5人の広告作家 その1
●広告は基本的には説得です。…・・そして説得は、科学ではなく、アートです。
ウィリアム・バーンバックの有名な言葉です。書かれた言葉ではなく、スピーチのなかの一節だそうです。「5人の広告作家」の奥付を見ると、昭和41年3月25日発行 東京コピーライターズクラブ訳/編、とあります。アメリカの「アド・エイジ」という雑誌に連載されたインタビュー記事を東京コピーライターズ・クラブの中堅会員たちが「輪読」し、その翻訳を単行本として出版した、と西尾忠久さんがあとがきに書いています。
バーンバックの言葉にもどると、最後の「アートです」というところに、当時しびれたような気がします。アートかあ。なんかよくわからんが芸術かあ。しかし、しばらくまえから、私はちがう意味ではないかと考えるようになった。フランス語でアルチザンは職人です。アートにも芸術のほか、技術・技能・技巧・熟練・術策という意味がある。バーンバックが言わんとしたことは、説得するときには、客観的な事実を論理的に並べればいいのではなく、それを魅力的に刺激的に伝える技巧が必要なのだ、というわりとあたりまえのことではないか、アートというのは観念ではなくて、あくまで目に見えたりカタチをもったりしている具体的なものをつくりだす技術のことなのだ、この場合、というぐあいに。
●あるひじょうに大きな見込みクライアントがこんなことをいったことがありました。「もしこの大きさのロゴをここへおいてくれと私がいったらビル、君はなんというかな?」この答えには1,000万ドル以上がかかっていましたが、私は答えました。「どうやら私たちはあなたに向かない代理店のようですね、といいます」
●クライアントが私たちに基本ルールを与えることを私たちはけっして許しません。それはクライアントのために悪いと私たちは思っています。それはこういうことです。私たちはけっして製品についてはクライアントとおなじには知ることができないと考えています。(中略)それとおなじことで、彼は広告について私たちとおなじように知ることはできないのだと私たちは確信しています。(中略)私たちは、彼のとは別の技術を必要とします。彼はその製品をつくり、マーケットする技術を必要とします。私たちには、それを消費者に伝え、説得する技術が必要なのです。それは二つの違ったものです。まったく別ものなのです。
最初に読んだときは、ほおそんなもんかい、だったが、仕事をはじめて数年経つと、彼の言葉がいかに傲岸で美しいか理解するようになりました。死ぬまでに私も一回「けっして許しません」とお得意に言ってみたいです。
ADK 2CR 迫田哲也
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