まずくなったお弁当。
このコラムは新幹線の中で書いている
はずだった。
19時を少し回った頃、
僕は会社を出て東京駅へ向かった。
夏休みと3連休前とが重なって、八重洲は人、人、人。
何本か見送れば指定席に座れるだろうと長い行列に並んだ。
ふぅ、やっと窓口。
「新大阪まで男前1人」
鼻でさえ笑ってもらえず、
「本日はすべて満席でして・・・・」と、つれない返事。
しょうがない。
「自由席でさみしく男前1人」
シカトされた。
改札を抜けお弁当を買った。
僕はホームで駅員さんを探した。
何号車が自由席だか、わからなかったからだ。
最後尾16号車あたりでやっと見つけた。
「すいません、自由席って何号車ですか?」
「ニコッ」
なんで笑いやがる!その謎はすぐ解けた。
「1号車から5号車までですけど」
汗だくになりながら、やっとこさ5号車まで辿り着いた。
その先の1号車までは、
自由席を争うライバルたちの固まりで進めない。
みんなドアが開くのを、今か今かと待っている。
絶対通路に座らない、と決め込んでいた僕に悪魔が囁いた。
「こんな時、ルールを守って並んでる奴はバカだ。
オマエは座りたいんだろ?
だったら6号車から乗り込んで先回りしちまえ!しちまえ!」
ナルホド!
僕は口笛を吹きながら、6号車のドアの前に並んだ。
うふふふふ・・・・・・先頭だ。
これで僕は座って行ける。
イタタタタタイ!
勘の鋭いライバルたちの視線が、
カラダのアチコチに突き刺さる。
そんなの気にしちゃ座れないも〜ん。
だけど待てよ、
僕は席を確保したときのライバル対処法を頭の中で考えた。
「みんな並んどるやないか!」と言われたら、どう答えよう。
「ニイハオ」中国人のフリしてトボケルのはどうか!
「僕、誰ですか?」あぶない人を演じるのはどーだろう。
そうこう考えていたら、
駅員が背後から回り込みドアの前に立った。
「ここは指定席の方のみ。
自由席の方はこちらから乗車できません」
アハハハハ・・・・、駅員さん、あんた面白いこと言うねぇ。
プシューッ!ドアが開いた。
イス取りゲームのはじまりだ。
それ、急げ!急ぎたい!そこ退いてください!
駅員が5号車へ唯一続く道を仁王立ちで防いでいる。
僕はモーレツに恥ずかしくなり、その場から走り去った。
悪魔のバカ!バカ!バカ!僕のもっとバカ!
今日はもう乗りたいけど乗れない。改札を出た。
おなかがグーッと鳴ったと同時に、
持っていたお弁当を思い出した。
八重洲地下街、ベンチを探すがどこにも見当たらない。
階段に腰を降ろし、包みをほどいた。
走った時に振り回したんだろう。
お弁当の中身が隅っこに寄っていた。
みなさん、やっぱりズルはいけません。
芳 谷 兼 昌
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