下り坂2
若作りという言葉には単に若く見えるという意味だけじゃなく、多分に揶揄するニュアンスがある。作り、ってあたりがそうだ。ぼくは先日41になった。ひとには35くらいに見えると言われる。どんぴしゃ、若作りである。
こういう仕事をしていて、切実な生活感もなく、ネクタイもめったにしないとすると、まあそういう感想が悪意もなく持たれるんだろうなとは思う。外見は環境に左右されることが多い。ただ、たとえばたまーにおねーちゃんのついてくれるお店にいったときに、例の若く見える話しが出たとすると、最近こう思うのです。
オレはきちんと年を重ねて来なかったんじゃないか?
先日出張で八戸に行くことがあって、晩飯で寿司やのカウンターに座った時、店の御主人に(のちに同い年であることが判明する)こう聞かれた。
i田純一さんじゃないっすよね?
まあ、たまに似ていると言われることもある。顔のつくりは同タイプかもしれん。しかし本人あつかいされるほどのことはない。むこうの方がほんのちょっとだけ男前だ(そりゃプロだもん)ずっと年上だ。ちなみにぼくは彼に悪い印象を持ってない。不倫は文化だ、という発言も開高健や坂口安吾の口から出たのだとすれば、なるほど程度の評価は受けてたと思う。人物は知らない。彼の、それが無責任な偏見だとしても、イメージがぼくにあてはめられやすいことが懸念。彼こそが、もしぼくのその言葉に感じるニュアンスが妥当だとすると、文字どうりミスター若作り、なのだ。
作り、というあたりに揶揄する感じがあるんじゃないかって言ったけど、平たく言うと、おっさんなのにがんばってるねー、って感じ。若さに迎合している感じ。若い彼女のまえでは、ほんとは厚切りトーストにバターぬってたべたいのに、オーガニックな朝食たべる感じ(ちょっと違うか。これこそ揶揄。ごめんよ純一)
街の新しい風俗文化は、基本的に若いやつらのもんだ。街にでると下り坂の大人は、ふたとおりの対応をする。1、昔はもっとすごかったとうそぶく。2、その場に迎合する。ぼくは両方いやだが、まだ1の方がマシ。1がダメなことは歴史的に証明されているので、新たな恥をかかなくてすむ。
クラブ(踊る方の)のイントネーションはあきらめよう。ぼくも使っている。
ハコがすでに違うのだから。ディスコという言葉じゃなにも説明できないから。じゃ、カレシーはどうよ。カナリ-はどうよ。ちょうウザくなーーい?ってどうよ。マジヤバい、って言う大人って、マジヤバいよ。そういうやつ多すぎないか。使ってませんか?ご同輩のみなさん、だいじょうぶ?オレなんか最近無理して、なるへそー、とか言ってるね。
本質を判断して受け入れるなら、よい。擦り合わせもせずに、他者の文化にひれ伏すとは、バカ、情けない(相当怒っている)下り坂をゆく者として、見苦しい。自分から若作りしてどうする。きちんと年をとりませんと宣言しているようなもんだ。若さが魅力的であろうと、かつての苦い姿に重なろうと、いま世間にあるそれは、自分のことではないのだ。それはある状況にすぎない。それと自分の状況を照らし合わせるしかない。
と、自分に言ってみました。
このあいだジュンヤワタナベの、あたらしいパンツを買うために開店前から並びました。まわりは若い男の子ばっかりでした。お店のお兄さんに、買えて良かったですねと言われた時に感じた、ベリーライトな屈辱はきっと忘れないと思います。もうしません。
TAHITIがスタカンまんまだとしても、それを責めたりしません。OASISがビートルズのコピーバンドだなんて、言う方が大人げないと思います。すべては状況に過ぎないのです。もちろんそれらは、ぼくのために用意されたものとは限らない。ならばそーっと黙って、坂を下りていこうと思います。若作りの件ですが、ここ2、3ヵ月で、すこしふけたような気がします。
大成功?
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