに対立意見があるかわからないとケアができないですからね。でもあの映画は気づいているけど無関心って話ですよね。意識的無関心。
O先輩:そうね。麻痺に近いけど。意識的無関心はいろんな瞬間で起きてそう。たとえば戻しを休日前に出すことで誰かが休日働くよなとか
自分:たしかに仕事にもありますね。関心領域。Oさんはどっちかというとテーマに反応したんですね
O先輩:手法ももちろん好きよ。家にカメラいっぱい置いといてドキュメンタリー的に撮ったっていうのはなるほどなあと思った
自分:そうなんですねあれ
O先輩:あとグレイザー監督はレディヘだったりアンクルのPVだったりで、ある存在とそれに対する無関心さの対比みたいなのを描いてて、関心領域ではなかったけどその出逢う瞬間はカタルシス生むんだなとも
自分:なに言ってるかもう全然わからないのですが、いま誰と誰が出逢いました?
O先輩:PVみてちょ〜(リンクもくれた)
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以上、インプット生データでした。
人に話すことに利点はたくさんある。
自分が感じた面白さを誰かに伝えるプレゼンの訓練になる。それは、自分の企画を面白く伝える訓練につながる。
自分が感じた面白さと、他人が感じた面白さが、どれくらいズレているのかを測ることができる。それは、企画時に大切だと言われる、世の中と自分が重なる部分のすり合わせになるのではと思う。
あと一番大きいのが、新しい角度から視点をもらえること。効率の時代、インプットに時間が割けなくても、ひとつのものを見て、学びの質が2倍にも3倍にもなる。
みなさんもぜひ。
何か面白いことがあったら、僕にも教えてください。
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