リレーコラムについて

突然だが、

大塚久雄

スコピーの鈴木さんから
バトンを受け取りました、
株式会社ヒサオ・オオツカの大塚久雄です。
※本当の社名です。

電通から独立して
今月末で2年になります。
※鈴木さんの「個人事業主日記」は
欠かさず読んでいます。

突然だが、
子どもの言葉には
ハッとさせられることがある。
※ここから文体が変わります。

うちにも5歳になる娘がいるが、

 

「一兆歳まで!」

 

これは半年ほど前に彼女が言った言葉だ。

意図の前にまず字面が良い。
短く、読めるけど
見たことはない言葉である
ちょうどいい違和感。
親バカがはじまる。

この言葉(コピー)は
こんなやりとり(コンテ)の中での
決め台詞だった。
——————————————-

〇リビング

そこに父親(43歳)と娘(5歳)。
娘が可愛くて
仕方ないと言った様子の父親。

父親「今日もかわいいねー。
でも、〇〇ちゃんも
いつかはパパより友だちと
遊ぶようになるんだよね
(途中から独り言のように)」

娘「(不思議そうに)え、ならないよ」

父親「いや、友だちとも
遊ぶようになっていいんだけどね。
じゃあさ、
何歳までパパと遊んでくれる?」

娘、難しい顔で
何かを数えるように首を揺らす。

娘「・・・一兆歳まで!」

父親、思わず笑いつつ、喜ぶ。

———————————————

これがCMなら
このあとどんな商品や企業名が
出てくるかは分からないが、
「一兆歳まで!」という言葉に
私はとてもハッとさせられた。

コピーはたいてい何かの言い換えだ。
この場合は
「ずっと一緒にいる」の言い換えになっている。

だが「ずっと」は
父親である私が願っていることではありつつ、
子どもはいつか巣立っていく、
つまり「ずっと」は無理だと
分かってはいるわけだ。

それを
絶対に誰も生きることのできない年齢である
「一兆歳まで!」と言い換え、
強く言い切ることで、
無理なことを願う私の気持ちと
見事にシンクロする。
理解や慰めになっている。親バカはつづく。

おぼえたての一番大きな数字である
一兆を頑張って使った点も、
その本気感を見事に演出している。
と、親バカからバカ親へと
移行しつつある私であるが、

しかしこのコピー、
仕事で書けるかというとなかなか難しい。

「一兆歳まで一緒にいる」は大げさすぎる嘘だからだ。
「私たちは、一兆歳まであなたとともに。」
とは書けない。
広告は企業やサービスの約束だとすると
嘘は書けない。本気であってもだ。

でも、普段の言葉には
嘘だと分かっていても伝わる気持ちがある。

嘘と願いは似てるから。
本気であればなおさらだ。

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