白い女と幽霊トンネル

なんでも富士急ハイランドには脱出するのに40分もかかるお化け屋敷が
できたそうですね。しかも人が驚かすやつ。もう、絶対ムリです、僕は。
あと最近「CRホラーマンション」というパチンコ台がデビューしまして、
あれは冗談抜きで打ってて怖いらしいですね。洒落にならないみたいですよ。
それくらいなら興味あるけど、あんまり怖い話は得意じゃないかもしれない。
でもせっかく夏なんで、今日は僕の知ってる一番怖い話を書きます。

僕の生まれ育った鎌倉という町は、それはそれは幽霊の話が多いところです。
やれトンネルを抜けるとフロントガラスに手の跡が付く、やれ霊園の横で
夜中に首無しライダーが走る、やれ夜中に夏休みの宿題をしてたら墓地側の
窓いっぱいに女の顔が映ってた・・・それこそもう、枚挙に暇がない。
僕の高校の卒業アルバムなんか、集合写真が心霊写真でしたからね。
ある男子生徒の顔の横に、着物の衿だけハッキリ映ってるの。怖かったな。

そんな鎌倉の、ある日の新聞。確か僕が中学生の頃だったと思うのですが、
地元の記事を載せる「湘南版」に、こんな見出しを見つけたんです。

「幽霊見たタクシー運転手、首吊り自殺」

記事によると、その運転手さんが「お化けトンネル」の名で有名な小坪の
トンネルを走っていたところ、道路の脇に白い裃を着た女が立っていて、
こちらをずーっと睨んでいたらしいのです。あわてふためいた彼は、すぐに
事務所へと戻り、仲間に報告しました。「本当に見た!」「本物だ!」と。

しかし同僚たちは「疲れてるんだよ」とか「あるわけない」と言って、
誰も取り合いませんでした。それでもその運転手さんは「絶対に見た」と
言い続けたのですが、恐らく誰もが同じような反応だったのでしょう、
ついには精神に異常を来し、そして首を縊ってしまったそうなのです。

僕はその記事を読んだだけでも「こんな話があるものか!」と驚いたの
ですが、しばらくして、もっと驚くべき記事が「湘南版」に載りました。

「小坪の幽霊、つかまる」

記事の内容はこうです。近所に住んでいた徘徊癖のある女性が、夜な夜な
白い裃を着てトンネルの横に立っていたところを保護された。おそらく、
先日のタクシー運転手が見た女性と同一人物であると見られる、と。

まったくもって不幸な偶然としか言いようがない事件ですが、
それもこれも小坪トンネルの祟りなんですかね・・・。

【用語解説:小坪のトンネル】
鎌倉市と逗子市をつなぐ、計3本のトンネル(往路と復路で計6本)。
地元民は「名越(なごえ)のトンネル」と呼ぶ人の方が多い気がする。
3本あるうち問題は2本目のトンネルで、工事をする度に祟りが
あるらしく、この2本目だけが改装されていない。真上は火葬場。
前述の「フロントガラスに手の跡が付く」トンネルもここである。

僕も高校の頃に尾崎豊よろしく盗んだバイクで肝試しに行ったのだが、
夜中の2時になっても何も起きず、「つまんねー、帰ろうぜ」と言って
帰ろうとした途端バイクのエンジンが全くかからなくなって、あわてて
押して逃げた経験があるが、あれはトンネルや霊の祟りというよりも、
単純に物を盗んだので罰が当たっただけだ、という説が有力である。