ライカウイルス
今、職場でライカウイルスが急速な勢いで広がっています。
ライカウイルスの感染力はものすごい。
先輩社員のFさんは、上司のIさんの持っているライカM7を触っただけで罹患してしまいました。お世話になっているプロデューサーのBさんも、横にいるだけであっと言う間に空気感染。真性の患者になってしまいました。
ライカウイルス感染患者の症状には「ライカが欲しくてたまらなくなる」「暇があれば、レンズのカタログを見るようになる」「中古カメラ屋の前を通りかかると入らずにはいられない」「ズミクロン・ズミルクス・ズマリット・ズマール・・・等のドラクエの呪文めいた言葉をうわごとのように繰り返す」等があげられます。
赤瀬川原平さんが著書に書かれている通りのことが目の前に。
ライカウイルスはしかし、不治の病ではありません。
特効薬。それはずばり「買うこと」です。
買えば治る。
ただしライカは高い。みなさん、お詳しい方も多いと思いますからいちいち述べませんが、とにかくもう、気持ちいいぐらい高い。
そういったわけでこの治療法には、金銭的ダメージという副作用がついてまわります。
とりあえず様子を見よう、ということでそのまま自然治癒に向かうケースも稀にありますが、プロデューサーのBさんは、そうなりませんでした。Bさんは、純真な人です。気持ちも仕事もいつもまっすぐです。これからの時季、ライカを持って桜・・・・夏になれば、ライカを持ってカンヌ・・・・もう想像しただけで血圧があがります。何度も眠れぬ夜を繰り返した挙げ句、決断しました。そして、一世一代の勇気を振り絞り、奥さんにライカ購入の意思と、およその金額をつげたところ・・・・奥さんは「へえ。その値段だったら、お義父さんにマッサージチェア買えるね」と、淡々と切り返しました。そしてその後、奥さんの口からはライカのラの字も出る事はありませんでした。
Bさんのライカ購入の夢は3秒で「なかったこと」になってしまいました。
しかし、やはりあきらめきれない。Bさんは、奥さんに預けている郵便貯金のカードをいつ持ち出そうかと隙をうかがうようになってしまいました。このように、ライカウイルスは善良な市民の家庭生活に深刻な打撃を与えかねない。
厚生労働省はライカウイルス治療には保険適用を認めてほしいものです。
がんばれ、Bさん!
カードの暗唱番号を変えられていないことを皆は祈っています。