アクロス・ザ・ボーダーライン
1990年以降は暑い土地の音楽ばかり聴いていた。
ブラジル、メキシコ、キューバだ。キューバの
音楽はボレロもルンバもメキシコ、アメリカ経由で
入ってきたので僕たちの年代にはポップスだ。
しかし、ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブを
見るまではイブラハム・フェレールなんて
知らなかった。レコード会社はキューバの
ナッキング・コールと言っていたが、それは
誰に聞いたってベニー・モレのことだろう。
「コモフェ」を聴きくらべればわかる。
ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブのオープニングの
アムステルダムのコンサート、海辺のホテルで
ライ・クーダーが弾くボレロ、ライとホアキンが
サイドカーで走るオールドハバナ、舞台裏から
映したカーネギーホールのステージ、
そのすべてがSONYハンディカム!に感動し、
東京公演に行った。コンサートはライ・クーダーと
関係なく、映画とステージのあまりの落差にめげ、
当分、キューバ音楽とは縁を切ろうと思った。
そこで、1980年のライ・クーダーにもどり、
「アクロス・ザ・ボーダーライン」を聴く。
いまあらためて聴くと、歌詞がとてもいい。
BROKEN PROMISE LAND
CHANGE YOUR MIND
THE RIO GRANDE
少なくともキーワードが3つある。
リオ・グランデの流域をさまよわなくても
人生は哀しいものだ。
アクロス・ザ・ボーダーラインは、1980年に
「パイオニア ロンサムカーボーイ」のCMの
ために制作した。ライ・クーダーの作詞・作曲で
CMには20年前の本人が黄色いアロハを着て
出演した。彼のギターも歌もシンプルで、
それだけに風のように孤独や哀しさが
聞こえてくる。その後、エルパソで撮影した
映画「ボーダー」(ジャック・ニコルソン、
ハーヴェイ・カイテル、ウォーレン・オーツ)の
タイトルソングとして再録された。現在、CDで
発売されているのはこのバージョンで、
音がやや複雑になり、女性コーラスが入り、
歌い方もヘビーになっている。映画のスクリーン
サイズに合わせたアレンジなので、CMバージョン
の方がずっと気分だった。
昨年の暮れ、友人のスティーブン・ヒロハマから
THE ・-10 CHRONICLES
(BACK PORCH 72438-48991-2-7)というタイトルの
CDが届いた。インターステーツ10のロードソングで
ロス – アリゾナ – ニューメキシコ – テキサスの
景色や風土をイメージした歌が綴られる。
そのテキサスにアクロス・ザ・ボーダーラインが
歌われるのだけれど、メレディス・マーシャルと
女性シンガー(ロス在住だという)が、クールで、
ボディブローのようなパンチがあり、
とてもよかった。アコースティックギターをはじめ、
アコーディオン、マンドリン、パーカッションも
淡々としてヴォーカルとの距離感と一体感
(矛盾してますね)がみごとだった。
カバーバージョンに引かれるのは、
自分が歳をとったことと無縁ではない。
秋山晶の話を5日間、聞いていただいて
ありがとうございました。
22日(月)は、箭内道彦さんが登場します。
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