上新庄の青春・暴走篇
新入生は無事に連れて帰りましたが、夏合宿で夜逃げされた
り、色々あって3分の1ほどやめました(そらそうやろ)。
そうこうするうちに、僕も3回生。本物の幹部です。かつて
の福島さんと同じ副将になり、先輩から受け継いだ竜虎の刺
繍入りの学ランに高下駄を鳴らして闊歩する毎日でした。
事件はまたまた京都で起きました。
例の全吟連関西支部の総会に出席したあと、四条河原町を5
人で歩いていたとき。ふいに誰かがつぶやきました。
「ピンサロて、行ったことある?」
みんなが顔を見合わせます。
「ない。」
「よっしゃ!これから行こか!」
というわけで、一行の足は阪急の駅を越えて木屋町へ。
「呼び込みの立ってないとこがええらしいで!」どこで聞い
たか不確かな情報をたよりに「行ってまえ!」と入った、と
ある店。みんな一人づつBOXに分かれて座りました。
「いらっしゃい〜」と隣に座ったのは、母親ほどのおばさま
(お約束です)。「学生さん?かわいらしいねえ」そっちに
はかわいいがこっちにはこわいい。学ラン着て肩で風切って
たあの勢いは今いずこ。すっかり意気消沈して、わずか20
分ほどでお会計。
さあ、大変なのはここからでした。
「みんなで2万6千円です」「あれ?おれ金無いわ」「お前
は?」「おれ3千200円」「おれ671円」
誰かが金持ってるだろうと高をくくって入ったけれど、みー
んな無かったんです。
(やば!こわいお兄さん出てくるぞ!)
そう思った僕はそおっと下駄をぬいで逃げる用意。でも会計
がお姉さんで助かりました。
「今度はお金確かめてから入るんやで」「はーい」
小学生みたいに説教されただけで、許してくれたんです。
「やった!助かった!」
でも、もうひとつ、大変なことがありました。
「電車賃がない。」
1円玉まで払ってすっからかんの5人、どうやって上新庄ま
で帰るのか?まさか歩くのか?その時、誰かが叫びました。
「10円あった!」
ポケットの隅にひっかかっていた10円玉。これで誰かに電
話して迎えに来てもらおう!
「確か鈴木がきょう田舎から戻ってきてるはずや」
「でも、もし居らんかったら?」
「いちかばちかや!」
下宿の電話の呼び出し音が鳴る。誰かがとる。鈴木を呼びに
行く。「・・・・・・もしもし」
鈴木の声だ!
「やったー!」「ありがとう!」電話の向こうでわーわー叫
んでる声に、鈴木君、さぞかし驚いたことでしょう。
事情を話し、待つこと1時間。
夕暮れに煙る河原町の交差点で鈴木の姿を見た僕たちは、
思わず万歳三唱してました。
(ほんまにあほや)
というわけで、一気に書いてしまいましたが1週間のお付き
合い、ありがとうございました。
来週は今年新人賞を獲った、隣の席の小川勝己くんにバトン
を渡します。彼は今年のカンヌでもグラフィックでショート
リストに入るなど、今広島で(もしかしたら日本でも)最も
世界に近い男です。どうぞよろしくお願いします。