あの鐘を鳴らすのは、広告。
中国の反日デモをきっかけに、「肉体を失った感情」の危険性について考えています。肉体を失った憎悪は、相手の痛みを肉体のものとして捉えることができずに、それゆえに歯止めがきかずに増幅を繰り返す。インターネットや教育現場の中で増幅した肉体を伴わない憎悪が反日という思想、投石という行為に直結したのではないでしょうか。石を投げたら痛い、肉が裂け、血が出るかもしれない、という実感を持たないまま放たれた石。
そのとき私たち広告制作者に何ができるのでしょうか。もちろん中国に出かけていってデモ隊の中心でバカと叫ぶこともできるでしょう。でも、私たちは広告制作者です。もっと違う何かで世界を変えられないか、そんな夢を見ています。
肉体を失った感情、肉体を失った言葉に対して、失ったものを取り戻すために私たちにできることがあるはずです。コピーライターやCMプラナーが極めて得意としている領域に、少なくともヒントぐらいはあるはずです。そうです、言葉に、表現に、肉体の痛みを、喜びを、疼きを、震えを、実感をもって込めること。その言葉や表現が独り立ちし、世の中に定着したときに、肉体の実感を伴った痛みを、疼きを、必要な誰かに伝えることができるかもしれません。そして、それは殺意や憎悪や戦争の抑止力になれるかもしれません。広告の言葉や表現が、そんなふうになってくれたらいいなぁ。たとえば、トスカーニがベネトンの広告でしようとしていたのは、そういうことだったのではないでしょうか。
明日は、実際の表現の事例を見ながら、より有効な戦略について、あてどなく考えてみようと思っています。本能とか、好きとか嫌いとか、そういうあたりで・・・。
(昨日のコラム最終行で、誤植がありました「大切がことだと信じています」→「大切なことだと信じています」ごめんなさい)
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