上新庄の青春・激流篇
地獄の1回生も終わり、2回生に。本当は3回生が幹部なの
ですが、3名しかおられないので、僕たちもいきなり幹部で
す。声もようやく詩吟らしくなってきました。
いわゆる「こぶし」がころんころん回るようになってきたの
です。元ちとせもびっくり。
さて、学生吟のモットーは「迫力」。合吟のために大人数の
新入生が必要です。「男らしい」勧誘の甲斐あって、なんと
16人もの新人が入部してきました。
あれは確か5月のこと。全国学生詩吟連盟(略して全吟連。
銀行じゃないですよ)関西支部の新入生歓迎コンパが京都の
龍谷大学でありました。
「他の大学に負けるんやない!関西に経大ありと言わせるん
や!」と気合を入れます。
当時の新入生のコンパの作法は、紙コップと酒を持って、と
にかく先輩たちを回ること。たくさん回った奴がえらい。自
分の席に座りっぱなしだったり料理を食べてはだめ。しかも
先輩から注がれた酒は一気に飲み干すこと(よい子のみんな
はぜったいまねしないようにね)とまあ、えらいことです。
一生懸命頑張ったうちの新人たち。当然16人全員がつぶれ
てしまいました。「どやって上新庄まで連れて帰ろうか?」
とにかく九条から京阪で四条まで上がり、鴨川のほとりで休
ませることにしました。なんとか全員を河原に下ろして一息
ついていると、なにか川面に黒い影が流れて行きました。
「あ!こりゃいかん!」
よく見ると、なんとつぶれた新人の一人が川に落ちて流され
ているではありませんか!(よい子のみなさんはぜったいぜ
ったいまねしないでね)
あわてて川から救出して、再び河原で甲羅干しに。と、今度
は何やら真上が騒がしい。
ふと見上げるとなんと!四条大橋が黒山の人だかり。中には
カメラのシャッターを切る外国人観光客の姿まであります。
そりゃそうですよね。時代錯誤の学ラン集団が、鴨の河原で
酔いつぶれるわ川に流されるわですから。
(警察に電話されたらどないしょ)
と焦りながらも、ここでふつふつと「目立ちたがり魂」が。
「ぎょうさんお客さんいてはるから、唄でも歌おか!」
と、僕らは歌い始めました。
その唄とは、「蒙古放浪」とか「武田武士」とか「男一匹」
とか「男の酒」とか。みなさん知らんですよね。ずっと昔の
先輩から歌い継がれたバンカラ系ミュージック。
歌い終わると、橋の上から拍手をもらいました。
(ああ!気持ちええ!)って、新入生大丈夫なんかい!!
(つづく)