リレーコラムについて

ひとの目、自分の目。

忽那治郎

 ホンダ・ラクーン。愛車である。眞木さ
んは、朝、颯爽とベンツから降り立つが、
僕はラクーンを、股から抜く。

 以前は、モペット(トモス。ちっちゃな
原付)で通っていたが、少しは運動しろ、
と体に告訴されたので、被告としては自転
車でもこいで情状酌量くらいに持ち込もう
かな、と。健康管理。ではなぜ電動アシス
トなのか。矛盾。でも、もともと事務所の
を借りてるだけで。確かに急な坂多いし。
ホントに楽で。言い逃れ。運動効果のあり
やなしやはともかく、自転車はやっぱ気楽
だ。警官気にする必要もないし。信号も適
度に逃れられるし。

 問題は、その見てくれなんだな。ラクー
ンはコンセプトからして、バリバリのママ
ちゃり。ラフな格好で乗ってても恥ずかし
いが(実は恥ずかしいと思っていない。こ
れがほんとの問題)、スーツなんか着込ん
でたら、なおさら。

 昔、田舎でロック少年をやってた頃。キ
ース・リチャーズよろしく豹柄のジャケッ
トを着て、フェイクファーのコートを羽織
り、ギターをけだるそうにかついで、全身
の毛穴から精いっぱいの倦怠感を噴出しな
がら、乗ってるものがスポーツサイクル、
みたいな。ロックにスポーツサイクルは、
必要ない。後日、友人に指さされ恥ずかし
くなって、やめた。自転車を、である。田
舎は狭い。でも東京は広い。だから油断す
る。どーせ誰もみてないぞ、と。「毎朝バ
ス停の前を風のように爽かに駆け抜けるあ
の人は誰かしら?」そんな馴れ初めがある
かもしれないではないか。 

 ない。田舎に帰るか、治郎。

 そもそも自転車通勤ごときで、運動した
つもりになろうというのが、浅い。あるい
はせこい。いっそ歩けばいいのかもしれな
い。

NO
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