名古屋からの手紙 3
岩橋孝治
僕の住む住宅は新栄の広小路通に面して立っている。広小路通というのは名古屋のメインストリームだ。銀座通、あるいは大阪の御堂筋と言い換えても差し支えないと思う。その広小路通を歩いて下見してここに決めた。
引越しをして、荷を解いてから、妻と街を歩いてみた。表通りは銀座だったが、裏にまわるとなんだか雰囲気が違うことに気がついた。どっちかというと五反田?池袋?大阪で言うと太融寺?というとお分かりいただけるかと思う。
夜になり街にネオンがともると、その予感は正しいものとなった。昼間見た茶髪・名古屋巻きのお姉さんは、その数を三倍に増した。多国籍の女性の方々が数多く出勤していくのが見えた。エステとかパブとか
クラブとかの電飾が点滅していた。「パルケ・フィリピーナ」という店が営業していた。
「なんだか、楽しそうな街ね」妻はこちらをじろりとにらみながら言った。
「あはは、そうだね」僕は、しかたなく答えた。
「たまに、予告なしに、名古屋に来るわ」妻は、言った。
「お願いだから、予告だけはしてくれ」と僕は答えた。
つづく
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