リレーコラムについて

金言2

鎮目彰夫

命の次に大事なお金の話、その2回目。

ざっと30年ほど、東京の電通でコピーライターやら
クリエイティブ・ディレクターやらという仕事をずうっとやってきた。
そしてちょうど4年前に、名古屋に赴任してきた。

「どこが、違いますかね」
と、よく訊かれる。東京の人からも名古屋の人からも。
「違やしませんよ」
当ったり前だろうが。おんなしニッポンでおんなし広告作ってるんだから
違ってたまるもんかい、と思うのだが
どうにも人間の先入観とはおそろしいもので、とくに東京の連中からすれば
初心で苦労知らずの東京っ子が名古屋なんぞへ行ったら
見も知らぬ人の言葉や応対、ビジネスの厳しさに戸惑っておろおろしたり
逆に初めて接する文化に感じ入ったりしないと気がすまないらしい。
親切なんだか余計なお世話なんだか、とにかく困ったもんだ。

しかし、詳しく言えば違いもないではないのであって
たとえば東京に比べると、制作費は、安い。
TVコマーシャルなんかは、時として眼を疑うほど、安いこともある。
でも誤解をして欲しくないのである。
これは、可哀相がられるようなハンディキャップでは決してない。

もちろん、制作費が少ないと切ないことも多いのであるが
人は、お金に頼れないとなると、自然にほかのものに頼るようになる。
つまり、アイデアに頼るようになる。
お金を出すほうの人も、金額でイバれないからちょっと謙虚になったりする。
ものは考えようなのである。

たとえば、東京で大きな金額の仕事をしていると
初手からふつうに、みんなでタレントの話をしていたりする。
企画、そして(必要ならば)タレント、という順番が守られないことも珍しくない。
いろんなことがガンジガラメになってから、アイデアを考えねばならぬ。
こういうときほど、じっさい苦しいものはないのである。
(そんな中でノシてくる人間はすごい、とも言えるけどね)

とあるマイナーな広告品評会の審査を2,3度やっているのだが
ここでは、TVCMを制作費別にいくつかのカテゴリーに分けていて
なんと、面白くも奇妙なことに、傾向として
1000万円を超えると、とたんにクオリティが落ちる。アイデアの質が落ちる。
アイデア以外の何者かに頼っているのが、見えてくるのである。
この話はクライアントには読んで欲しくないのだが
残念ながら(?)真実では、ある。

さいわい、コピーライターほど元手のいらない商売も珍しい。
昔の紙とえんぴつがパソコン1台ぐらいにはなったが
コピーのアイデアやCMのアイデアを考えるのに、さほどの経費がかかるはずもない。
僕らが欲しいのはアイデアへの少しばかりの(比べれば、って意味ですよ)ギャランテイであって
巨額の制作費やタレント費用ではないのだ。
だから、僕らが、頑張らなくちゃいけないのだ。

お金は、僕らの武器にもなるが、しがらみにだってなる。
アイデアに必要なのは、チャレンジし続けるための、ちょっとばかりの勇気だけ。
だから名古屋も東京もほかの町も、ちっとも「違やしない」し
考え方によっちゃあ、不利が有利になることだってある。

恰好ばかりつけやがってこの野郎、という方は
ぜひ名古屋に働らきにきてくださいな。

たtった2回で、この週刊コラムを終了することを
ほんとうに、こころよりお詫び申し上げます。
僕はナマケモノでありました。

次週は、名古屋の豊かな環境のおかげもあってTCCの仲間になれた
植田正行くん(電通中部)か、川上直人くん(元電通中部、現東京)にお願いするつもりですが
ナマケモノはまだ諒承をとっていません。でも、書かせます。

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1517 2005.09.16 金言
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年月日
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