松嶋菜々子系。
僕は顔も知らない女性と待ち合わせをしていた。
確実にわかっているのは、名前と電話番号だけだ。
彼女が約束の場所に着いたら、
僕のケータイが鳴るコトになっている。
そもそも待ち合わすことになったのは、
友達A男からの電話だった。
「紹介したいコがいる。
カミさんの友達で26才。
どちらかというと、
キレイ系じゃなくてカワイイ系。
藤原紀香じゃなく松嶋菜々子系らしい」
名前、連絡先、
そして「なにもかも会ってからのお楽しみ」、
ちと気になる言葉もついでにもらい電話を切った。
約束の時間2分前。
僕のケータイが鳴った。
振り返ると彼女がいた。
松嶋菜々子?
その上に「どこが?」がつく松嶋菜々子である。
「ニコッ」と笑うA男の顔が脳裏に浮かんだ。
「あのヤロー!」
心とは裏腹に、
ルンルン気分で予約しておいた店に僕たちは向かっていた。
「このコは悪くない。このコに罪はない」
そう自分に暗示をかけていたかもしれない。
うす暗い店内と、
イッキに3杯飲み干した酒のおかげで、
彼女はほんの少しだけ僕のタイプに近づいた。
話を無理やりはずませながら、僕は彼女に質問をした。
「誰に似てるって言われる?」
その答えによって、
A男、A男のカミさんの罪が軽減されるような気がしたのだ。
もし彼女が「松嶋菜々子」と言ったら、
A男夫妻は彼女を尊重したコトになる。
彼女が口を開いた。
「誰だと思う?」
なぜだかカチン!ときた。
「んー?誰やろ?んー?」
せっかくの作り笑いがゆがむ。
「んー?松嶋菜々子?」
彼女は満面の笑みを見せ、
ひとくちワインを飲み答えた。
「やっぱり?」
僕はA男という友達をなくさずにすんだ。
くだらない話しか書けませんが、
どーぞ、お付き合いください。
仲畑広告制作所 芳 谷 兼 昌
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