なごり
鵜久森徹
<火曜日のコラムを書き忘れたので、おわびに>
松茸ってお好きですか。意外と好き嫌いがわかれるよう
です。私の知り合いは「おがくずの臭いがして苦手」という
人もいます。今では韓国産の手ごろな値段のものもたくさん
出回っているので、昔ほど高価な印象はありませんが
それでもやっぱり秋の貴重なおいしさです。
食べ方としては「土瓶蒸し」が人気のようですね。
昨年、松茸をそのまま焼いたものを食べたのですが、
これはこれで香ばしくて、とてつもなく旨かったです。
小さな七輪に半分に切った松茸を乗せて炭火であぶる。
頃合いを見計らって、店の方が松茸を裏返すタイミングを
教えてくださるのです。次第に、独特の香りが
目の前に漂ってくると、まだ焼けないのかと思わず
箸を伸ばしそうになってしまいました。忍耐、忍耐。
もちろん、この時の松茸の味は格別だったのですが
それ以上にうまいなぁと思ったことがあります。
私が松茸を食べたのは11月の中頃。
旬を過ぎて、松茸はもうおしまいの時期です。
この日、店の人は、松茸を運んできてこう言いました。
「なごりの松茸でございます」
なんて旨そうな言い方でしょう。
「なごり」以外にどんな言葉がいいだろうと考えたのですが
「おしまい」ではそのまんまだし、「お別れ」では辛い。
「惜別」では難しい。「お古」ではイヤでしょ。
「おませ」でもピンとこないんですよね。
う〜ん。
いい店って、旨そうに見せるのが上手ですよね。
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