営業
高松聡
僕は最近まで電通の営業だったんです。
クリエーティブで何年かやって営業研修に一年出てましたっていうのじゃありません。
生まれも育ちも営業。しかも16年間も営業。
去年TCCの新人賞をいただいたときもまだ営業。名刺にコピーライターと入ったのなんかつい先週のことです。(ホントです)そんなヤツがTCCのリレーコラムを今週書いているわけですから世の中捨てたもんじゃありません。そんなわけで僕のコラムは、クリエーティブ局にいるわけでもない電通の社員がCMの企画をしたり、コピーを書いたりするために悪戦苦闘した数年間についてです。
僕は某事務機器会社を10年以上担当してたんです。長くクリ担当の営業をしているとクライアントとクリの波長がどうしても合わないことに何度も遭遇するんですね。まあそういうときはクリのスタッフを入れ替えるとかしたほうがいいんだけれど、超大手クライアントじゃないとそうそうスタッフを自由には使い分けられないもんです。そんなときクライアントに内緒で自分で企画したり、コピーを書いたりしてみたのが僕のコピーライターデビューでした。これが意外にクライアントやCDに受けたり、いろいろと広告賞をいただいたりして、結構その気になってしまったわけです。
ビギナーズラックとはいえ、ちょっと自信もついてきて「営業とクリの二足の草鞋もわるくない」なんて思い始めてた時期です。なんせ「営業でクリ」だとオリエンがいらない。プレゼンのスケジュールで振り回されない。メディア計画も自分で作れる。と結構便利なんですね。
そんな夢も希望もあったある日、悲劇は突然やってきました。CDが「今度の企業広告は高松がコピーライターってことで最初からプレゼンしよう」と言ってくれたのです。ADもこの企画は高松が適任じゃない、と言ってくれたりして「よーしやってやるぞ」と力が入りまくりました。それまではクライアントには内緒でコピーを書いたり企画をしてたので、いわばゴーストライターだったんです。
キャッチコピーをCDに見せたら「抜群にいい」とか言われて、いざプレゼンに向かいました。CDが第一声を放ちます。「今回の企画は高松がコピーを担当します。」すると宣伝部長さんの顔が急に曇りました。「まあ、とにかく企画をみてください」とやや暗い雰囲気の中プレゼンが終わります。感想を求められた宣伝部長さんが放った言葉で、僕は叩きのめされました。「コピーはいいが、コピーライターが悪い。」キャッチコピーは是非使いたいが、コピーライターは変えてくれというのです。ちゃんとしたコピーライターをつけずに営業がコピーを書くなんて、うちの会社を馬鹿にしているのかという剣幕です。コピーが気に入らないならしょうがないと思うけど、キャッチを商標登録しておきたいとまで言ってるんです。それなのに僕がコピーライターではだめだと。
この日、僕はクリエーティブに転局しようと決意しました。
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