タイム。
三神くんからバトンを受けた星野です。
リクルート自体のコーポレートブランディングと社内広報をやっています。
18年もリクルートにいると、いろんな仕事をやらせてもらえましたが
最近思うのは、仕事にはタイムがある、ということです。
新人賞をいただいたのは1993年、ドラえもんの年鑑の年でした。
当時、求人広告の制作を担当していました。
特に新卒採用のクリエイティブをやっていたため
計画はすべて年度計画。毎年、秋から仕込みが入り、取材などあり、
年末から一気に各企業の原稿を作り上げ、夏すぎに決着がついて、
反省会。来期の動きを再構築します。
(その後、採用ツールのコンペなどに突入することもあり)。
新卒採用の仕事のタイムは、1年です。
同じ採用でもBingやとらばーゆなど中途採用のタイムは一週間。
週刊誌ですから、早くなります。毎週締め切りがあり
毎週、原稿を制作し、毎週、クライアントとともに効果に一喜一憂します。
1年とか一週間のタイムに慣れた体に、異変が起きたのは、
関連の出版社・メディアファクトリーのデザイン部に行った時でした。
メディアファクトリーでは書籍も出版していたのですが
任天堂やプレステのゲームソフトも出していました。
ゲームは、著作権者である開発者(著作会社)と、それをパッケージにして世に出す出版社がありますが
私は、その出版社側の立場で仕事をしてました。
一緒に仕事をした相手先に、ある社長さんがいます。
社長とはいっても数人でゲームを開発している学生サークルのボスという感じの人です。
とにかくすごくイラスト表現やコピー表現にうるさい。
ゲーム業界ではカリスマですが、詳しくない私にはただのガンコもんでした。
とにかく何でもこだわる。パッケージも取り説も広告も。
こだわって、こだわって、なかなか通してくれない。
しまいには全部自分で書いてくる。イラストも仲間で作り直してくる。
オレたちいらないじゃん、って帰り道いつも思ってました。
あるとき、その社長が言いました。
「ゲームって、一生に何度も作れないんだよね。だからこだわっちゃって。申し訳ないね」
ゲームの開発には時間がかかる。スジ考えて、仲間集めて、プログラムつくって、
チューニングして、バグとりして。世に出すまで早くても3年はかかる。
そんなことアタマでは、わかっていた。でも。
世に出て、ヒットすればいい。ヒットしなきゃ苦労が報われない。そう思うのが、A面。
B面では、ヒットすれば、続編とかカードゲーム展開とか延長戦が始まる。
いくら名作で殿堂入りしても最後には売れなくなって寿命が終わる。
ヒットしても、ヒットしなくても、いずれにしろ終わる。
その間、大ヒットであればあるほど、時間がかかる。
ゲームなんて年取ってそうそう開発できるもんじゃない。
新しいゲームをつくる人生の持ち時間はなくなる。これがB面。
その社長は二作目で大ヒットしてしまった。
年齢は40を過ぎていた。あと一生で何本ソフトを作れるのだろう。
下手すると二本作れないかもしれない。
小さい頃からゲームばかりやってきて、願いが叶って、でも多くてあと二本。
彼の残ったタイムは、一生に二度でした。
航空機の開発に携わることは、技術者人生において普通、二度はない。
でも私は、二度経験できて幸せだった。三菱重工でYS11を開発したある社長に聞いた言葉。
林業は50年の仕事。試行錯誤が一度しか出来ない。
小学校の時、荒川先生は、教えてくれた。
世の中には、案外、こんなタイムで動くものがある。
一生、というスケールではないにしろ、
企業のブランドづくりもタイムの長い仕事です。
秋山さんにつくっていただいた企業ステートメントのFollow Your Heart。
最近ようやくしっくりくるようになったと、ある事業部長に言われました。
おいおい、4年目に突入してようやく良さが伝わるのかいな、と思う反面、
4年前に描いていただいた器に、だんだん会社が合ってきたということかとも
思います。
(一方で、飽き性の私が、同じ会社でよく続いているものです)。
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