名古屋からの手紙 1
岩橋孝治
前回のリレーコラムでは「大阪のやーさんにからまれた話」を書いて、ごく一部の方からご好評いただいた岩橋です。時はめぐり、私は博報堂の中部支社に転勤を命じられ、着任して一ヶ月という近況。転勤が決まって、関係各方面の方に報告のメールをしたところ、皆様から「それはたいへんだがや」という、クリエイターと思えぬ超ワンパターンな見出しのついたリターンをいくつもいただいた。あらためて御礼申し上げます。というわけで、大阪から名古屋に移り住んだ岩橋孝治の日常。
実は、去年の今頃、大阪の北千里というところに家を建てた。どの家にも二台分のガレージがあり、大小の輸入車がとまっている。という街である。小鳥は唄い、ペチュニアの花が咲き誇り、庭の芝生をミニチュアダックスフンド走り回るのを私はデッキチェアに座って眺めていた。「この男、転勤させてしまえ」だれが神様でも、そう思ったであろう。
大阪にいるとき、本町にある50階建ての超高層マンションのコピーを書いたことがある。都心超高層のマンションライフはいいぞ、と、書いているうちに本当にそう思ってしまった。自分のコピーに洗脳されてしまったわけだ。名古屋にも街のど真ん中の高層住宅はないかとさがしたら、あった。いま、栄の歓楽街を見下ろす一室でこれを書いている。
住宅はテレビで「藤原紀香がついてくる」と広告していた物件だ。お店に藤原紀香・等身大カットアウトがおいてあった。契約が終わってお店の人が「よかったら、ひとつ、お部屋にお持ちください」と言った。言うわけないか。
つづく
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