リレーコラムについて

変な電話

川村由貴子

私は三十路を超えたおばはんである。
しかもモテない。でもまあなんとか彼はいる。
ああ、この恋だ愛だと右往左往する20代より
この落ち着いた感じが好きだったりする。

しかーし、この幸せをぶちこわす出来事が。
それは8月の土曜夜10時15分。
鳴り響く電話の呼び出し音。
私は「三国無双」(コーエー大好き)で
天下統一に必死になっていたところだった。
「山田ですが、川村由貴子さんのお宅ですよね」
男の声だった。
私の知り合いで自宅の電話番号まで知っている山田はいない。
「どちらの山田さんですか」
これを何度繰り返しただろう。
「なんでうちの電話番号知ってるんですか」
男はそんな質問はどうでもいいという具合に言った。
「前から何度も見かけていいと思ってました」
ぞぉぉぉぉっとした私は言い返した。
「あのさー、好きとかいうのもいいけど、
 そのやり方、戦略としてどうよ」
「じゃあ今度、声かけた方がいいですか?」
ぞぉぉぉぉぞぉぉぉぉ。こいつ、話が通じない。
口では結構強気なのだが、腕は震えていたと思う。
でもって、説教すること3分。
「それに私、彼と住んでるんだよね」
「そんなこと知ってます」
ぞぉぉぉぉぞぉぉぉぉぞぉぉぉぉ。
その後何を言ったかよく覚えていないが、
気持ち悪いと連呼していた気がする。
そしたら仕舞いにその男は電話の向こうで泣き出した。
「僕はどうすればいいんですか?」
「そんなの自分で考えろ!」といって電話を切った私。
すぐに警察に連絡を入れ、ストーカーに遭ったことのある友達に相談し、
翌日、彼と防犯グッズを買いに走った。

モテたことのない三十路の女に、どう対処しろっていうんですか。
というか、こんなに私が男らしいとは知らなかっただろうな、ストーカーさん。
ま、静かな住宅地に引っ越すことも決まり、
もっと快適な三十路ライフが始まりそうなので、
まあ良しとしてやろう、ストーカー君。

NO
年月日
名前
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