まひについて
わたしはまひしている。
最近、よく思う。
ちょっとの距離にタクシーを使ってしまう。
ビールを平気で残してしまう。
ごちそうしてもらいながら、ごちそうさまの一言を忘れる。
モラルの話ではない。
いや、モラルの話なのだがそれ以前に自分が不感症になっている
のではないか、つまり、きもちいい〜!を感じとる能力の低下により、
すごく損をしているのではないか。
という、あさましい話である。
会社に入ったばかりのころ、
タクシーに乗ることが、それこそ子供が「のりもの」に
乗るみたいに嬉しくて、特別なことだった。
「空車」の赤い文字を見つけるとわくわくした。(本当です)
ビールを残すなんて、お酒に失礼だと思った。
(これは今も気持ちは変わらないんだけどね)
人におごってもらうと、何かこう、落ちつかず、
どうしたらきちんとお礼ができるかを自分の頭で考えた。
(結局、いつも「ありがとうございました」しか言えなかったけど)
そして、なにより。
ここからが仕事の話になってしまうのだけど。
山のように書いたコピーの中の、ほんの一箇所、ほんのちょっと
ほめられただけで体がカッと熱くなるようなあの気持ち。
先輩が書いたキャッチコピーの下に、自分の書いたボディコピーの
かけらの形跡があるのを朝刊で確認したときの、よろこび。
同じ新聞をキオスクでたくさん買った。キオスクのはしごまでした。
はじめて自分の書いたコピーがそのままカタチになったときの
はれがましさ。(たしか手のひらに入るくらいの小さなチラシだった)
わたしはまひしている。
最近、よく思う。
とりあえず、ビールを残さないことから始めよう。
「ごちそうさま」を忘れずに言おう。
どんな仕事でもあのドキドキを失わないようにしよう。
タクシーはやっぱり乗っちゃいそうだけど。
だって寒いんだもん。
風邪が流行っています。
みなさんも、気をつけて。ではまた明日。