はとおじさん
勝ち鬨橋のたもと
水辺のとあるベンチにたくさんのハトがいます。
餌があるわけでもなし、なぜか一カ所に
たむろするので、毎朝気になっていました。
3時間ほど寝坊したある日の午後
言い訳すら浮かばずに途方に暮れ歩いていると
いつもの3倍のハトがばっさばっさと大騒ぎしているではないですか
美味いか?美味いか?
ものすごく親密な感じでハトとお話しているのは、
不思議な服装のおじさん。
背中の真ん中から上にかけて2トーンに小花柄が。
よーく見たらハトの足跡だったりするんですが、
まあ、 とにかくうれしそうにお話しています。
ハトたちもかなり慣れた様子で
かつては男前だったであろう、おじさんの膝の上には3羽、
頭の上に1羽、そして足もとには20羽以上がくつろいでいます。
ありゃ、こりゃいてて、いてて、こらこら。
餌を、自分の頭の上にまでのっけておいて、
かなりの痛がりよう
そんな姿がなかなか面白かったんで、
しばらく見ていたのですが、
どうみても、気休めに言葉を発している訳ではないようで、
すごくナチュラルに会話をしているのです。
慌てないの!
仲良くッ。
と、そのうち、パンくずを横取りしたり、
いやしく食べ争うハトたちを叱りつけはじめました。
順番ですッ。順番って言ってんだろこの野郎!
ダメだッつってんだろ馬鹿野郎!
それでも言うことを聞かないハトに向かっては、
ブチ切れたトーンで説教。ハトに、説教。まじです。
私もそこまで怒っている人を見続けるほどの勇気も根気もなく、
くわばらくわばらと立ち去ろうとしたそのとき、
おじさんと目が合いました。
ザリッッ あっ
ザリッッ
ハトが食い散らかしたパンくずを踏みつけてしまったのです。
怒られるっ! 私は身をすくめました
おじさんはむっくと立ち上がり一歩前に。
足、どうした足!
ひいいい。心で「ごめんなさい」を10回くらい繰り返した後、
目を開けるとおじさんは、足をけがした様子のハトに向かって
餌をやっていました。
はあ。
スリルです。
かつて山の手線内で、見ず知らずの女性からいきなり帽子を
かぶらされた、あの事件以来のスリルです。
犬とか、猫とかに話しかけるのは見慣れていても、
ハトと本気で友達になっているおじさんは、きっと
この人だけだと思います。
もし、お時間があれば
晴れた日の午後、
何気ない感じでハトおじさんを訪ねてみてください。
きっとアナタも無視されますから。
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