リレーコラムについて

神さまのイジワル。

芳谷兼昌

世田谷区八幡山に、
僕が4/人生を過ごした場所がある。
「明大アメリカンフットボール部合宿所」

グランドの真ん前に建てられた合宿所は、
朝起きて、チンと鼻をかむと、
ティッシュが砂で真っ黒になるほどの、
衛生面をかなり無視した木造2階建てである。
そこに、神さま(4年)、天皇(3年)、
奴隷(2年)、お客さま(1年)が一緒に住む暮らし。
下級生の頃は、たまったもんじゃない。

合宿所にはいくつかのルールがあって、
その中のひとつに「下級生は禁煙」がある。
つまり天皇になるまで、
合宿所の中で堂々とプカプカできないのだ。
僕たちが奴隷の頃は、
離れの洗濯場が喫煙ルームだった。
愚痴や夢を語るのもその場所だ。
タバコに火を点ける前に、
ジャンケンで見張り役を決める。
用心はけっして怠らない。
練習後のイップクは頭がグルグルするほどうまかった。

ある日、事件が起こった。
見張り役が神さまに脅され、僕たちを見放したのだ。
「動くな!ハイ、そのまま!」
天の声とは思いたくないドスのきいた声。
隣のA男はくわえタバコでフリーズしていた。
彼の手には汚れた神さまのブリーフが握られている。
僕はあわててタバコを地面に投げ捨てた。
が・・・・・・・・・・コロン、コロン、コロン。
意に反するように、
幾度かのバウンドを重ね先輩の前に転がった。
「ニヤッ」
神さまは、なんてやらしい笑い方をするのだろう。
次の日の練習、
僕たちは坊主頭にされ、いつもの倍を走らされた。

そんな合宿所も建て直されてもうない。

           芳 谷 兼 昌

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