素人の仕事
サン・アド人
サン・アド初代の社長、山崎隆夫さんは、長らく三和
銀行の宣伝部にいて、のちにサントリーにヘッドハンテ
ィングされ宣伝の一切を任されたひとです。宣伝のプロ、
のはずです。その山崎さんが、こんなことを言っていま
す。「この人達は、広告界では、未だ無名であり、むし
ろ素人の集団であった」この人達というのはサン・アド
草創期の人達のことをさしています。「しかし、不思議
と皆が、アマチュアリズムを逆手にとってアカデミズム
や月並みに挑戦するという、反骨精神に満ちていた」と
も書いています。無名、素人、と呼ぶのは、へりくだり
でもなんでもなくて、むしろ、広告の素人だから面白い
広告ができるんだ、という自負の表明だったわけです。
山崎さん自身もじつは画家で、それも小出楢重や林重義
といった画家に師事したキャリアをもつ、会社勤めのか
たわらという次元をはるかに超えた本格の画家だった。
宣伝を宣伝の外側から見ることのできるひとだったにち
がいない、と想像します。
素人でいいじゃないか。いや、素人でなきゃだめなん
だ。素人のように新鮮であれ。そんな草創の思いは、は
っきりとしたかたちや言葉ではなく、会社の空気とか雰
囲気のなかで、個別の仕事の進み行きのなかで、暗黙の
うちに受け継がれてきたように思います。なぜなら、創
立19年目に入社した僕がサン・アドに学んだ、もっとも
だいじなことはそれなのです。広告の決まりきった約束
ごとを疑うということ。コピーらしいコピーでは伝わら
ないということ。伝わるかどうかいちいち確かめるとい
うこと。送り手ではなく受け手の目で見るということ。
ぜんぶあたりまえのことなんですが。
きょう、いや、日付が変わってしまったので、きのう、
ギンザ・グラフィック・ギャラリーで「サン・アド人」
展がはじまりました。10月30日までやってます。アマチ
ュアリズム。反骨精神。素人っぽさ。ほんとにそんなも
のがあったのか。あるいは、ほんとに受け継がれてきた
のか。確かめるいい機会です。僕も、他人の会社の仕事
を覗きにいくつもりで、来週じっくり見にいこうと思い
ます。あ、最後は宣伝になってしまいました。(古居)
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