Jiro
「Jiro、今まで黙っていて悪かった。隠していたわけじゃないし、おまえもそろそろ、うすうす感づいていたかとも思うんだけれど、実はね、おまえのほんとうのお父さんは、私じゃないんだよ」
時々、私は事務所のデスクの下の足元に寝そべっているJiro(黒のラブラドール4歳半)に話しかけてみる。いつも反応はなくキョトンとしているのだが。
このセリフは僕のオリジナルではない。ドッグフードの広告にのった投書(たしか四国の人からだった)の真似である。なんて癒される会話だろう。毎日のように僕は真似をしてJiroに囁いている。
しかしJiroは、そんな複雑な日本語より、次の一言の方が聞き分けられるし、複雑な血縁関係なんかより、もうんと関心がある。
「サンポ」
この単語には、ピクッと耳をそばだてる。立ち上がる。
「Jiro、そろそろお父さんをサンポにつれていってくれる時間だよ」
(当然彼が僕をサンポさせて呉れているのだ)
Jiroはもう、ドアの前まで行って座っている。
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