リレーコラムについて

不眠症のコピーライター

松下武史

すいません。
最終日のコラムが遅くなってしまいました。
やっと出張から戻り、ひと息ついたところです。

取材とかロケとかは嫌いなほうではないんだけど…。ビジネスホテルも連日となるとつらいものがあります。ベッドが半分以上の面積を占めているような、典型的なシングルルームだと、落ち着き場所も見つからない。それでなくても、普段からあまり寝付きのいいほうではないだけに、この数日間、満足のいく熟睡ができませんでした。

昼間の移動時間は、もっぱら昼寝に使ってました。
そしてまた、夜になると、スポンサー側からのお誘いがあって、繁華街へ繰り出す。食事のあとは、おきまりのコース。「では、もう一軒。近くに知っている店がありますので」ということで、ネオンまたたくラビリンスに迷い込んでしまうのです。
たとえば、クラブ(語尾を下げるイントネーションのほう)にて。「こちら、松下さん。東京でコピーライターをされているんだ」と紹介されたりすると、正面に座ってるママさんやら、隣に座っているホステスさんやらは、一斉に好奇の目をこちらに向けてきます。「え?!、どんなコマーシャルをつくってるんですかぁ」なんて聞かれても、みんながすぐに思い浮かべられるような最近の作品はないし。「じゃあ、タレントさんとかとも一緒に仕事したりするんでしょ」なんて言われても、そりゃ機会がないこともないけれど、タレントとコピーライターの係わり以外のなんでもないし。ましてや「私の親友で、コピーライターになりたいって子がいるんだけど」なんて相談されても、ありきたりな腑抜けなアドバイスしかその場ではできないし。そんな感じで煮え切らない返事を繰り返しているうちに、僕のテーブルからはひとり抜け、ふたり抜けして、最後は関係者と話し込んでいたりする。
ほんと、苦手なんです。この手の飲みかた。

意味ねぇー的な不毛なコミュニケーションに、すっかり気力を使い果たして戻った部屋は、うすら寒い。ユニットバスに湯をはって、裾の足りない浴衣に着替えて、テレビのスイッチを入れて、缶ビールのプルリングを開ける。
「また寝られそうにないよなぁ」と舌打ちをしながらひとりごと。
ここでMacを立ち上げて仕事でもはじめようものなら、ますます頭がグルグル回って、眠りの世界から遠のきそうで…。
すいません。週末のコラムが遅れてしまった言い訳でした。

一週間、おつきあいいただきありがとうございました。
来週は、吉田早苗さんの出番です。
吉田さんと僕は、何を隠そう「夜明けのメール」の仲です。
僕が眠れずにいるころ、吉田さんは起床していたりするそうです。
では、吉田さん。よろしく!!

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名前
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