思い出のピンナップ・ガール?
黒須治
思い出のピンナップ・ガール?
「いいものは、いい」
80年代は折りからの“広告ブーム”もあって私もフツーのディレクターとなり、地道ながらも本の2,3冊は出し、ごくまれにコマフォトに載るくらいのことをしておりました。
そんなとある日会社(博報堂)の作品ボードミーティングに出席する機会がありました。メンバーはクリエイティブ・ディレクター以上で当時は宮崎とか戸田、安藤といった論客ぞろいで、その日は“たまには若い人の意見も聞こう”とかいう趣旨で私も呼ばれたわけです。座長に取締役もいる中でCFを上映し、続いて自社作品の優劣を討議するという、けっこうおごそかで、自分も何か気の利いたことを言わなくちゃと思ってしまうような雰囲気の会議体です。
終わりかけたころに“きょうゲストの黒須君もひとこと”と司会者から突然のフリ。私は(壁に張り出してあるど派手なポスターを見ながら)この際だから言ってしまおう的な気持ちで、
「広告っていろいろだなあと思います。ここにあるような、コンペの会場とかで目立つ作品と、実際にそんなに話題にはならないけれどターゲットはしっかりと捕まえているような作品と。そういうものの評価はどうなんでしょうか。」
すると間髪置かず返ってきた言葉が
「黒須、それは違う。広告は、いいものはいいんだ。」
それを言われたら何も返せない。ずるいなあと思った反面、それから年月が経つほどにその言葉が私の中で大きくなっていったのも事実です。いい広告とは何か。答えはもちろんいろいろなんですけど、安易に出発点に複数のモノサシを置かないほうが良くて、厳しい、いいわけのきかないひとつのモノサシをイメージしながらそういうものをいつか作ってみたい、そんな気持ちが無いとこの業界にいてもきっとつまらないんじないかなあ。なんてことをこのごろ思います。
ちなみにその取締役は、先日会長になった東海林です。
(この項、以上。)
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